397ーフォローの人
「おにく!」
「アハハハ! ロロ、肉かよ!」
「らって、にこにい。からあげにしたら、うまうまなのら」
「そうだな!」
「まあ、ロロったら」
おっと、そんなことより俺達の後ろの馬車に乗っているマリー達は大丈夫かな? 怖がっているだろうに。
「にこにい、まりーがしんぱいなのら」
「ああ、そうだな」
「おばあしゃま、もう、れてもいい?」
「ええ、いいわよ」
「よし、ロロ。行こう!」
「うん!」
ニコ兄に降ろしてもらって外に出ると、ちょうどマリー達が走ってきた。
「坊ちゃま! 大丈夫ですか!?」
「ニコったら、またやっていたでしょう!?」
「音が鳴っていたもの!」
ああ、そうだよね。あの音でニコ兄だと分かってしまう。あの音、やっぱ考え直さないと駄目かなぁ。とっても目立ってしまう。おマヌケだしぃ。
「またニコは無茶をしたんじゃないでしょうね?」
「俺は大丈夫だぞ。ユーリア、怖かっただろう?」
「レオ坊ちゃま達が行かれるのが見えたもの。怖くなかったわ」
「もうマリーはヒヤヒヤしましたよ」
「おばあちゃんったら、それでも外を見ていたじゃない」
「だって、エルザ。心配でしょう?」
なんだ、平気そうだ。もっと怖がっているかと思った。
マリー達もお墓参りの時に魔獣を見たし、ロック鳥にも会っているから平気だったのかな? ロック鳥に比べると全然大きく感じないもの。威圧感もないしね。
マリーが俺達の馬車を覗き込む。
「大奥様、大丈夫でしたか?」
「ええ、平気よ。それより、ニコとロロには驚いたわ」
そうかな? いつもこんな感じなのだ。ね、ニコ兄。
そこにピヨヨ、キャンキャンと戻ってきた子達。本当にね、俺はこの子達には驚いてばかりだよ。
「ピヨ!」
「アン!」
口々に、やっつけたアルね! 楽勝だった! なんて言っている。しかもとっても褒めて欲しそうな眼で俺を見つめて、順に並んでいたりする。それはなんの順番待ちなのかな?
「ピヨヨ!」
「キャン!」
はいはい、分かったのだ。もう細かいことはいいや。
「しゅごいね~、ちゅよかったね~」
そう言いながら、順番に並んでいる子達を撫でる。リーダーが一番最後に並んでいた。
「ピヨピヨ」
「うん、しかたないのら」
「ピヨ」
「らいじょぶらった?」
「ピヨ!」
「しょっか。ちゅよかったね〜!」
リーダーが、勝手に馬車を降りて参戦してごめんなさいと謝ってきた。なんだ、この子は分かっているのだ。でも、止められなかったのだろう。リーダーだって先頭を走っていたし、張り切って蹴っていたし。
でも、お祖父様のお邸に着いたら、もう少し大人しくしてくれると助かるよ。
「ピヨヨ」
「うん、おねがいね」
リーダーが、そこはちゃんと仕切ると言った。この子には面倒をかけちゃうね。みんな怪我がなかったから良かったけど、もう無茶はしたら駄目だと言っておいた。まあ、聞いてくれないだろうけど。
「ロロ、ちょっと小腹が空いたよな」
「うん、がんばったから」
「ちょっとレオ。ニコとロロったらいつもこんな感じなの?」
「お祖母様、そうですね。アハハハ」
「レオも笑い事じゃないわよ。ふふふ」
でもお祖母様だって笑っているのだ。その時、テオさんに呼ばれた。
「レオ、ニコ!」
「にこにい、よばれたのら」
「おう、そうだな」
「ニコ、行こうか」
「おう」
レオ兄とニコ兄が呼んでいるテオさんのところに行った。どうしたのだろう?
俺は? 俺は良いのかな? もし他にも怪我人がいるなら、俺が治すよ? ポーションもあるよ。なんて思っていたのだ。
「後始末ね、地面を綺麗にするのよ」
「お祖母様、地面ですか? ああ、魔鳥の血痕ですね」
「そうよ、リアも討伐に出ているなら分かるでしょう?」
「はい。いつも埋めますから」
んん? 俺は全然分からない。分かるように説明してほしいぞ。
「地面に血痕を残しておくと、そこに獣が集まってきたりするのよ」
なるほど、それを防ぐために土で埋めるのか。ああ、だからレオ兄とニコ兄だ。二人は土属性魔法が使える。それで埋めていくのだろう。
見ていると、レオ兄とニコ兄が魔法で土を掘り起こして埋めている。
「りあねえ、いちゅもはろうしてるのら?」
「いつもって、私達が討伐に出た時のこと?」
「しょうなのら」
「いつもちゃんとレオが埋めているわよ」
なんだ、やっぱレオ兄なのか。レオ兄ってフォローの人だね。そういう星の元に生まれちゃったのかな? 性格かな? いや、リア姉と一緒だからかな?
「ロロ、今何を考えたのかしら?」
「なんれもないのら~」
思わず眼が泳いでしまう。忘れていた。俺って、考えていることをよくリア姉に読まれちゃう。
今まで何度か、リア姉とレオ兄が戦うところを見ている。ヒュージスライムを倒した時なんて、俺とニコ兄だって一緒に戦ったつもりなのだ。それで、よく分かる。
リア姉は前しか見ていないといっても過言ではない。真っ先に突っ込んで行く。そのリア姉の背中を守っているのがレオ兄だ。言ってみれば、フリード爺とラン爺みたいな感じなのだね。ふむふむ。と、俺は短い腕を組む。




