427ー叱られちゃった
「二人とも探したんだぞ!」
「無事なの!? 怪我はない!?」
「ロロ、ちゃんと説明してよ?」
ああ、三人の圧が強い。逃げられないのは分かっていたけど、三人揃っていることないじゃないか。
懲りていないわけじゃないよ。本当に、心配かけちゃったと反省している。でも、叱られるのは嫌だしぃ。
「ピカが一緒だからといって、二人だけでお邸の外に出たら駄目だ。ロロ、エル、どれだけみんなに心配をかけたと思ってるんだ!」
いかん、レオ兄が魔王を召喚してしまっているぞ。
「ぼくが、いこうっていったんらじょ。らから、ろろはわるくないんら」
「しょんなことないのら。いっしょなのら」
「どっちにしろ、大人に言わないで二人だけで行ったのは駄目だ! エル! ロロ! 二度とこんなことをするんじゃないぞ!」
お祖父様の声がいつもより大きい。ごめんなさいなのだ。
「わかってるじょ。ごめんなしゃい」
「そうよ、もしかしたら人攫いに攫われているのかとも考えたのよ。もう生きた心地がしなかったわ」
「あい、ごめんなしゃい」
やっぱ叱られちゃったよね。しかもお祖父様は俺とエルの捜索に、兵を出そうとまでしていたらしい。そうならなくて良かった。兵なんてびっくりだ。でもそれだけ心配を掛けちゃった。
これは仕方がない。ちょっぴり小さくなっておこう。元々小さいのだけど。
「ふふふふ、二人は薬草を採りに行っていたらしいよ」
一人余裕のディさんが説明してくれた。裏の林の中にある洞窟にいたこと、そして魔鳥の群れに襲われていたこと。
「なんだとぉッ!? 魔鳥にか!?」
「よく無事でいてくれたわ!」
「ディさん、本当にすみません」
レオ兄に謝らせちゃった。あー、めっちゃ罪悪感に苛まれるじゃないか。
「わふん」
ピカまで、僕が付いていたのにごめんなさい。なんて言っている。いつもは元気にフリフリしている尻尾が、今は元気なく垂れている。
いやいや、ピカは悪くない。俺たちを守ってくれたのだから。
ディさんがマジックバッグから薬草を出してくれた。
「ウォルターに使う薬草を採りに行ってたのね?」
「しょうらじょ。もうないっていってたから」
「しょうなのら」
ふぅ~ッとお祖父様が大きく息を吐いた。
「エルとロロが行かなくても、大人が採りに行く準備をしていたのだぞ」
「らから、おおじいじ。ぼうけんら」
「しょうしょう、ぼうけんなのら」
レオ兄が、声を出さないように笑ってる。肩が震えてるから、バレバレなのだけど。
「怪我がなかったから良かったものの」
「そうよ、心配したのよ」
「ロロ、魔鳥に襲われてピンチだったんだろう?」
おっと、レオ兄はやっぱよく分かっている。俺の隣にいるキラキラしたディさんが証拠だ。
レオ兄が鋭いことを言う。
「だって、でないとディさんを呼ぶはずないじゃない?」
「しょうなのら」
「それを、話しておかないといけないんだ」
二人とも着替えてきなさい。と、お祖母様に言われちゃった。
「服が汚れているよ」
「あい、れおにい」
「わかったじょ」
レオ兄に頭をポンポンとされた。ニッコリとしていたけど、レオ兄にも心配を掛けてしまった。
まあ、あとは大人にお任せだ。ディさんがちゃんと話してくれるだろう。
「なあ、ろろ」
「なんら?」
「でぃしゃんっていうのか?」
「しょうなのら」
今頃なのか!? エルはディさんと会うのは初めてだったらしい。エルフさんは、クリスティー先生と会ったことがあるから知っているそうだ。
「でぃしゃんは、おともらちなのら」
「ろろはやっぱ、しゅげーな。えるふしゃんと、おともらちなのか」
「うん、まいにちいっしょに、あしょんれるのら」
「まいにちなのか!?」
お目々をまん丸にして驚いていた。エルフさんって滅多に見ない。だってディさんとクリスティー先生しか知らない。
ディさんは、王都に行けばいるよと言っていた。だからきっとこの国にもいるんじゃないかな?
「えるふしゃんって、しゅげーよな!」
「しょうなのら」
きっとクリスティー先生のことを言っているのだろう。
「けろ、しゅげーこわいけろな」
「えー? こわいのら?」
「しょうらじょ。まほうのおべんきょうを、ぬけらしたときら。めっちゃ、しかられたんらじょ」
やっぱり抜け出しているのじゃないか。しかもクリスティー先生に叱られたと。
「びゅーんッておいかけてきて、しかられたんらじょ」
「えぇー」
クリスティー先生がそんなに怒っているところなんて想像できないぞ。
「けろ、くりしゅてぃーしぇんしぇいは、けんもちゅよいんら」
「でぃしゃんもら。ゆみもしゅごいんら」
「おぉー! ろろは、みたことあんのか?」
「あるのら」
少しだけ教わったしね。でも俺はまだまだ力が足らなかった。
「ぼく、えるふしゃんのくにに、いきたいっていったんら」
「しょうなの?」
「しょうら。らってしゅげーらろ?」
「うん。ボクもいきたいっていったのら」
「な! しょうらよな!」
「うん!」
「やっぱ、しんゆうらな!」
「しんゆうなのら!」
エルと二人で、小さなお手々の手のひらをパチンと叩き合ってハイタッチだ。ちょっぴりその場でピョンとジャンプしちゃったりして。
今日の冒険で、もう親友であり同志だ。大人になったらエルも一緒に、エルフさんの国に行けると良いなと思った。だってとっても楽しそうだから。




