451ーユーリアは上手
「サシェですか? なら袋ですよね?」
やっぱユーリアも女の子だ。サシェを知っていた。それに袋にするのが普通なのだね。
袋が一番実用的なんだ。だって中身を交換するのも楽だし。でもそれって選択肢がない。面白くないなぁ。やっぱせめて袋を結ぶおリボンに凝るとか、猫ちゃんのお顔の形くらいならできそうじゃないか?
ピカさんはお耳がね、フサフサな垂れ耳は難しそうだなぁ。
「ゆーりあ、ねこちゃんの、おかおがいいのら」
「猫ちゃんですか? そうですね……お顔だけなら……こんな感じですか?」
そう言いながらユーリアはスラスラと描いた。ちょこんと立った小さなお耳にまぁるいお顔。
「簡単にデフォルメしてますけど」
ちゃんと猫ちゃんに見えるじゃないか。可愛いぞぅ。
「首輪みたいにこう、おリボンを結べばどうですか?」
「ゆーりあ! しゅごい、おじょうじゅ!」
ユーリアは話しながら、とっても簡単に猫ちゃんのお顔を書いてくれた。ここに刺繍してお目々とかいれると可愛いですね~、なんて言いながら。
ユーリアにこんな特技があるなんて知らなかった。なら、ユーリアなら描けるのじゃないか?
「ゆーりあ、ぴかはれきない?」
「ピカですか? そうですね~、ピカはお耳が難しそうですけど……」
なんて言いながら手を動かしている。俺だけでなく、ニコ兄やエルもユーリアの手元に注目だ。
まるで魔法みたいにとっても上手に描いていく。難しい形は駄目だ。だからちびっ子が喜びそうな簡略化した絵なのだ。それなのにちゃんと、ピカのフワフワした垂れ耳の特徴をとらえていてとっても可愛い。
「こんな感じはどうですか? 要は中身を入れ替えできれば良いのです。このお顔の下の部分とか、後ろ側に入れ替え口を作れば良いと思うんです。だからピカちゃんのフサフサなお耳でも大丈夫ですよ」
「しゅごいのら!」
「しゅげー!」
「な、ユーリアは上手なんだ!」
ニコ兄が自慢することじゃないけどね。
「ロロ坊ちゃま、サシェ作るんですか?」
「しょうなのら。おばあしゃまにおしょわって」
「私もほしいです!」
「うん、いいよ~」
「そうですか!? 嬉しい! じゃあ、私はお花の形で……」
ふふふ、しっかり希望を言っているし、しかもお花をもう描いている。
クローバーも良いですよね~なんて言いながら、色々描いてくれた。これならマリーやエルザの分も作れそうだ。
「かわいいのら!」
「ふふふ、今までこんなサシェはなかったですからね」
そうなのか? 俺はサシェの存在自体を知らなかったのだけど。
「ボクは、ぴかのがいい」
「ぼくもぴか!」
「えー、俺は何にしよう? ユーリア、俺はトマトがいいぞ!」
「ニコ、トマトって真ん丸じゃない。ふふふ」
「いいんだ! トマト!」
楽しくなってきたぞ。同じお花でも布の模様を変えたらまた雰囲気が違ってくる。猫ちゃんのお顔にするのだって小花柄の生地で作ったら可愛くないか? ピカさんなら体毛はプラチナブロンドなのだけど、それは無理だし。どうしよっかな?
「ロロ、俺は花模様とかじゃない方がいいぞ」
「にこにい、しょう?」
「おう、可愛いよりカッコいいがいい!」
「ええー!」
「ふふふ、ニコったら」
前世なら男の子用に車とか飛行機とかできるのだけど、この世界にはそんなのないし。レオ兄にトマトもなぁ。
「えっちょぉ……れおにいらと、けんのかたちとか?」
「おう、それいいな!」
「えー! しょれ、かっちょいいじょ!」
「じゃあ、えるもけんにしゅる?」
「ううん、ぼくはぴかがいい」
そうなんだ。剣がかっこいいとかいいながら、でもピカがいいんだ。余程、お気に入りなんだね。
「らって、ぷちごーれむも、ぴかとおなじらろ?」
ああ、そっか。そうだった。あのプチゴーレムと同じ形が良いのだね。なら小さなワンちゃんの形をだね。
「ゆーりあ、わんちゃん」
「ピカでしょう?」
「ちがうのら。ちいしゃな、わんちゃん」
「ああ、子犬ですか? あれ? もしかしてプチゴーレムですか?」
「しょうしょう」
「ふふふ、ならお顔だけじゃなくて……」
俺が子犬と言っただけなのに、ユーリアは理解してくれた。そして、シルエットのようなワンちゃんを描いてくれた。ほら、よくステッカーとかにあるだろう? 垂れ耳のワンちゃんの全身のシルエットだ。いいな、これ。
「背中の部分から入れ替えできるようにして、首輪におリボンを結んだら可愛いですよ」
ほうほう。ならやっぱコッコちゃんもって思っちゃう。
「ゆーりあ、こっこちゃんはむじゅかしい?」
「そうですね〜、お顔だけならなんとか……」
無理かなぁて思ったのだけど、コッコちゃんの横顔を描いてくれた。嘴と鶏冠が難しそうだ。それに雛には鶏冠はないし。
「ふぉーちゃんたちには、ないのら」
「鶏冠ですよね? なら雛は……」
と、すぐに雛の横顔をスラスラと描く。うん、これならまん丸に嘴があるだけだからできそうだ。
「けろ、ぬうのがむじゅかししょうなのら」
「ふふふ、そうですね。鶏冠が少し難しそうですね」
「むむむ」
これを型紙にしたいなぁ。それで布を切って、丁寧に縫っていくしかないな。
「ゆーりあ、あのね、ぬのをきるから」
「はいはい、型紙にするんですね」
「しょうなのら」
なんだ、ユーリアってめっちゃ分かってくれてるじゃないか。
「サシェなのでそれほど大きくないほうが……」
そう言いながら、いろんな形を描いてくれた。
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宜しくお願いします。
雨で大変な方もおられるかと思います。どうか皆様もお気をつけください。
うちのワンちゃんが点滴に通うため、投稿時間が遅くなる日があります。
申し訳ありません。
さて、書籍化作業ですが。
これからハルちゃんのあとがきを書きます。
毎回、このあとがきには頭を悩ませてます。苦手なのです。
ロロ④の初稿も作らないといけないのですが、ワンちゃんの容態が良くなくて全然手をつけられてません。お盆明けには出したいので、頑張るぞー(๑•̀ㅂ•́)و✧
ハルちゃん③も改稿してますが、リリ⑦はめっちゃ加筆してます。半分以上が加筆になります。
新しいお話をいっぱい考えました!
web版より、より楽しんでいただけるかと思います。
どんな反響があるかめっちゃ不安なのですが(^◇^;)
楽しみにしていただけると嬉しいです!
ロロ③好評発売中でっす!




