437ー3巻発売記念SS ドルフ爺は寂しい
※今日も四兄弟がお墓参りに行った頃のお話です。四兄弟がいない時、ドルフ爺はこんな感じでした。
◇◇◇
ロロたち四兄弟が両親のお墓参りに行くといって、マリーたちも一緒に隣領へ出かけて行った。ワシはディさんやクーちゃんたちと留守番だ。
あの子たちは口には出さないけど、ずっと行きたかったのだろう。このルルンデの街に、あの子たちがやってきて丸1年だ。その間、いろんなことがあった。
マリーと一緒に挨拶に来た時には、子供たちばかりで大丈夫なのか? と驚いて心配したものだ。
だけど、リアとレオは頑張った。まだ親の保護下にいるのが当たり前の歳なのに、二人で冒険者になって生活を支えていた。ニコは畑を手伝いだした。そのうち、自分で薬草を育てだした。
放っておけなくて、思わず口を出してしまったのがつい昨日のことのように思える。
末っ子のロロは、初めて会った時はレオに抱っこされて大きな目に涙をためていた。
リアとレオが出掛けて行くと、マリーのスカートの裾を持って離さなかった。よく隣からロロの泣き声が聞こえてきたものだ。その度にワシとセルマは心配になって見に行っていた。
そのロロがなぁ、ニッコリして小さな手を振りながら言うんだ。
「どるふじい、いってくるのら!」
離れたくないと泣くのじゃないか? なんて少し思ったりしたのだけど。
「おう! 気を付けて行ってこい!」
「ロロちゃん、待ってるわね~」
「うん、しぇるまばーしゃん」
ほら、セルマだって寂しく思っているんだ。
出発直前になって、フォリコッコの雛とプチゴーレムが一緒に行くと言い出した時は驚いたものだ。しかも理由が、ロロたちを守るんだと言っていたらしいから泣かせるじゃないか。
「あたしはぁ、お留守番しているわよーぅ」
クーちゃんは大きいし重いから無理だ。行きたいと言っても全力で止めるさ。
「ワシと一緒に留守番していような」
「ええ、ドルフ爺と一緒ね~。うふッ♡」
ん? 最後の「うふッ♡」てなんだ? まあ、いいか。
出発までロロはマリーとなにやら忙しそうにしていた。
「イッチーたちのお帽子を作っているんですってよ~」
「ほう、帽子か」
「そうらしいわぁ」
毎朝一緒に日向ぼっこをしているセルマの情報だ。どんな帽子ができあがるのか、楽しみじゃないか。と話していたら、できあがった帽子を被ったプチゴーレムを見て笑ってしまった。
「ワッハッハッハ! こりゃいい! 似合ってるぞ!」
「キャンキャン!」
「アンアン!」
プチゴーレムたちも嬉しいのだろう。畑の皆に見せに行っている。その内、ニコの声も聞こえてきた。
「アハハハ! なんだよそれー! ロロか!?」
ニコも笑ってるじゃないか。あれは笑うよな。いや、変ではないんだ。変ではないのだけど、その数字だ。『1』はイッチー、『2』はニッチーなんてマンマじゃないか。
ディさんも庭先で笑っている。
四兄弟が引っ越してきてから賑やかになった。淡々と畑仕事をして研究をしてというワシの毎日に、パァーッと陽が差したみたいに明るくなった。それまでは普通に毎日充実していると思っていたんだ。
だけど、四兄弟と知り合いになってから充実以上のことがあるのだと知った。
最初は泣いてばかりだったロロが、庭先に出てくるようになった。そのうち一緒に畑の中を散歩した。セルマと一緒に日向ぼっこするようになった。そんなロロ一人の成長を見ているだけでも、心が温かくなってくる。
リアとレオが冒険者登録をしてすぐにDランクになった時には驚いた。この子たちは凄いものだと感心した。
ニコが薬草を育て出した理由が、リアとレオにポーションを作りたいからだと聞いて泣けてきた。そしてその薬草でレオだけじゃなくロロまでポーションを作ったと聞いて、またまた驚いた。この四兄弟は普通じゃないぞ。
こんなに才能溢れる子たちを俺は知らない。それにみんな良い子なんだ。素直で擦れてない。自分たちで頑張ろうとしている。こんな健気な子たちがいるか?
「マリー、なんでも言ってくれ。ワシらも協力するからな」
「あらあら、ありがとうございます」
マリーのあっけらかんとした気性も良かったのだろう。
そんなことを思い出しながら、走り去っていく馬車を見ていた。
「ディさん、あの子たちだけで大丈夫か?」
「大丈夫だよ、何かあったら僕を呼べるようにしてあるから」
「なんだ? そんなことができるのか?」
「ふふふ、まあね」
それからワシはいつものように畑へ、ディさんもいつもと同じように野菜を吟味している。
四兄弟が出発してから、まだ半日も経っていない。なのに、心にポッカリと穴が開いたみたいな気分だ。
「ふぅ~」
「ドルフ爺、ため息ばっかついてるじゃない」
「え、そうか?」
「もしかして、無意識だったの?」
そういうディさんだって、いつもの元気がないじゃないか。
「だってさぁ、毎日ロロと一緒に遊んでいたからさぁ」
「違いねー」
「つい隣を見てしまうよね」
「ああ、なんだか気が抜けるな」
「あらあら、二人して何言ってるんですか? そろそろお昼にしましょうか?」
セルマが呼びに来た。まだ昼か。もうロロたちと何日も会っていない気がするぞ。
「元気に帰ってきますよ~」
「ああ、そうだな」
「うん、そうだね」
両親の墓参りなんだ。ロロはまた泣いていないかと心配になるが、みんな一緒だから大丈夫だ。
あの子たちは何も言わないが、思うこともあるのだろう。辛い思いもしてきたのだろう。両親に心で甘えてくると良い。もう会うことは叶わないが、きっとご両親はずっと四兄弟を見ておられるだろう。
いつもの笑顔で帰ってきてくれ。
「ああ、けど寂しいな」
「ね~、寂しいよね~」
「あらまあ、ふふふ~」
あと何日こうしてため息をつくことになるのやら。
仕方ないから、クーちゃんと一緒に待っているさ。
お読みいただき有難うございます!
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宜しくお願いします。
ディさんはヒーローポジなので人気が出るのは分かるのですが、意外(?)にもドルフ爺も人気があります。
昨日と今日で2話投稿しましたが、いかがでしたでしょうか?
昨日3巻が発売されました!もうご購入してくださった方もおられるようで、感謝申し上げます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゜
紙書籍と電子と両方ご購入してくださる方もいらっしゃるようで、本当に有難いことでございます。
ご購入くださった方は、Xや感想欄で教えていただけると直接お礼をお伝えできるのですが!
だって嬉しいのです!ありがとうを言いたいのです(*ˊᗜˋ*)/
明日は投稿をお休みさせていただく予定です。
よろしくお願いします(*_ _)՞՞




