468ー切れるのがいい

「ぼくは、かたほうが、きれるのがいいじょ」

「きるのら？」

「しょうら！　ておにいや、ろってねえみたいにな！」

　なるほど、ピコピコハンマーの殴るところの片側が切れるようにするのだね。これはデザインを考えないと。

　ピコピコハンマーなのに、片方は切れるようにか。ふむ、ちょっとバランスが難しい。あれか？　剣の形は無理だけど、斧っぽくしてみるか？　薪を割る時に使うみたいな斧だ。それなら無理なくできそうだ。

　形を考えながら土をコネコネ、コネコネ。隣にしゃがんでいるエルを見ると、同じようにコネコネしている。

「ろろ、きるんらじょ」

「うん。けろ、けんはむりなのら」

「しょっか？」

「ながいから」

「あー」

　だからね、円柱になっているところを、ちょっと形を変えて。コネコネ。

「なんら？」

「おのみたいに」

「おー、おのか？」

「しょうしょう」

　またまたコネコネ、コネコネ。あんまり大きくしちゃうとバランスが悪い。よく切れ過ぎると危ないし。コネコネ、コネコネ。

　仕上げに細かい砂をかけて、スリスリして出来上がりだ。

「れきた！」

「おー！　かっちょいいじょ！」

「こっちれ、ぶんって！」

「きるんらな！」

「しょうなのら」

　よし、なかなか良い感じではないか？　これを乾かしておこう。それからお揃いの色も塗らないと。持つところが黄色で、叩くところが赤だ。

「ぼくも、れきた！」

「じょうじゅなのら」

　エルも上手に作っている。ピコピコハンマーだから、そう難しい形じゃないし。

「二人で何やってんだ？」

「にこにい、えるのぴこぴこはんまーなのら」

「作ったのか」

「しょうしょう。かわかしゅのら」

　お邸の軒下に二つ並べて乾かそう。それを見ていたニコ兄。

「エルのはめっちゃ武器って感じだな」

　ん？　なら俺とニコ兄のは武器らしくないのか？　立派な武器だぞぅ。

「だってロロのは、コッコちゃんの羽がついてるじゃん。あれは可愛いだろう？」

「あー、しょうかも」

　だって最初に作った時は、まさかこんなに武器として使えるなんて思いもしなかったのだもの。しつこく出てくるマンドラゴラをぶっ叩ければ良いなぁ〜て、程度にしか考えてなかった。

　なのに想像以上に使える武器になっちゃった。

「ロロ、ちゃんと思って作ったか？　ディさんが言ってただろう？」

「うん、かたくて、ちゅよいの。えるのは、まものをきれるようにって」

「ぼくもしょうおもって、ちゅくったじょ」

　手を腰にやって、ちょっぴり偉そうに胸を張っているエル。でもニコ兄が駄目出しした。

「エルはロロほど魔力量がないから駄目だぞ。俺だって作れないからな」

「にこにいも、ちゅくれないのか！？」

「おう、ロロだけだ」

「ろろ、しゅげーな！」

　エルがお目々をキラキラさせながら見てくる。だからエルも毎日、ポカポカぐるぐるをすると、作れるようになるかも知れないよ。

　お祖母様の血も入っているから、エルだって魔力量はあるのじゃないかな？　と思う。レオ兄が帰ってきたら見てもらおう。

　レオ兄とピカ、大丈夫だと思うけど早く帰ってこないかなぁ。

　エルとニコ兄と一緒に、プチゴーレムやリーダーたちの訓練を見ていた。あの子たちは一体どこを目指しているのだろう？

　フォーメーションAだ！　とか言ってパタパタ走り回っている。パコーンと蹴り上げて、ジャンプさせたりしている。これは魔鳥さんと戦った時にもやっていた。初めて見た時は驚いたのだ。

　プチゴーレムもリーダーたちも飛べないから、高さをカバーするためのフォーメーションらしい。

　これは応用が効くらしくて、地面に平行になるようにパコーンとすると、めっちゃ早く移動できる。上にではなく、前に飛ばす感じだ。

　いつの間にこんなことを考えていたのか。

「なあ、ロロ。あの子たちめっちゃ強くなってないか？」

「らって、にこにい。はいぱーらから」

「ロロ、ハイパーってなんだよ。フォリコッコから進化して、ハイコッコになったんだろう？」

「しょうらった」

　いくら進化したハイコッコちゃんだと言っても、好戦的すぎないかな？　もうちょっと穏やかでもいいと俺は思う。帰ったらまた親コッコちゃんが、頭を抱えそうだ。

「ドルフ爺がボスだから仕方ないな」

「にこにい、しょうなの？」

「ああ。ドルフ爺は毎朝鍛練してるからな。イケイケだ」

　イケイケだったのか！？　俺にはとっても優しいお爺ちゃんなのに。

「なんら？　どるふじい？」

「しょうなのら。やしゃしいおじいちゃんなのら」

「ちょっと普通じゃないけどな！」

　あ、ニコ兄が言っちゃった。普通じゃないってみんな思っているけど、口には出さなかったのに。

　でも元Bランクの冒険者だから今でも強い。いつも腰に付けている鉈が武器だ。

　なんで鉈だよ。意味が分からない。もしかして本当に冒険者をしていた頃も、鉈を振り回していたのかな？

「ロロ、何考えてんだ？」

「にこにい、どるふじいのぶきは、なた？」

「そうだぞ。あれ、めっちゃ切れるんだ」

「ひょぉーッ！」

「え！　きれるのか！？」

「そうだぞ。そこら辺に生えてる小さな木だったら一発だ」

「ぴぇッ！」

「ろろ！　ぼくやっぱなたがいいじょ！」

　エルったら感化されやすい性格だったらしい。クリックリのお目々をキラキラさせながら訴えてくる。