421ーぼうけんら!
目の前をピヨピヨ、キャンキャンと、見ているこっちが疲れるくらいに元気に走っている。
「あー……れおにい、はりきってるのら」
「アハハハ、そうだね。ずっと馬車だったから、ここに来てから毎日ああして走っているよ」
「ええー」
「パトロールしているらしいよ」
「ろこを、ぱとろーるしゅるのら?」
「ね、そうだよね」
ここは安全だというのに、一体どこをパトロールしているのだろう?
本当にあの子たちは、パワフルだ。めっちゃテンションが高いじゃないか。でも、もうちょっと落ち着こう。
「りーだー!」
俺が呼ぶと、先頭を走っていたリーダーがピューッとやって来た。速いなぁ、前より速くなってないか?
「ピヨ」
「あんまり、うるしゃくしないれね」
「ぴよよ」
お邸の裏庭をパトロールしてるとリーダーが言った。本当に何から守っているのか知らないけど。
「ろろは、りーだーとしゃべれるのか?」
「しょうらよ」
「しゅごいなッ!」
「ボクは、ていまーらから」
「やっぱ、ていまーってしゅごいんらなッ!」
ふふふ、前にもエルはそう言ってたね。でも、本当はテイマーだからじゃないんだけど。
「ぼくも、ていまーになるじょ!」
「アハハハ、エルは無理だろう?」
「おじいしゃま、なんれら?」
「だってエルは魔法より剣だろう?」
「しょんなことないじょ」
「そうか? 魔法の練習をよく抜け出しているだろう?」
「あー! しょれは、いったららめら!」
あらあら、抜け出しているのか。自分でも剣の方が好きだって言っていたもの。それぞれ、向き不向きがあるからね。
裏庭でリーダーたちやプチゴーレムと遊んでいると、温室から伯母様とお祖母様が出てきた。ニコ兄の姿もある。
「あ! ロロ! まだあんまり動き回ったら駄目だぞ!」
「にこにい、おとなしくしてるのら」
「そうか! お利口だな!」
「アハハハ、ニコったら」
「だってレオ兄、ロロはすぐに動きたがるからさ」
それはあれだね、俺が攫われた後のことを言っているよね。だってもう大丈夫だから。
でも今日はまだ大人しくしているだろう?
「にこにい、らいじょぶらじょ。ぼくもみてるからな」
「エル、一緒に遊んでるんだろう?」
「しょうらけろ、ちゃんとみてるじょ」
「そっか。頼むな」
「おー」
あれれ? そんな言い方をしたら、俺ってとってもやんちゃなちびっ子に聞こえるじゃないか。
「アハハハ、ロロはお利口だから大丈夫だ」
ほら、伯父様もそう言ってる。
「あらあら、みんなで何をしていたの?」
「うぉるたーしゃんに、あいにいってたのら」
「まあ、それは喜んだでしょう?」
お祖母様と伯母様だ。温室で何をしていたのかな?
「そのウォルターに使う薬草がね、もう残り少ないのよ。近いうちに採りに行ってもらわないと」
「あれが一番腰痛に効きますからね、多めに採ってきてもらいましょう」
伯母様が薬草を育てているそうだけど、普段は打ち身とかに使っているものらしい。長期間ウォルターに使っていたものだから、育てていた分がもうすぐ使い果たしてしまうそうだ。
それは大変だ。薬草がなくなったらウォルターさんは痛みが酷くなるのではないか?
「大丈夫よ、裏の林に自生しているの」
「すぐに採りに行ってもらえるわ」
なら大丈夫だね。ちょっと心配しちゃった。
本当、魔法で治せたら良いのだけど。
「ロロ、最初に魔法を使っているのよ。後は時間をかけてゆっくり治していくのよ」
「おばあしゃま、しょうなの?」
「ええ、そうよ。診てくださったお医者様がね、あとはゆっくり治しましょうっておっしゃっていたの。もうお年だから、体力を回復させながらなのですって」
それは知らなかった。俺は酷い怪我をした時でも、すぐに治してもらえたから。あ、違った。ウォルターさんのは怪我ではないのだった。
そんな話をしていた翌日も、エルと一緒に裏庭で遊んでいた。エルはプチゴーレムがお気に入りだ。
「ろろ、おおばあばのいってた、やくしょうな」
「うん、うぉるたーしゃんの?」
「しょうら。ぼく、あるとこしってんら」
「しょうなの?」
「おばあしゃまといっしょに、いったことあるんだ。めっちゃきれいなとこら」
「へえ~」
「みたくないか?」
「うん、みてみたいのら」
「らろ!?」
え? あれれ? どうした? お目々がキラッキラしているぞ。俺って、ちびっ子エルの誘導に引っかかっちゃったかな?
「よしッ! いくじょ!」
「え!?」
「らいじょぶら! ぴかにのっていくじょ!」
「ええー!?」
「わふ!?」
ほら、ピカさんだって驚いている。
エルはすぐに一人でピカに乗れるようになっていた。やっぱ身体を動かす方が好きだと言っていただけあって、身体能力も高いのだろう。なんて、ピカに乗るってだけのことなのだけど。
「しゅぐうらなんら」
「しょお?」
「おー。らから、とりにいけるじょ」
ウォルターさんに使う薬草を採りに行こうと言っている。でもなぁ、俺たちだけで行くのは駄目だろう?
「ろろ! ぼうけんら!」
「ひょぉー! ぼうけん!」
ほら、とっても魅力的な言葉だろう? ついつい俺もそれに釣られてしまう。
「わふ」
ピカさんが、二人だと危ないよ。と言っている。ごもっともなのだけど。それでも、そそられてしまうよね。
「アンアン!」
「ピヨピヨ!」
ああ、自分たちも一緒に行くと言い出した。




