387ークリスティー先生の思い
親しい人達との別れを、繰り返してきたクリスティー先生。
「ロロ、また新しい出会いが待っています。ロロ達はまだまだ沢山の出会いを経験して、大人になっていくのでっす。またいつでも来てください。成長した姿を見せてください。楽しみに待っていますよ」
「しぇんしぇい、じぇったいにくるのら」
「はい、ロロ」
「俺も来るぞ」
「ええ、ニコ。待ってますよ」
こうして俺達は翌日出発する事になった。
マリーがその日の夜に、色々お片付けをして俺の洋服やら何やらを整理してくれた。全部ピカに持って貰うから、俺はいつものポシェットだけだ。
「ロロ、まだ起きていますか?」
と、クリスティー先生が部屋にやって来た。
「しぇんしぇい、おきてるのら」
「今日は夕食前まで寝ていたので、まだ起きていますよ」
「レオはもう出発する準備は終わったのですか?」
「はい、終わりました」
「じゃあ、今夜も一緒に寝ましょう」
「あらあら、じゃあマリーはこれで失礼しますね」
「まりー、ありがと。おやしゅみ」
「おやすみ、マリー」
「はい、おやすみなさい」
俺が真ん中で、3人でベッドに入る。いつもの様にピカはベッドの直ぐ側に寝転んでいる。チロはそのピカの上だ。ふふふ、嬉しいけどちょっぴり寂しい。だからちょっぴり聞いてみたくなった。
「しぇんしぇい、しゃびしくないのら?」
「ロロとお別れする事ですか?」
「しょうらけろ……ぼくもしぇんしぇいより、さきにいくのら」
「ロロ……」
「ロロ、そんな事を考えていたのか?」
「らって、れおにい。でぃしゃんもしょうなのら」
「そうだね」
だって俺ならとっても辛いと思うのだ。自分だけが残って、みんないなくなるんだよ。自分よりずっと年下だった人達が、先に老いていってしまうんだ。寂しいなんてもんじゃない。
「それは私やディがエルフなので、どうにもできない事なのでっす。エルフは長命種ですからね。ですが、確かに寂しい気持ちはありますよ」
と、クリスティー先生が話してくれた。
でも、例えばクリスティー先生なら、この家系の人達がいる。自分が知り合った人達の血を継いだ人達が。それを受け継がれているのを見るのも良いものだと言った。
「思い出しますよ。あの方とよく似ているとか、こんな些細な事でも大切に受け継いでくれるのだとか思いますよ。寂しいというよりも、懐かしいと思えまっす」
クリスティー先生がこの辺境伯家を気に入ってずっと留まっている理由も話してくれた。
この家の人達は昔から才能豊かで、人の心を大切にする人達なのだと。領地の人達を自分達が守っていかないとと責任をもっている。心が温かくて向上心も高い。そんなところが、気に入っていると。
「些細な事なのでっす。その些細な事を大切にできる人達なのですね」
そっか。俺達の事もあんなに心配してくれていた。それも、クリスティー先生が気に入っているところなのだろうと思った。
「しぇんしぇい、じぇったいにまたくるのら」
「ええ、待っていますよ」
俺はレオ兄とクリスティー先生と手を繋いで眠った。あんなにお昼寝をしたのに、ベッドに入ると直ぐに寝てしまった。もう少し、クリスティー先生と話していたかったな。
翌日、いつもの様に朝ごはんを食べて、それからまた鍛練を見学していた。
なんとお祖父様も参加していたのだ。お祖母様とネリアさんと一緒にその鍛練を見学する。
今日もやっぱりリア姉は途中でギブアップしていたけど、お祖父様は涼しい顔をして最後まで参加していた。
「なんだ、リアはまだまだじゃないか」
なんてお祖父様に言われていた。リア姉は持久力がないからね。今後の課題だ。
「ニコは体力があるな。ニコの歳であれだけ鍛練に付いてくるんだから」
「お祖父様、俺は毎日畑に出ているからな。体力だけはあるんだ」
「アハハハ、畑で鍛えているのか」
毎日ドルフ爺と一緒に畑で作業をしているから、自然に体力が付いたのだろう。
お祖父様も鍛練に参加していたのに、リア姉達の事をよく見ていた。そのお祖父様が言い出したのだ。
「なるほど、レオが補助しているのか」
「え、お祖父様。どうして分かるのですか?」
「アハハハ、そりゃ分かるぞ。リアの瞬発力とレオのバックアップだろう」
「姉上、ほら聞いた? 分かる人には分かるんだよ」
「レオ、私だって分かっているわ!」
はいはい、二人良いコンビだ。流石姉弟だと思うもの。レオ兄はいつも、リア姉の行動を予測して動いていると思う。戦う時だって、突っ込んで行くリア姉の背中をレオ兄が守っていたのだ。
「れおにいは、しゅごいのら」
「ロロ! 私だって頑張っているの!」
「アハハハ! もちろん、リアの実力も相当なものだ」
「お祖父様! そうでしょう!?」
そして、とうとう出発する時間になった。
昨日馬で先に走ってきたお祖父様とお祖母様に数時間遅れて、夜には馬車の人達も到着していた。俺達はその馬車に乗る。今日はお祖母様も一緒だ。お祖父様とテオさん、ジルさんが馬だ。
辺境伯邸の前庭に、みんなが集まってくれている。
たった3日間だけだったけど、もっといた様な気がするくらいに毎日が楽しかった。初めての事ばかりだった。俺はフリード爺の子分のゴーレムも作ったし。うん、良いお仕事をしたよ。




