46ーププーの実
「ロロ、沢山生っているわよ」
「りあねえ、とって。とって」
「ふふふ、ロロったら」
俺は、ピョンピョン飛び跳ねながらリア姉に両手を伸ばす。早く食べてみたいのだ。
リア姉の身長でも、手を伸ばすと楽に捥げる高さにピンク色した実が沢山生っている。
リア姉が、一番熟れていそうな実を選んで捥いでくれる。
「はい、ロロ」
「ありがと、いいにおいら」
両手で持つと、思ったよりズッシリと重さを感じるぞ。
「ね、とっても甘い匂いがするわね」
「うん。れおにい、たべたい」
「貸してみな、剥いてあげるよ」
トコトコとレオ兄のそばに行き、ププーの実を手渡す。
本当に甘い匂いがするんだ。匂いだけで、美味しいのがわかるぞぅ。楽しみなのだ。
「俺も食べたい!」
「みんなで食べよう」
「おう!」
フィーネとマティは食べた事があるんだって。流石、貴族だよね。
俺は初めてだよ。レオ兄にくっついてしゃがみ込み、ジッとレオ兄の手元を見つめる。反対側には、ニコ兄がしゃがんでジッと見ている。
先ずナイフで縦半分に種まで包丁を入れて、ぐるりと1周切り込みを入れた。そして、互い違いに軽く実をねじりながら2つに分ける。ナイフの先を種に刺し、種を取り外す。ほら、アボカドの剥き方と同じだ。
「ぴゃぁ~」
「レオ兄、上手だよな」
「ね~」
ププーの実の皮を剥き、食べやすい大きさに切って出来上がりだ。
ピンク色の皮を剥くと、意外にもまったりと美味しそうなクリーム色の実が出てきた。艶々としていて、果汁が伝い落ちる。なるほど、カスタードクリーム色の実だ。
「はい、ロロ、ニコ」
「ありがと」
「レオ兄、ありがとう!」
俺とニコ兄は、一切れ手に持ちパクッと齧り付く。んん~、美味いぞう。
「うまうま!」
「な、超美味いなッ!」
リア姉が、木から捥いでくれたププーの実を次から次へと剥いていくレオ兄。
普通は、リア姉が皮を剥く担当じゃないのか? とか、思うだろう?
違うのだ。リア姉は、こんなの出来ないのだ。レオ兄の方が器用で上手なのだ。お料理もそうなのだ。
リア姉にププーの実を剥かせると、きっと食べるところが小っちゃくなっちゃうのだ。中の種を取り出せるかどうかも分からないぞ。
「レオ、私もちょうだい」
「はい、美味しいよ」
「ありがとう」
リア姉も食べる。みんなププーの実に夢中だ。とっても美味しいのだ。
桃とマンゴーを足した様な味だ。それに、果物なのになんだかバニラっぽい風味もする。『森のカスタードクリーム』と言われるだけあるね。
とっても濃厚なのに、まろやかでジューシー。お口に入れるとジュワッと果汁が溢れてくる。
「んん~、うまうま!」
思わず両手をほっぺに当てる。ほっぺが落ちそうなのだ。落ちないけど。
「アハハハ。ロロ、お口の周りに汁が付いているよ」
「え、おっきいお口をあけたのに」
「ね、どうしてだろうね」
「ふしぎなのら」
「キュル」
「ちろ、たべる?」
「キュルン」
食べるらしいよ。いつもお肉しか食べないチロが。
「あい」
と、俺が一切れあげるとパクッと齧り付いた。そして、モグモグモグ。
「キュルンッ!」
美味しかったらしい。体を少し持ち上げて、小さなお目々がキラキラしているのだ。
「ぴか、たべる?」
「わふん」
ピカにもあげよう。俺のお手々は食べないでね。
ピカもお口に入れた途端に感動しているよ。尻尾が大きく左右に揺れている。
ププーの実はみんな好きなんだね。だから、獣も食べに来るんだ。
「わふッ」
「もっと?」
「わふん」
「キュルン」
あらら、ピカもチロも大好きになったのだ。
「ピカ、ププーの実も収納してほしいわ」
「わふわふッ」
沢山持って帰ろう。だって。ピカはもうお魚も沢山収納している。一体どれだけ入るのだ?
「わふん」
「しょう、たくさんなんら」
「わふ」
ほぅ~、いいなぁ。沢山入るし腐らない。俺も収納スキル欲しいなぁ。あの泣き虫女神に相談してみよう。
「ほら、ロロ。あーんしな」
「あぁ〜……ん」
レオ兄がお口に入れてくれたのだ。
「うまうまら〜」
「レオ兄、俺も!」
「わふッ」
「キュルン」
ピカとチロも欲しいと順番待ちをしている。レオ兄は、大変だ。剥いては、俺、ニコ兄、ピカ、チロと順に食べさせている。
「アハハハ、みんな美味しいんだね」
「れおにい、たべた?」
「うん、食べたよ。甘くて美味しいね」
「ね〜」
フィーネとマティは食べているのか? と、見てみるとマティが剥いていた。
レオ兄が剥いたのを見て真似しているんだ。
「マティ、上手ね」
「レオが上手に剥いていたから、真似しているだけですよ」
そして、フィーネが食べている。
「美味しい〜、前に家で食べたものよりずっと濃厚でジューシーだわ」
「姉上、捥ぎたてですから」
「そうね」
リア姉とフィーネ、なんだか似ているのだ。
2人共、ちょっと不器用だけど真っ直ぐで一生懸命だ。
花で例えると、向日葵ほど主張しない。あぁ、ガーベラだ。
元気に花弁をいっぱい広げて、真っ直ぐ太陽に向かって咲いているガーベラみたいだ。
リア姉はフィーネより、レオ兄はマティより1歳下だ。でも、リア姉やレオ兄の方が大人に見える。
両親を亡くして、家を追い出された経験からそうなるのかも。
「ああ、ロロがおネムだ」
「れおにい、らいじょぶら」
そう言いながら、俺は体が揺れていた。コクリコクリとしながら眠気と戦っていたのだ。
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