463ーなんですと!?
「ロロ! ニコ! エル! 中に入ってなさい!」
ほら、言われちゃった。レオ兄なら絶対にそう言うと思った。
「レオ兄! 大丈夫だぞ! 俺が守る!」
「ニコ! 危ないよ!」
俺が大きな刃を飛ばしたから、魔鳥たちがこっちに気付いてしまった。数羽の魔鳥さんが、こっちに向かって飛んできた。
「ニコ!」
「おう! レオ兄、任せろ!」
突っ込んでくる魔鳥目掛けてニコ兄がピコピコハンマーを思い切り叩きつける。
「とぉーッ!」
――ボボーン!
ニコ兄が叩き落とした魔鳥に、今度はエルが攻撃だ。
「やぁッ!」
――きゅぽん!
良い連携だ。エルったら怖がらずにしっかりピコピコハンマーを振っている。これなら安心だ。俺は飛んでいる魔鳥を落とそう。
多分、領地の外れにある森から飛んできたのだろう。魔鳥は何故かこのお邸目指して飛んでくる。街に被害が出ることを思ったら、それは都合が良いのだけど。だけど、どうしてこのお邸を目指しているのか?
街の周りに防御壁はあるけど、魔鳥は空を飛ぶからそんなの関係ない。だけど、今までこんなに群れで飛んできたことはなかったという。お空を覆うような数の魔鳥だ。もしも街を目指していたならどうなっていただろうと思ってしまう。
「ここで殲滅しておくぞーッ!!」
お祖父様の大きな声が兵士たちを鼓舞する。
「街へ行かせるなーッ!」
「おおーッ!」
この領地の兵士さんたちも強い。普段から魔獣と戦っているからだろう。魔鳥の群れを見ても、ひるまないし慌てない。
風の刃を飛ばす人、落ちてくる魔鳥を切る人、皆にシールドを張っている人。とっても連携が取れている。
あれれ? よく見るとお祖父様の剣から何かが飛んでいるぞ。
「おおじいじは、しゅげーんら!」
うん、エルのこの説明じゃ分からない。
「ほら、フリード爺も剣から飛ばしてただろう?」
「あー!」
ニコ兄が説明をしてくれた。ふむふむ、剣に魔法を付与して斬撃を飛ばすのだった。あれって、誰でもできる技じゃなかった。リア姉はまだ半分くらいの確率でしかできなかったはずだ。
「え、にこにい、りあねえが」
ちょっと冷静になっちゃって、俺は下にいるリア姉を指差す。お祖父様に負けじと斬撃を飛ばしている。普通に、それもロッテ姉と競い合いながらだ。
「おー、リア姉もお祖母様に教わってたからな!」
――ボボボーン!
俺と話しながらニコ兄は魔鳥をブッ叩いている。そこに追い討ちをかけるエル。
「おおばあばは、きびしいんら」
――きゅぽぽん!
ふむふむ、エルはお祖母様の魔法の練習も逃げていたということかな?
「ろろ、とばしぇ!」
「お、おー!」
しまった、忘れていた。俺ってば変に冷静になっちゃった。やるぞ!
「とぉーッ!」
ギュイーンと大きな刃が飛ぶ。そしてピカもじっとしていない。
「わおぉーん!」
と鳴きながら、風の刃を飛ばして魔鳥を落としている。もしかして、ピカさんや。
「わふ?」
「ぴかはまちょうをおとしゅ、いちをかんがえてる?」
「わふん」
なんだ、そんなこと当然だよ。なんて言われちゃった。俺は考えてないからね。というか、そんな芸当はできない。
ピカの飛ばした刃に傷付いた魔鳥は、うまい具合に兵士さんたちが待ち受けている場所にヒューと落ちて行く。そして当然、あっという間にぶった斬られる。それもピカは考えているらしい。
「わふ」
だって、その方が効率が良いでしょう? なんて当然のように言われちゃった。
ふむふむ、ただ倒すだけじゃなくて色々考えているのだね。ま、今の俺には無理だ。
なんて呑気なことをしていたら、魔鳥が攻撃してきた。
魔鳥も衝撃波のようなものを飛ばせる。前にエルと洞窟に行った時もそうだった。空気の塊をぶつけてくるような感じだ。
――ギャオー!
と鳴いた魔鳥が、ホバリングをしながらこちらに向かって大きく羽ばたいた。あの時みたいな空気の塊がくるぞ!
「にこにい! ぶわってくるのら!」
「くるじょ!」
「お? おう!」
俺とエルはニコ兄にしがみついて、三人で身構えた。
「ん?」
「ろろ、こねーな」
「もしかしてチロが何かしたか?」
え、チロさんが? いつの間に? そう思ってピカの背中に乗っていたチロを見る。
「キュル?」
なんですか? て、お顔をしている。
「にこにい、ちろじゃないのら」
「なら、どうしてだ?」
どうしてだろう? おやや〜? と腕を組んで考える。そんなことをしている俺たち目掛けて、魔鳥がまた鳴いた。
――ギャオォー!
今度こそくるぞ! またニコ兄にしがみついて身構えた。でもまたまた何も起こらない。あれれ〜?
「ロロ坊ちゃま! よく見てください! 跳ね返されてますよ!」
エルザが後ろから叫んだ。なんですと!? 跳ね返されているですと!? 一体誰がそんなことをしているのだ!?
「ニコ! ロロ! サシェだ!」
下からレオ兄の声がした。
えっとぉ、サシェって聞こえたのだけど。ピカさん、分かる?
「わふわふ」
ロロがサシェに付与した自動防御が発動したみたいだよ。
…………な、な、なんですと!?
思わず俺はびっくりして杖を落としそうになっちゃった。
「わふ」
本当だよ。と、ピカさんが言う。
俺はそんなの付与した覚えがないのだけど。
「ワッハッハッハ! これは凄いぞぉッ!」
下でお祖父様が大爆笑しながら魔鳥をぶった斬っている。
「ロロォー! 凄いぞー!」
やっぱ俺らしい。ふむ、納得いかないけど、役に立ったならまあ良いか。




