410ー大家族
伯母様ってどんな人なのかなぁ。
「お義母様はお優しい方だしおっとりして見えるけど、実はお義父様よりクールだと思うわ」
「そうだな、母上の方が冷静に判断を下す。私たちが魔法を教わったのは母からだ」
「母上は容赦ないからな」
「それはテオが真剣にやらないからだ」
「兄上、そんなことないです。僕なりに真剣です」
「そうか? そうは見えないけどな」
あらら、テオさんったらそんな感じなのだね。テオさんて魔法より剣のイメージがあるし、もしかして魔法は苦手だったりして?
「ロロ、伯母様の魔法の練習は厳しいのよ」
「ふふふ、それは姉上がちゃんとやらないからだよ」
「なによ、レオ。私だってちゃんとやってるわ。でもできないのだもの」
「だから姉上、日頃から魔法操作をしていないからだよ」
「分かってますぅ~」
リア姉は、ディさんにもそう言われてたものね。頑張ると言いながら、いつも睡魔に負けちゃっているのを俺は知っている。それにしても、テオさんとリア姉って同じような言い訳をしていないか? 似た者同士ってやつかな?
「ロロ、何を考えていたのかしら?」
「なんれもないのら~」
おっといけない。こんなときのリア姉は鋭いのだ。俺の隣に陣取っているエルが、ジッと俺の顔を見ている。どうした? そんなにほっぺがプクプクかな?
「ろろはまほうが、ちゅかえるんらってな?」
「うん、しゅこしらけね」
「ぼくはとうしゃまに、けんをおしょわるほうが、しゅきなんら」
「しょうなの?」
「うん。けろな、おばあしゃまに、まほうもおしょわってるじょ」
「ふふふ、エルったらよく逃げ出しているのに」
「かあしゃま! しょれはひみちゅら!」
「あらあら」
もう家族が多いからややこしい。俺たちから見れば伯父様と伯母様だけど、エルから見れば祖父母だ。俺たちはお祖父様、お祖母様と呼んでいるけど、エルだと、曾祖父母になる。
「おおじいじと、おおばあばら」
「しょうよんれるの?」
「しょうらよ」
ほうほう、ちびっ子にはきっとまだ呼び難いのだろう。
なんだか一気に大家族になった気分だ。こんなのも良いなぁ。前世から家族とは疎遠だったから、とても新鮮で初めての感覚だ。
母の兄の子はフィンさんとテオさんだけじゃない。あと女の子が二人いるそうだ。
長女はテオさんのお姉さんで、もう隣領の侯爵家に嫁いでいる。次女はテオさんの妹になる。ロッテと呼ばれていて、シャルロッテ・オードランというそうだ。
「ロッテは15歳だからレオと同い年だな。学院の寮に入っているんだ」
「僕と同い年ですか」
「ああ、でもロッテはポヤポヤとしているからな。レオはしっかりしていて同い年には思えないよ」
「みんなが来るって伝えたら、このお休みに帰ってくるそうよ。楽しみね」
「ああ、会いたいと言っていたな」
母様の実家はこれで全員らしい。とっても大家族だ。辺境伯家も大家族だと思ったけどそれ以上だった。俺、覚えられるかな?
「ふふふ、ゆっくり覚えれば良いのよ」
「てぃーなしゃん」
母の兄の子の奥さん、ああ、ややこしい。フィンさんとは幼い頃に婚約して、この帝国の学院を卒業すると同時に婚姻したそうだ。そして早くにエルを生んだ。だからだね。子供がいるようには見えないもの。
みんな穏やかに話してくれる。いつの間にか、俺が寝ている部屋に集合していた。
「あらあら、皆さまお茶をどうぞ」
「あら、マリー、ありがとう」
久しぶりに出た。マリーの、お茶どうぞ。この部屋がお茶会会場になっちゃってるぞ。
「まりー、ぼくじゅーしゅをおかわりら」
「ボクも、ほしいのら」
「あらあら、少しだけですよ」
お熱が出て倒れちゃったけど、こうしてみんなが心配して俺の部屋に集まってくれている。これってとっても嬉しい。なんだか、初めてのことで胸がムズムズしてしまう。
前世では俺が熱を出しても母は仕事に行っていた。それは生活していくためだと理解していた。でも、お熱が高くなってくると独りぼっちでいるのがとても寂しく感じたものだ。一人でお布団の中で、ジッと我慢するしかなかった。お熱の汗なのか、涙なのか分からなくなっていた。
なのに今は、こんなに何人もの人達に囲まれている。みんなが、俺の名を呼んでくれる。
「ふふふ」
「ろろ、なんら?」
「らって、うれしいのら」
「おねちゅがれて、うれしいのか?」
「しょうじゃないのら。みんながきてくれてうれしい。とってもうれしいのら」
「ロロ、ありがたいことだね」
「うん、れおにい」
「わふん」
「ぴか、ありがと」
僕はいつでも一緒だよとピカが言ってきた。そうだね、ピカは俺達が家を追い出される時に来てくれて、ずっと一緒だ。いつも助けてくれた。
「ろろは、ふしぎらな」
エルが俺とピカを交互に見比べている。何かな? どうした?
「らって、ろろはぴかが、なにをいってるのかわかるのか?」
「わかるのら」
「ロロだけ分かるんだよ」
「れおにい、しょうなのか?」
「らって、ボクはていまーらから」
ふふふん、とちょっぴり自慢しちゃった。本当はそうじゃないんだけど。それに、そういうレオ兄だって分かるのだし。
「ていまーか!? しゅげーな!」
「えへへ~」
「じゃあ、ちろもわかるのか?」
「うん、わかるのら」
「しゅっげー!」
エルのお目々が途端にキラキラと輝きだした。興味があるのかな?




