443ーシャーベット
「チロも頑張りました!」
「キュルン」
ウォルターさんのことだね。やっぱ全部見ているのだね。女神様って暇なのかな?
「ロロが心配なのですッ! 暇ではないのですッ!」
「うん、ありがと」
まあ、なんでも良いんだけど。でも女神に呼ばれる時って、何かあるか、あった後だからなぁ。もう何もないよね?
「油断は禁物なのですよぉ!」
「ええー」
「そのためにピカとチロがいるのですッ!」
チロのあの回復魔法には驚いた。いつの間にあんなに回復できるようになっていたのか? 俺の、いたいのいたいのとんでけー! なんて比べ物にならないじゃないか。
「ふふふ、ロロもよく頑張りましたよ!」
「うん」
「でも気を付けるのです! ディさんにちゃんと調べてもらう方が良いのです!」
今日はお後が宜しいようで。ここで良い感じで女神の世界から戻された。それでもまだ女神は何か言いたそうな顔をしていたのがとっても気になる。言いたいけどまだ言えない、そんな感じに思えた。
これっていつもみたいに、中途半端で消えるのとあんまり変わらないじゃないか。
ディさんに調べてもらう方が良いと言っていた。それを言いたかったのかな?
「ろろ、ろうした? まらねむいか?」
お隣で目を覚ましたエルが聞いてきた。眠そうな顔をしていたらしい。
「ううん、しょんなことないのら」
「よし、おきるじょ。おひるねのちゅぎは、おやちゅら」
「うん、おやちゅら」
ベッドから二人でピョンと降りると、マリーが待っていた。
「起きられましたか? おやつのご用意がしてありますよ」
「やっちゃ!」
「たべるのら」
マリーに連れられてまたさっきのお部屋に行くと、お祖母様と伯母様とニコ兄が待っていてくれた。
あれれ? リア姉たちは? と思っていたら、外から大きな声が聞こえてきた。
「まだまだ甘いぞぉ! そんなことでは、魔物の一頭も仕留められんなッ!」
「まだこれからですッ!」
カキーンと木剣を合わせる音がする。
「リア姉、お祖父様とずっとやってんだ」
「え……じゅっとなのら?」
「そうだよ、よく飽きないよな」
ニコ兄がちょっと引いたことを言っている。ニコ兄だってリア姉に剣を教わるとか言っていたのに。
「ちょっとさ、加減ってもんを知らないだろう?」
「え……?」
「だからな、剣を教わるのはレオ兄にしたんだ」
「けろ、れおにいは、やりなのら」
「まあな。けどレオ兄は、槍ほどじゃないけど剣も使えるからな」
ほうほう、とにかくリア姉は厳しすぎるから嫌だということだろう。
「ほどほどってもんだ。それにな、リア姉は教えるのに向いてないんだ」
「ええー……」
リア姉は、とぉッって剣で切りつけるのよ! みたいな教え方らしい。リア姉は、感覚で動いている人なんだね。剣初心者のニコ兄にしてみれば、とぉッてなんだよ!? てことになるらしい。
それは駄目だね、全然教えることに向いていない。
だから今もニコ兄だけ外に行かないのかな?
「お祖母様や叔母様と薬草の話をしている方が楽しいんだ」
だってニコ兄も薬草を育てるのが好きだものね。
「あ、起きてたの?」
ディさんが部屋に入ってきた。その後ろから、エルザたちがオヤツを持ってきてくれる。
甘い良い匂いがするぞぅ。
「リアったら疲れないのかな?」
「な、ディさんもそう思うだろう?」
「ずっとだもんね」
「おう」
あれれ? もしかしてディさんも、見ていたけど飽きちゃって部屋に入ってきたとか?
「でぃしゃん、おやちゅらじょ」
「うん、一緒に食べようね」
おや? これはクレープなのかな?
「まりーが、ちゅくったの?」
「お手伝いしただけですよ。こちらの料理長さんが作られました」
ほうほう、やっぱ丁寧だよね。マリーだと大雑把だから、クレープを一枚ずつ丁寧になんてことはきっとしない。それならドドーンとパンケーキで良いじゃないって感じになるだろう。
クレープにナイフを入れて驚いた。
「あれれ?」
「ろろ、しょれちゅめたくて、あまいんらじょ」
「ちゅめたいの?」
「おー、たべてみな?」
「うん」
あーんとお口に入れるとヨーグルト味のシャーベットだった。クレープの中にバナナと一緒にヨーグルトシャーベットが挟んであった。これは美味しい。しかもシャーベットだよ。こっちの世界で初めてだ。
これって作り方を教わりたいなぁ。
「マリーが教わりましたよ」
「らって、まりーはおおじゃっぱらから」
「あらあら、ふふふ」
だっていつも小麦粉をドバー、砂糖をドバーだから。是非ともこのクオリティーを学んでほしい。
おっとそれより、覚えているうちにディさんに伝えておかなきゃ。
「でぃしゃん、まちょう」
「うん、魔鳥がどうかしたの?」
「ちゃんとしらべるのら」
「ロロ、それって……」
ディさんが途中で言葉を飲み込んだ。ディさんは俺の加護をしっている。それで分かってくれたのだろうと思う。
「分かった。帰りにクリスティー先生と相談しておこうと思ってるんだ。だから大丈夫だよ」
「うん、おねがいなのら」
そっか。ディさんは帰っちゃうのだ。それは分かっていたのだけど、帰りにと言われると急に実感が湧いてくる。寂しくなるじゃないか。




