383ーディさんが
お祖母様のその一言で、俺は両手を出していた。抱っこして、お祖母様のお膝に行くと。
「ロロ」
そっと抱き上げて、横向きにお膝に乗せてくれた。そのまま腕を回して優しく抱きしめてくれる。
「ああ……本当に会いたかったの……」
お祖母様がまた涙を流した。それを見ていたお祖父様も、また大粒の涙を流している。手でお顔を覆い、上を向いてむせび泣いている。
こんなに愛情豊かな両親に育てられた母様の、為人がうかがえるというものだ。
母様もきっと優しくて、愛情豊かな人だったのだろう。
「ありがとうなのら」
「ロロ……?」
「しゃがしてくれて、ありがとうなのら」
「ロロ!」
お祖母様が俺をギュッと抱きしめる。それを見ていたお祖父様。体育会系だからね。
「ロロ! 次は私の膝においで!」
空気を読まない発言だ。お祖母様としんみりして感動の場面なのに。両手を出して期待に満ちた眼差しで見つめられた。
「私の番だッ!」
「あなた、少し煩いですわよ」
お祖母様に叱られちゃっている。
ふふふ、まるでイシュトさんとネリアさんみたいだ。
「私もロロを抱っこしたいんだ!」
「ロロは私が良いって言ってますわよ」
「そんな事は言ってないじゃないか!」
「ふふふ、おじいしゃま」
俺はお祖父様に両手を出した。俺を抱っこするしないと言い合いしている二人を見ると、もう緊張なんて吹っ飛んでしまった。
レオ兄の隣に座っていたお祖父様が、席を立ったかと思うとビュンッとやってきた。
俺をそっとお祖母様のお膝の上から抱き上げる。ガッシリとした身体付きから受ける印象とは違ってそっとだ。
壊れ物を扱うみたいに大事に抱き上げ、胸に包み込む様に抱えられた。
優しく抱っこしているのだけど、まるで俺の存在を確かめるかの様な力強さも感じる。
「リア、レオ、ニコ、こんなに小さなロロをよく守ってきた。今迄よく頑張ったな」
お祖父様が、リア姉達を順にしっかりと見ながら言った。そうだよ、俺はみんなに守られてきた。
リア姉、レオ兄、ニコ兄、そしてマリー達がいなければ、俺は生きていなかったかも知れない。
ニコ兄が膝の上に置いた手を、ギュッと握りしめている。それにお祖父様は気が付いた。
「ニコ、どうした?」
「俺……俺は、なんもできなかった。ロロが攫われた時だって、待ってるしかなかったんだ」
ニコ兄はそんな事を思っていたのか?
そんな事はない。いつも俺の世話をしてくれるのはニコ兄だ。
「ニコ、それは違うよ」
「けど、レオ兄」
「あの時は僕達だって、何もできなかった。ニコが気に病む事はないよ」
「そうよ。ディさんだって、あんな事をする方が悪いんだって言っていたでしょう?」
「リア姉、でも俺はまだ小さいから……」
「ニコ、あなたがお野菜や薬草を育てていると聞いたわ」
お祖母様がそう言った。そんな事も知っているのか。
「おう、そうだぞ。美味しい野菜を食べてほしいんだ。それに俺が育てた薬草で、レオ兄とロロがポーションを作るんだ」
「何もできない事はないじゃない。充分みんなの役に立っているわ」
「そうかな?」
「にこにいは、いちゅもほっぺを、ふいてくれるのら」
「まあ、ロロのほっぺを?」
「しょうなのら」
俺を抱き上げたまま、黙って話を聞いていたお祖父様がニコ兄の側に行き片膝をついた。
そして大きな手で、ニコ兄の頭を撫でた。
「良い兄だ。ニコは責任感が強いのだろう。ニコだって、まだ甘えていても良い歳だ。なのに、ロロが心配なのだな。可愛いのだな」
「当たり前だ。ロロは俺の弟だからな」
「ニコもロロを、守っていたのだな。偉いぞ」
優しくニコ兄の頭を撫でている。よくやったと褒めているみたいだ。
「お、おう……ありがとう。お祖父様」
「ニコォ!」
とうとう俺を抱っこしたまま、ニコ兄に抱きついたお祖父様。
それは無理があるぞ。ニコ兄のお顔がとっても近くにあったから、思わず俺もニコ兄の頭を撫でた。
「にこにい、ありがと」
「何言ってんだ。当たり前じゃないか」
二ヘラッとニコ兄が照れ臭そうに笑った。ふふふ、俺は幸せ者だ。
「これからは私達がいる。リア、レオ、安心して頼って欲しい」
「有難うございます」
「そうよ、リアは私が立派なレディに育てるわ」
「え? お祖母様?」
「剣も良いけど、レディとしても恥ずかしくないようにしないといけないわ」
「は、はい」
あらら? もしかしてお転婆な事もバレちゃっているのかな? ディさん、どれだけ話しているのだよ。
クリスティー先生が教えてくれた。
テオさんとジルさんが俺達の家に来た時点で、ディさんはクリスティー先生に連絡をとった。
俺達がオードラン侯爵家の孫だと、確実になったからだ。
だけど、いくら転移ができると言っても万能ではないらしい。ディさんは、母様の実家を知らなかった。知らないところに転移はできない。
だから一度この辺境伯家に転移し、行った事のあるクリスティー先生が一緒に転移して、隣国のオードラン家に行ったのだそうだ。
それから何度も色々話し合って、この辺境伯家で落ち合う事になったらしい。その後、お祖父様達が日程を決めテオさんにお手紙を出した。
そんなのいつの間にやっていたのか、俺だけじゃなくリア姉達も知らなかった。
お読みいただき有難うございます!
ニコはまだ小さいのに、ちゃんとロロのお兄ちゃんなんですね。
最近、ニコの健気さに心打たれる作者です。^^;
キャラの性格がハッキリ決まると、こんな時はどうするだろう?と、考えなくても役割が決まる事があります。
ちゃんと設定しなきゃ!と、痛感しますね〜
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