430ー帰ってきた
「ディさんから聞いたぞ。ピカがいてくれて良かった」
「本当よ。ピカ、ありがとう」
お祖父様とお祖母様だ。ピカが身を挺して守ってくれた。そのせいで怪我をさせちゃって、ごめんね。
「ぴか、ありがと」
「おー、しょうら。ぴか、ありがとな」
「わふん」
僕が守るのは当たり前だよ。なんて、かっちょいいことを言っている。
どう考えても、俺たち二人は足手まといだった。もっと強くならないと。
せめて杖を持っていたらなぁ。今度は忘れずに持って行こう。と、思わず決意の拳を上げてしまった。
そんな俺を見て、ディさんがクスクスと笑っている。
「ロロ、今度は何を考えてるんだい?」
「でぃしゃん、ちゅえをわしゅれたのら」
「ああ、僕が作った杖のこと?」
「しょうなのら。ぽしぇっとを、もってなかったから」
「ああ、いつものポシェットに入れていたものね」
「ちゅぎは、わしゅれじゅに、もっていくのら」
「おー! しょうらな! ぼくもみてみたいじょ!」
なんてちょっぴり盛り上がってしまった。
「こら! エル! ロロ! もう二人だけで出かけたら駄目だ!」
おっと、お祖父様に叱られちゃった。
「アハハハ! 懲りてないじゃない」
「ディさん、笑い事じゃないですよ」
「だってリア。二人とも可愛いじゃない」
ディさんがお腹を抱えて笑っていた。いやいや、次はないのだ。これはきっと、要注意事項にされちゃってるぞ。みんなの眼がちょっぴり怖いもの。
「それより、ロロ。喜んでもらえたかな?」
「でぃしゃん、なぁに?」
「ほら、お土産だよ」
「あー! わしゅれてたのら!」
そうだった。俺ってば到着してすぐに寝込んでしまったから、お祖父様たちにお土産をまだ渡していなかった。なんてこったい。一生懸命作ったのに。
「ふふふ、そうね。忘れてたわね」
「本当だね。到着してすぐに、倒れちゃったから」
「え? ロロ、倒れたの?」
「しょうなのら。ほっぺが、ぷくぷくになったのら」
「え? ほっぺなの?」
「ディさん、あれですよ。ほっぺが腫れて耳の下が痛くなって熱が出る」
「ああ、そうなの。きっと疲れていたんだね」
そうかも知れない。ちびっ子の俺には長い旅だったから。
きっと前世なら、免疫力が低下してとか言うのだろうな。まあでも、お熱とほっぺだけだったし。もう元気だし。
丸2日も寝込んでしまって、その後もなかなかベッドから出られなかったのだけど。
遅くなっちゃったけど、仕切り直しだ。お土産を渡そう。
「ぴか、らして」
「わふん」
ピカさんに持ってもらっていたお土産を出してもらう。こっちに来る前に、チクチクと刺繍したハンカチとおリボン。ちゃんと付与もしてある。
「おみやげ、ちゅくったのら」
「まあ! ロロが刺繍したの?」
「おばあしゃま、しょうなのら。ちょっとらけ、いやいやってわかるのら」
「え? いやいや?」
「アハハハ!」
だからディさん、笑いすぎだ。さっきからずっと笑っている。
「ロロの付与魔法ですよ。僕もこのリボンをもらったんです」
「ええ!? テオ、見せて! お義母様! 聞きました!?」
「ええ! ローゼ! 付与魔法ですって!」
お祖母様と伯母様だ。付与魔法ってそんなに驚くことなのかな? んん? と、俺はキョトンとしていた。
「アハハハ! ロロは分かってないよ! レオ、見て。キョトンとしているよ」
「ディさん、だからロロはマイペースというかなんというか」
「本当だわ。ロロったら可愛い」
「リア姉、そこじゃないぞ」
なんだなんだ? みんなして何を言っているんだ?
ディさんが付与を説明して、ちょっぴり呆れたみたいに俺に言った。
「ロロ、最初の頃に話しただろう? こうしてハンカチやリボンに付与するのは珍しいって」
「あー、しょうらっけ?」
そう言われてみれば、聞いたような気もする。あんまり覚えていない。
だって珍しいと言われても、俺はそんなの気にしない。この付与で少しでもリア姉とレオ兄を守られるのならと思うのだ。
「みんなに、おみやげなのら」
「まあ! ロロ、良いの? 私も貰って良いのかしら?」
「おばあしゃま、いいのら。しゅきなのとって」
「嬉しいわ!」
「お義母様! 私も!」
「私も欲しいです!」
キャアキャア盛り上がっているお祖母様と伯母様の中に、ティーナさんも参加だ。あれかな? 女性陣はやっぱおリボンが良いのかな?
「このハンカチの刺繍もロロがしたのか?」
「おじしゃま、しょうなのら」
「まだ3歳なのに上手じゃないか。エル、頑張れよ」
「ええー! おじいしゃま、なんらよ!」
ふふふ、エルっていじられキャラなのかな? それだけ愛されているってことだ。
「ろろ、ぼくもいいか?」
「もちろんなのら」
「やっちゃ!」
そう言って、エルはハンカチを手に取った。エルも俺と一緒でまだ髪が短いから、リボンは使いようがない。
「素晴らしいわ! 刺繍で付与するなんて聞いたことがないもの!」
「ねえ、ローゼ。これって私たちにもできないかしら?」
「お義母様、そうですよね。挑戦してみましょう!」
お祖母様と伯母様が盛り上がっている。それを気にもしないで、ティーナさんが真剣なお顔をしてリボンを選んでいた。
「お花も可愛いし、葉っぱも捨てがたいのよね」
喜んでもらえたみたいで嬉しい。




