453ー家族なのよ
俺はサシェなんて、お祖母様に聞くまで知らなかったのに。
「奥様が作っておられましたからね」
「やっぱしょうなのら?」
「はい、皆さんの分を季節毎に作っておられましたよ。お上手でした」
「そうね。クロエは器用だったもの。ロロはそこに似たのね」
そっか。母さまも作っていたのだ。刺繍も母さまは上手だったと聞いた。俺が似たのなら嬉しいなぁ。もしも生きていたら、一緒にできたかも知れない。一緒にチクチク、縫っていたかも。空から見たあのお邸で。
お庭にあった四阿で、お邸の部屋で、母さまと一緒にみんなのサシェを縫っていたかも。それは今はもう、叶わないことなのだけど。
お祖母様が俺の隣に座ってきて、そっと俺の手を取った。
「ロロ、一緒に縫いましょう。刺繍も一緒にしましょうね」
「おばあしゃま」
「他にも一緒にいろんなことをしましょう」
お祖母様の気持ちが嬉しかった。とってもとっても嬉しかった。
「うん! おばあしゃま!」
ちょっぴり涙が溜まりそうだったのだけど、嬉しくてお顔をほころばせてニカッと笑った。
そんな良い雰囲気の中なのに。
「うえ~ん! ロロったらなんて健気なのよー! 私も一緒に縫うわ! ええ〜ん!」
「ロッテ、何言ってるの。あなたできないでしょう? そんなこと言ってないで、泣き止みなさい」
「そんなー! うえ~ん!」
ふふふ、ロッテ姉は泣き虫さんなのを忘れてた。こんなところで泣き出しちゃうなんてね。泣くようなことはなにもないのに。
「よしッ! ロロ、私も一緒にするわッ!」
おおーっと! 予想外のことが起こってしまった! リア姉が一緒にすると言い出した。どうした? リア姉が針を持っているのなんて見たことないぞぅ。
「リア、その気持ちは良いのだけど『よし!』て何ですか。あなた令嬢なのに、まずは言葉使いから教えなきゃ駄目かしら?」
お、おふッ! お祖母様は手強い。いや、無敵だ。せっかくリア姉が一念発起したのに撃沈させてしまった。
「あらあら、リア様。一緒にやりましょうね」
「ぶふ、アハハハ!」
レオ兄がとうとう堪え切れずに笑い出しちゃった。
「レオ兄、ここは笑ったら駄目だぞ」
「そうだぞ、レオ。ここは我慢だ……ぶふッ」
「テオ様も笑ってるじゃないですか」
「ジル、何言ってんだ。これはまだセーフだ」
「テオさん、アウトだぞ」
「ニコったら厳しいな!」
「アハハハ!」
ふふふふ。とっても楽しい。俺がチクチク縫っているだけなのに、こんなに賑やかになっちゃった。
いつもなら、マリーと二人で黙々と縫っているもの。見にくるといえば、ディーさんくらいだ。
「うれしいのら」
「ろろ、ろーした?」
「ふふふふ。らって、える。みんないるから」
「あらあら、そうですね。ロロ坊ちゃま」
マリーと二人、お顔を見合わせて微笑む。マリーは分かってくれている。
「ロロー!」
何故かロッテ姉が抱きついてきた。針を持っているから危ないでしょう! と、お祖母様に叱られている。
「だってぇ! ロロが健気なんですものー! みんなロロと一緒にいたいと思っているわ! ええーん!」
また泣いている。でもロッテ姉、鋭いぞ。俺とマリーの会話だけで、いつもは二人だけだと気付いている。だからそう言ってくれたのだろう。
リア姉は、分かるかな? ん?
「何よ、ロロ」
あ、キョトンとしている。これは分かってないな。
「なんれもないのら〜」
まあ、そんなところもリア姉らしくて俺は良いと思うよ。
「アハハハ! ロロったら!」
「れおにい、わらわないのら」
「だって面白くて!」
「エヘヘへ」
「まあ、リア姉はあんなもんだよ」
「ニコ、そうだね」
「なによーう! 私何も言ってないわよ?」
「姉上、いいんだ。ぶふふッ」
レオ兄がまた吹き出しちゃったから、リア姉にバシバシと背中を叩かれている。
レオ兄はほんの少しの間で、とっても明るくなったなぁ。肩の力が抜けたのかな? うん、良いことだ。
こうしていると、俺たちは孤独じゃないと思える。家を出た時は、俺は今よりちびっ子で泣いてただけだったけど。レオ兄やリア姉は疎外感や孤独を感じていたかも知れない。
頼れる人がいない。頼ろうとも思わない。自分たちだけで生きていくのだと、思っていたかも知れない。
でも今はたくさんの人に気にかけてもらっている。相談もできる。
こうして一緒に笑ってくれる人たちがいる。
「かじょくみたいなのら」
「ロロ、みたいじゃないのよ。私たちは家族なの。四人は私の大事な孫なのよ」
あ……家族なのだ。みんなを見てみる。
みんな優しい表情で俺を見ている。ロッテ姉はまだポロポロ涙を流しているけど。
テオさんが遠いのにわざわざ探しにきてくれた。それが大きなきっかけになった。
会ったこともない俺たちをよく探し出してくれた。
「ておしゃん、ありがと」
「おう」
一言そう言ってニッコリしてくれる。
そういえば、テオさんは俺の……
「ておしゃんは、おじしゃま?」
「おじさまって言うな! テオさんだ! ロロとは従兄弟だろう!」
「らって、ておにいは、おじしゃまらじょ」
「こらー! エルまでそんなこと言うな!」
ふふふふと、エルと一緒に笑う。良いなぁ。こんなに温かい人たちが俺の家族なのだ。
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宜しくお願いします。
お盆だからという訳ではないのですが、『家族』をロロに意識してほしくて書きました。
うちの家族のワンちゃんが、私の胸の上で爆睡してます(^◇^;)
PCが使えない!そして暑い!
昨夜は3時間くらいしか寝かせてもらえなかったので、この際だから一緒にお昼寝しちゃおうかな( ⌯ω⌯)⁾⁾ᐝ
ノベルも漫画も読みたいのがいっぱいあるのですが、今作っている初稿が終わるまで我慢です!今夜中に終わらせて送らないと!
なのに、お昼寝(´×ω×`)
明日は一つ公開できそうです。Xをご利用されている方は是非チェックしてみてください!
よろしくお願いします٩(๑˃ ᵕ ˂ )و
ロロ3巻もよろしくお願いします!




