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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第7章 お祖父様のお邸に行ったのら

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455ー普通の日々

 色とりどりの花が咲いている中にある四阿。そこに優しい陽が射していた。小さな黄色い蝶がフワフワと横切った。

 映し出された母は柔らかく微笑んでいた。その母の隣にはニコ兄とマリーが。そして母の腕の中にはまだ赤ちゃんの俺がいた。


「ふぇ……」

「あらあら、起きちゃったかしら?」


 母の声がした。温かくて心までポカポカするような声だ。俺はこの声を映像でしか知らない。でも、もう覚えている。俺を抱っこしながら母は俺に話しかける。


「ロロ、オムツ替えましょうか?」

「あう、あば」


 話しかけられた俺は、あぶあぶとお口を動かしながら小さな手を伸ばす。母に触れようと伸ばしている。


「奥様、私が」

「マリー、でもまだご機嫌なのよ」

「あらあら、そうですね。目が覚めただけでしょうか?」

「ふふふ、そうかも知れないわね」


 そんな声のそばで小さく入っている女の子の声。


「えいッ!」

「アハハハ! リア、力が入ってないぞ」

「とおッ!」

「まだまだだな!」


 父さまとリア姉だ。この頃からリア姉は剣が好きだったらしい。


「アハハハ、リアは小さな頃からお転婆だったんだな」

「伯父様、これはお転婆じゃなくて父様に習っているんですぅ」

「リアったら、それをお転婆っていうのよ〜」

「ロッテだって一緒じゃない」

「確かにそうだな。ロッテも小さな頃から剣を持っていた」

「だってお父様、必要ですもの!」

「それにロッテは子供の頃から泣き虫だったな」

「もう、テオ兄様ったら!」


 ふふふ、みんな一緒だね。この領地も守る力が必要だ。父様だってきっとリア姉に守る力を持って欲しかったのだろう。あのフリード爺に師事していたというし。辺境伯領だって同じだから。


「姉さま、そろそろかわってください!」


 まだ高い声のレオ兄だ。リア姉と父が打ち合いしているのを見ている。順番を待っているというのかな?


「なあ母様、次はどんなお花を植えるんだ?」

「そうねぇ、何にしようかしら?」


 これはニコ兄だ。この頃からもう花に興味があったのか? ニコ兄がディさんに『みどりの手』と言われるのも納得できる。


「ふぇ、ふぇ、ふぇ~ん!」

「あらあら、泣き出しちゃったわ」

「奥様、オムツを替えましょう」

「ええ、お願いね」


 母の腕の中からマリーが俺を抱っこし、側のベンチに敷いてあったブランケットに寝かせる。


「ロロのお尻は可愛いな」

「ふふふ、ニコも可愛いわよ」

「母様、やめてくれよ。俺はもうお兄ちゃんなんだ」

「あらあら、ふふふ」


 俺のプリけつが映っていなくて良かった。いくら赤ちゃんだといっても、恥ずかしいじゃないか。


「クロエは幸せだったのね」

「ああ、とても幸せそうだ」


 静かに涙を流しながらつぶやいたお祖母様の肩を、お祖父様が抱いている。

 なんてことはない日常だ。わざわざ高価な魔道具に残すほどのこともない。でも、残っていた映像を保存した魔道具はみんなこんな感じだった。

 いつもの普通の日々を切り取ったみたいな、なんてことはない日常。

 父様と母様は何を考えてこれを残したのかな? まさかこんなことになるなんて、思いもしなかっただろうに。もう訪れることのない両親と一緒の日々。

 俺は全然覚えてなかったけど、両親が残してくれたこの魔道具のおかげで母様と父様を近くに感じられる。確かに俺を愛してくれていたのだと思える。


「ふぇ……」

「ろろ、らいじょぶか?」

「うん、える」

「ロロは泣き方が赤ちゃんのころと一緒だ」

「レオ兄、しょう?」

「そうだよ」

「ふふふ、そうね」

「ああ、そうだな」


 レオ兄、リア姉、ニコ兄が俺に微笑む。そんな優しい目で見られると、余計に泣きそうになるじゃないか。


「ふぇ……うぅ」

「ろろ。らいじょぶら。ぼくもいるじょ」


 隣に座っていたエルが、小さな手で俺の背中を擦ってくれる。大丈夫だ。ちょっぴり会いたくなっただけなのだ。

 二度と会えないと分かっているから、余計に会いたくなる。魔道具ではなくて生の声を聞きたくなる。温かそうな手に触れたくなる。

 今の俺を母様の手で抱きしめてほしいと思ってしまう。叶わないことだと分かっていてもそう思ってしまう。

 映像では鍛錬を中断して、俺の周りに集まってきている父とリア姉、レオ兄が映っていた。


「ロロ、姉様が抱っこしてあげるわ」

「姉上、危ないです。ロロを落としたらどうするんですか?」

「もう、レオったら落とさないわよ」

「アハハハ。先に父様が抱っこするんだ」

「ええー」

「あばー、キャッキャ!」

「ふふふ、笑ってるわ」

「可愛いなー」

「よし! マリー、もう抱っこしても良いか?」

「はいはい、そっとですよ」

「ああ!」


 父様に抱っこされて、ご機嫌な俺だ。


「あば! あうあー」

「アハハハ! よく喋る子だな。何を喋っているのだろうな」

「お父様! 見せて!」

「僕も!」

「あー! 俺も!」

「あらあら、そんなに慌てなくてもロロは逃げないわよ」


 父に抱っこされた俺を皆で見つめている。その中で俺は笑っていた。

 この映像も何度も見た。残っている魔道具は何度も繰り返し見ている。レオ兄が、また見るの? なんて言いながらいつも魔力を流してくれる。そして俺をお膝に乗せて、一緒に見るんだ。そうしたら、みんな集まってくる。


お読みいただき有難うございます!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


ハンカチは必要なかったと思いますが、いかがでしょう?自分でハードルを上げちゃったなぁと思ってます。(^◇^;)


投稿を再開したところですが、突然お休みさせていただくこともあると思います。

そんな時は、ああ、またワンちゃんが大変なんだろうな。と思っていただけると。

Xをご利用なさっている方は、都度情報をあげてます。


ご迷惑をおかけするかも知れませんが、よろしくお願いします!(人>ω•*)


リリのSSも投稿してます!是非、読みにいらしてくださいませ〜!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読ませていただいてます。 お久しぶりです。 ロロ…親の温もりを求めて…(´;ω;`)ブワッ と、なってしまいました! ワンちゃん心配です… 撫羽様の生活に無理のない更新でお願いします。…
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