446ーちょっぴり寂しい
お祖父様が優しい目で俺を見つめながら言った。
「ゆっくり考えるといいんだ。ロロが笑って楽しく生活できるようにな、みんなで考えよう」
「おじいしゃま」
「そうだな、誰かが無理をするのは駄目だ」
「おじしゃま」
みんなとっても優しくて温かい。しんみりとした良い雰囲気になっていたのだ。
「うえぇ~ん! なんて健気なのぉー! 寂しいわよね! ずっと住んでいたところを離れないといけないかも知れないのだもの……そんなの寂しいに決まってるわ! なのにレオとリアのためにとか思ってるのよね! まだロロはこんなに小さいのにぃ! こんなの泣かずにいられないわよーッ!」
はい、絶対に泣くと思っていたよ。泣き虫さんで感動屋さんのロッテ姉だ。俺は何も言っていないのに。
「もう、ロッテったら」
「だって、お母様。ロロったら良い子なんですものー!」
「アハハハ!」
何故か大受けして笑っているレオ兄。
「もう! レオったらそんなに笑わないでよー!」
「アハハハ! だってロッテだと絶対に泣くだろうと思ってたんだ」
「酷いッ!」
泣き笑いになってしまっているロッテ姉が、レオ兄の肩をパシパシと叩いている。なんだか距離が近いぞ。良い雰囲気ではないか?
「ろってねえは、しかたないんら。いちゅもしょうら」
「しょうなの?」
「しょうらじょ。いちゅも、えーんって」
「えー」
エルがちょっぴり呆れてしまっている。腕を組んで大人ぶっていたりして。ふふふ、俺も一緒に腕を組んでみよう。
「やだ、ロロとエルったら。ちょっと偉そうじゃない」
「りあねえ、しょんなことないじょ」
「しょうしょう、なっとくしてるのら」
「何を納得してるの?」
「ろってねえは、なきむしなのら」
「しょうらじょ、なきむしら」
ちびっ子二人が足をプランプランさせながら、短い腕を無理矢理組んでそんなことを言った。それを見ていた大人たちは、プププと笑い出した。
「アハハハ! ロッテ、言われてるぞ」
「テオ兄様ったら、笑わないで! えぇーん!」
まだ、えぇーんと泣いている。もうお顔は笑っているというのに、涙は止まらないらしい。
「らめらな」
「らめなのら」
「とまんねー」
「とまらないのら」
「もう、二人して! えぇーん! ふふふふ!」
ほら、泣き笑いになってしまっている。
そんな楽しい時間だったのだけど、ディさんはこれからクリスティー先生に相談しなきゃいけないからと言って帰る時間になっちゃった。
「でぃしゃん、ありがと」
「ありがとな」
「もう二人だけで冒険したら駄目だよ。今度冒険する時は僕も仲間に入れてね」
「おー! いっしょにな!」
「ぼうけんなのら!」
いやいや、だからもう冒険は駄目だって。つい乗ってしまって、エルと一緒に拳を上げちゃった。
いざディさんが帰るとなると寂しくて、ディさんの足にピトッと抱きついてしまった。離れたくないなぁ。
「ロロ、またすぐに会えるんだから」
「らって、でぃしゃん」
「ルルンデで待ってるよ」
「うん、またなのら」
「じゃあ、リア、レオ、ニコ、ロロ。ルルンデで待ってるよ」
帰りはお祖父様に辺境伯領にあるギルドにお手紙を送ってもらう。もうそろそろ帰るよ~ってね。国は違うけど、お隣の領地で同じ森があるということで、特別に辺境伯領のギルドと連絡が取れるようになっている。
何故なら、もしも森で異変があったりした場合はどちらの領地にも影響する可能性があるからだ。
辺境伯領のギルドからクリスティー先生に伝えてもらう。そしたらディさんに伝わるって段取りだ。帰りはここまで迎えに来てくれる。ディさんの転移なら一瞬でルルンデに帰れる。
そんな話をしてディさんは転移して帰って行った。
帰ったらまた会えるのは分かっているのだけど、ちょっぴり寂しい。
翌朝、マリーに起こされると外から声が聞こえてきた。朝からリア姉とロッテ姉が打ち合いをしているらしい。元気だね、何時に起きてやっているのかな? 俺はまだまだ眠れるぞ。
「まりー、りあねえとろってねえ?」
「はい、朝早くから走り込みをしておられましたよ」
「はりきってるのら」
「あらあら、そうですか?」
そうなのだ。だってルルンデの家にいる時は、リア姉はどちらかというとお寝坊さんだもの。
まさかロッテ姉に対抗意識をもやしているんじゃないだろうな。
「ロロ坊ちゃま、お着換えして朝ごはんを食べに行きましょう」
「うん」
レオ兄はどうしているのだろう? 一緒のベッドに寝ていたはずなのに。
「まりー、れおにいは?」
「お二人の打ち合いを見ておられますよ」
「れおにいがおきたの、しらなかったのら」
「ロロ坊ちゃまはよく眠っておられましたから」
それにしてもなぁ、俺も起こしてくれたら良かったのに。
「さあさあ、お食事ですよ」
「うん」
ピカとチロも行くよ。朝ごはんだって。
「わふん」
「キュルン」
朝ご飯を食べに食堂に向かっていると、エルが走ってきた。
「ろろー! おはよう!」
「える、おはよう!」
「りあねえとろってねえが、うちあいしてんら」
「うん、こえがきこえたのら」
「ろろ、きょうはぼくたちも、うちあいしゅるじょ!」
ええー、そうなの? 俺って全然剣は使えないぞ? そっか、エルは魔法より剣の方が好きだって言っていたものね。
「える、ボクはれきないのら」
「しょうなのか? じゃあぼくがおしえてあげるじょ」
「ほんちょ?」
「おー!」
またまた二人でハイタッチだ。




