414ー小さなお友達
ニコ兄が俺に振ってきた。話を変えようとしていないか?
「ロロは魔法が得意なんだぞ」
「そうなの? ロロちゃんったらまだ小さいのに凄いわね」
「ちょっとらけなのら」
得意というわけではない。リア姉みたいに剣を扱うこともできないから、それよりもまだマシというだけだ。まだまだ得意なんてレベルじゃない。
ただ、俺たちの母様は魔法が得意で魔力量も多かった。それを受け継いでいるのだろうと思う。
父様は剣や槍、弓も使えた。両方の才能を受け継いだのがレオ兄だ。
「れおにいはしゅごい」
「あら? ロロちゃんよりレオくんの方が、魔法が使えるってことかしら?」
「いちゅもおしょわってるのら」
「そうなのね。レオくんは槍も上手なのにね」
そうそう、俺たち自慢の長男だ。とっても優しくて冷静沈着、いつもリア姉の背中を守っている。
「ふふふん、れおにいは、じまんなのら」
「な、レオ兄はスゲーよな」
「あらあら、ふふふ」
だってレオ兄は父親代りでもある。俺にとっては、とっても頼りになる兄なのだ。
みんなでリア姉とお祖父様の打ち合いを見ていたら、どこからかいつもの元気な鳴き声が聞こえてきた。
「こっちらじょー!」
あれれ? この声はエルかな? なにをしているのだろう?
声のする方を見ていると、エルがテケテケと走ってきた。その後を追いかけて、あの子たちが走っている。リーダーと、フォーちゃんとリーちゃんコーちゃんに、いっちー、にっちー、さっちー、よっちー、ごっちーだ。一緒に遊んでいたのかな?
「あー! ろろー! もうおきてもいいのか!?」
「うん、もうげんきなのら!」
「よし! いっしょにあしょぶじょ!」
そう言いながら走ってくる。そんなに走ると転んじゃうぞ。
「エル! ロロはまだ駄目よ」
「ええー! おばあしゃま、なんれー!?」
無事に俺たちのそばまでやって来たエルが、ローゼさんに文句を言っている。俺も一緒に遊びたいのだけど。
「ロロはまだお外に出られるようになったばかりなのよ。だから今日は駄目」
「じゃあ、あしたはいい?」
「少しずつね。まだ体力が戻ってないでしょうから」
「え? ろろ、げんきなんらろ?」
「うん」
「ほら、げんきらって」
「ロロちゃん、少しずつ慣らすのよ。何日もまともに食べていなかったのだから」
「あい」
「しょうがねーな」
ふふふ、しょうがないと言いながら、お口はタコさんみたいになっている。それでも、たった3歳でちゃんと聞き分けができて我慢ができる。
俺は前世で3歳の頃なんて覚えてないけど、そんなにお利口さんじゃなかったことは確かだと思う。
まだ3歳だけど、侯爵家の子息としての教育を受けているんだ。のんびりポヤヤ~ンと育った俺とは違う。
「げんきになったら、ぼくのひみちゅを、おしえてあげる」
「えるのひみちゅ?」
「しょうらよ。ひみちゅら」
ふふふ、と二人で微笑み合う。二人だけの秘密ね~、なんて言いながら。こういうのも新鮮だ。
忘れちゃいけない、リーダーたちとプチゴーレムだ。俺たちの足元を鳴きながらグルグルと走り回っている。何が楽しいのだか。
「ろろが、ちゅくったんらってな!」
「しょうなのら」
「ろろ、ぼくもほしい!」
「ぷちごーれむ?」
「しょうら」
あらあら、ここでもまた作っちゃうか? 俺って土人形を作ってばっかじゃないか?
「エル、無理を言ったら駄目でしょう?」
「ええー」
「ろーぜしゃん、むりじゃないのら」
「そうなの? でも今日は駄目よ。ロロちゃん、少しずつねって言ったでしょう?」
「あい。しょうらった」
「あー、しょうらった」
エルも俺も3歳児だからか、よく似た喋り方だ。背格好もよく似ている。もうお友達だしね。
「みんなといっしょに、あしょんれたのら?」
「しょうら。みんなしゅげー、はやいのな!」
「ふふふふ」
まん丸なお目々を、キラキラとさせて話してくれる。きっと本気を出したらリーダーたちの方が速いだろう。今はエルに合わせてくれているのだと思うよ。
「めっちゃはやいのら」
「ぴかと、ろっちがはやいのかなー?」
「わふ」
「しょうらよね、ぴからよね」
ピカが横から、僕の方が速いに決まってるじゃない。と言ってきた。そりゃそうだよね、だってピカは神獣だもの。
「しょっか! ぴかはしゅげーんらな! ぼしゅら!」
「しょうしょう。ふふふ」
「わふぅ」
ボスなんかじゃないよ。なんてピカさんが言っている。でも実際にいっちーたちは、ピカがモデルだからね。歴としたピカの子分なのだよ。
「わふん」
仕方ないなぁ、なんて言ってる。いつも気にかけて世話を焼いているのに、ピカさんったら素直じゃないね。
それよりも、久しぶりにお外に出られたのだから。
「ぴか、のしぇて」
「わふ」
「ええ! ろろ! のるのか!?」
「うん、えるもいっしょにのる?」
「いいのか!?」
だってとってもお目々を輝かせて、自分も乗りたいとお顔が物語っている。元気になったら一緒に乗ろうと言っていたしね。ピカさん、いいよね?
「わふ」
いいよ~。と言って俺たちが乗りやすいように伏せてくれる。ヨイショとピカの背中に足をかけて乗る。
「ろろ、のれねーじょ」
おや、エルは慣れていないからだ。そんな時はレオ兄だ。




