384ー色んな人の気持ち
ディさんが何度か行っているのなら、俺達も直接お祖父様のお邸に転移させてもらったら良いのじゃないか? て事になっちゃうのだけど。
「私達も会いたかったんだ。共に剣を学んだアルの子供達なのだから」
「だからここを待ち合わせ場所にしてもらったのよ」
「フォリコッコを、譲ってもらう事もあったからなのでっす」
そうだったのか。お祖父様達にも、待っていれば用事が済んだら転移で行くよと言ったらしい。
「そんなのじっと待っていられるか!」
と、お祖父様は言って、ここまで迎えにきてくれた訳だ。遠いところ、俺達の為に。
「確かに国が違うし遠い。だが、孫達と一緒に旅をするのも良いものだ!」
「もう、言い出したら聞かないのよ。だから私も付いてきちゃったの」
ふふふと、笑いながらお祖母様が言った。それでも大変な事だと思うのだ。俺達の知らないところで色んな人が考えて動いてくれていた。
「ディさんにはお世話になってばかりだね」
「本当ね」
「私達も突然クリスティー先生と、ディさんが訪ねて来られて驚いたのよ」
「ああ、あの有名なディディエ・サルトゥルスル殿だからな」
え、ディさんてそんなに有名なのか? ルルンデで有名なのは知っていたけど。だってお祭りでは、真っ白な馬車に乗ってパレードしていたし。
俺もララちゃんとピカと一緒に、乗っちゃったけど。ふふふ。
「この国の貴族で、ディさんを知らない人なんていないわよ。クリスティー先生もそうだわ」
「しぇんしぇい、しゅごいのら」
「偶々エルフが珍しいだけですよ」
いや、絶対にそれだけじゃないだろう? きっと何かあるのだろう。
その有名な二人のエルフのおかげで、俺達はこうしてお祖父様とお祖母様に会えた。それって、奇跡みたいな気がするのだ。
「しぇんしぇい、ありがとうなのら」
「はい、とんでもないでっす」
クリスティー先生が、ニッコリとしながら頷いた。
俺はそのクリスティー先生に、両手を伸ばす。お祖父様がクリスティー先生の前まで移動すると、クリスティー先生は俺を優しく抱っこしてくれた。
お祖父様の腕の中から、クリスティー先生の腕の中へ。どっちの腕の中も、俺は安心する。クリスティー先生の腕の中から手を伸ばし、お祖父様の首に抱きついた。
「ふたりとも、らいしゅきなのら」
「ロロォーッ!」
「おやおや、ふふふ」
お祖父様がクリスティー先生ごと、俺を抱きしめた。俺達はこんなにも大勢の人達の気持ちを貰っているのだ。俺達が知らないところで、心配してくれていた。俺達に会って、涙を流してくれた。
こんな日が来るなんて、想像もできなかった。
お祖父様はそれだけでは納得できなかったらしくて、ニコ兄、リア姉も抱きしめた。そして、レオ兄の時だ。
「レオ、よく守ってくれた! 偉いぞ!」
「お祖父様……」
「長男として、歯痒い事もあっただろう。自分の無力さに泣きたくなった事だってあっただろう。それでもレオが守った兄弟だ! レオは立派な兄だぞ!」
「あ、有難うございます!」
ガシィッとではなく、ギュッとレオ兄を抱きしめた。
本当だ、レオ兄がいてくれたから俺達は安心して暮らしてこれた。リア姉が暴走しそうな時でも、ちゃんと収めてくれた。俺が夜泣きした時はいつも、大丈夫だよと言いながら抱っこしてくれる。
「れおにい、ありがとなのら」
「そうだな、レオ兄のおかげだ」
「そんなことないよ。僕はニコとロロの兄だから」
「やだ、私は何もしていないみたいじゃない」
「アハハハ、そんな事ないよ。姉上の判断で冒険者になって良かったと思うよ」
「そう? レオ、本当にそう思う?」
「うん、思うよ」
「なら、いいわ」
冒険者になろうと言い出したのはリア姉だからね。最初はレオ兄だって驚いていたもの。
それからオヤツをみんなで食べた。俺の大好きな、アイスクリームが添えられたアップルパイだ。
「にこにい、あいしゅら」
「おう、やったな」
いつもの様に、俺の隣にはニコ兄が座っている。だけど、反対側の隣にはお祖母様がいる。
リア姉の隣にはお祖父様だ。俺達四人を挟むように座っている。慈しむような眼で俺達を見ていてくれる。
「ロロ、私のアイスをあげようか!」
「うん、おじいしゃま!」
「あら、あなた。冷たい物を食べすぎるのは良くないわ」
「えー」
「ロロ、残念だな」
「ええー」
もうお祖父様のアイスを貰うつもりだったのに、お祖母様に止められちゃった。仕方ない。俺は食べるよ。
ナイフを入れるとサクッと良い音がするアップルパイを一口大に切って、その上にアイスを載せる。そのまま大きなお口を開けて、あーんと頬張る。
まだ温かいアップルパイと、冷たいアイス。これがまた良いハーモニーなのだ。
「んんー、うまうまら」
「ロロ、だから一切れが大きいんだよ」
ね、ほっぺに付くからね。でも、これは止められない。ニコ兄がそう言いながら、俺のほっぺを拭いてくれる。
「ふふふ、ロロはお口いっぱいに頬張りたいのね」
「しょうなのら。うまうまなのら」
「ニコも偉いわ。拭いてあげるのね」
「おう、当たり前だぞ。ロロはいつもほっぺにつけるからな」
うん、またつくけどね。モグモグと俺は食べる。こうしてみんなで一緒に食べると、美味しさも倍増だ。




