435ーチロは凄いね
ウォルターさんは目をパチパチさせていたかと思ったら、ベッドの上でゆっくりと座りなおした。
「あの有名なディディエ・サルトゥルスル様ですか!? 坊ちゃまたちがお世話になっていると聞きました。ありがとうございます」
そう言って、身体を折って頭を下げた。
ベッドの上で正座をして、深く腰を折って頭を下げている。
腰が痛いと言っているのに、無理に動かないでほしい。
ウォルターさんはとっても誠実で、俺たちのことを本当に心配してくれていたのだと伝わってくる。
俺たちは周りの人たちにこんなに気持ちをもらってるのだと思うと、お鼻の奥がスンとしてきちゃった。
「そんなことをしないでよ、ロロたちとは友達なんだ」
「うぉるたーしゃん、でぃしゃんなのら」
「おともらちらじょ」
「おやおや、エル坊ちゃまもお友達になられたのですか?」
「しょうらじょ」
エヘンと胸を張っている。エルって本当に可愛い。子供らしくて素直なんだ。
それからディさんが説明してくれた。チロが腰を治せると。
「蛇がですか?」
「しょうなのら。ちろ」
「キュルン」
「おや、可愛らしい蛇さんですね。珍しい色をしている」
「うぉるたーしゃん、ひみちゅなのら」
「秘密ですか?」
「しょうしょう」
「アハハハ、ロロったら何が秘密なのか分からないじゃない」
だって、秘密だよってよく言われるから。普通は蛇さんが、回復なんてできないだろう? だから秘密なのだ。
「ちょっとね、特殊な蛇さんなんだ。だから秘密なんだよね、ロロ」
「しょうしょう。ひみちゅなのら」
短い人差し指をプニッとお口につける。俺の隣でエルも同じことをしていた。秘密ダブルバージョンだ。可愛さもダブルなのだぞぅ。
「これはこれは、お二人とも可愛らしい」
「ふふふ、坊ちゃまったら」
「ロロは秘密と言いながら、すぐに話しちゃうから」
「えー、でぃしゃん。らってわしゅれるのら」
「ろろ、ひみちゅはおぼえとかないと、だめらじょ」
「うん、おぼえるのら」
俺とエルの会話を、優しい目で見つめているウォルターさん。とっても優しいお爺ちゃんだ。早く元気になってほしいから、チロお願いね。
「キュルン」
「うん、ちろ。れきる?」
「キュル」
任せてよだって、頼りになる。じゃあ、チロさん。一発張り切ってお願い。
「キュルン!」
チロが鳴くと白い光がウォルターさんの身体を包み込んだ。よく見ていると、腰と足がより光っている。きっと悪いところが光っているのだろう。すぐに光が消えていった。
これで治ったはずなのだけど。ウォルターさん、どうかな?
「もう普通に立てるんじゃない?」
「サルトゥルスル様、不思議です。腰の重い痛みが消えました」
「僕はディさんでいいよ。立ってみて、もう大丈夫だよ」
ベッドから足を出して、ゆっくりと立ち上がったウォルターさん。
えっ!? てお顔をしてびっくりしている。気の所為かな? さっきより顔色も良い気がする。
「滞っていた血流も正常になっているでしょう? いつもより身体が軽いんじゃないかな?」
「ええ、ええ。ディさん、驚きました。足だってずっとしびれていたのに、なんともないです」
ゆっくりと確かめるように、片足ずつ動かして腰を折ったり反らしたりして確かめている。もう大丈夫そうだ。
「ふふふん」
「ろろ、なんら?」
「ちろは、しゅごいのら」
「うん、しゅげーな」
「これは本当に特別な蛇さんですね」
「うぉるたーしゃん、ちろなのら」
自分の身体を確かめていたウォルターさんが、ディさんに向かってまた頭を下げた。
「腰の痛みがどうも治らず、私はもうお役に立てないのかと悲観していたのです。また私に未来を与えてくださって心から感謝いたします」
片手を胸にやり深々と頭を下げた。
「ウォルターさん、止めてよ。僕じゃないよ、チロだ」
「はい、チロ。ロロ坊ちゃま、ありがとうございます」
「よかったのら」
「うん、よかったじょ」
「キュルン」
チロったら、どうってことないよ~なんて言っている。一瞬だったね、チロも成長しているね。
もっと早く俺が気付いていれば良かったのだけど、遅くなっちゃってごめんなさいなのだ。
「それにしても、ウォルターさん。君は貴族の出だね」
「……ディさん」
「その礼だよ。貴族でないとそんな礼はしないだろう?」
さっきウォルターさんがした、片手を胸にやって頭を下げる。これは貴族しかしないらしい。だって庶民は普通に頭を下げるから。
でもウォルターさんは俺の父様とお祖父様に仕えていたと聞いたし、それくらいは知っていたのじゃないかな?
「ちゃんと所作が身についている。確かに執事になって覚えたと言われても違和感は
ないけど、僕の目は誤魔化せないよ」
あ、そうか。ディさんは精霊眼で見たんだ。そんなことも分かるのか?
「私は家を追い出されて野垂れ死にしそうになっていたところを、ロロ坊ちゃまのお祖父様に拾われました。その時に、貴族の身分は捨てたのですよ」
「そっか。でも学んできたことはちゃんと生きているよ」
「ああ……そうですか。それは嬉しいことです。私に教えてくれた亡き母も、喜んでいてくれるでしょう」
えっと? それって元貴族だってことなのだよね?
お祖父様に拾われる前は貴族の子息で、ウォルターさんの母様は亡くなっていると。
どうして追い出されちゃったのかな? 母様が亡くなったから?
分からなくて、お首をコテンと傾けてしまった。
お読みいただき有難うございます!
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宜しくお願いします。
コロッと忘れていたのですが、7/1の発売日に発売記念SSを投稿します〜!
まだ全然書いてません!( *¯ ꒳¯*)ドヤァ
お題のリクエストがありましたら、感想欄からお知らせください!というか、リクエストいただけると、めっちゃ嬉しいです!
よろしくお願いします!
もう店頭に並べてくださっている書店様もあるみたいです。
実は今回は巻頭にある、あらすじを公開したいのです。毎回担当さんが考えてくださっている力作です!
もう少し待とうかな?発売されたらもうOKだと思うのです( ˆ꒳ˆ; )
アース・スタールナ様のサイトでも、特集ページが公開されてます。是非、特典をゲットしていただけると!今回のSSはどれも好きなのです♡
手に取っていただけるよう、念を送っておきます!:(っ`ω´c):ムムムムムゥ
よろしくお願いします!




