379ー同じ思考?
「なんとッ! 可愛いだけでなく、お利口なのだなッ!」
「しぇんしぇい、おなまえちゅけるの、らいじょぶ?」
「フリード様でという事ですか?」
「しょうしょう、まりょくがいるって」
「そうですね、名付けをするのにも魔力が必要ですね」
「お、そうなのか?」
「はい、フリード様。ですがまあ、なんとか大丈夫でしょう」
え、そんなになのか? 名付けに必要な魔力は、俺が思っている以上に必要だと言う事なのかな? それともフリード爺の魔力がそれほど少ないと言う事なのか? どっちなのか分からないのだけど。
「おなまえちゅけたら、ひかるのら。ぺかーって」
「そうなのか?」
「しょうなのら」
「名前は決めていたのだッ!」
よし、なら張り切って名付けをしてもらおう。かっちょいいお名前のお披露目だ。
「クリスティー先生、このままで良いのか?」
「はい、良いですが……念のため、ゴーレム達に掌を向けておきましょうか。少し魔力量が心配でっす」
あれれ? 俺はそんな事はしなかったぞ。とっても大雑把に、いっちーとか言っただけだった。
「ロロは魔力量が多いからでっす」
「へえ~」
ほうほう、そうなのか。ま、取り敢えず名付けだ。
「ふりーろじい、はりきっていうのら」
「おうッ!」
初日に作ったゴーレム達。フリード爺がずっと気にしていたけど、やっと目が覚めた。お待ちかねのフリード爺が考えたお名前の発表だ。ジャジャーンと言ってもらおう。
「お前達は、フーちゃん、リードちゃん、リヒちゃんだぁーッ!」
堂々と胸を張り掌をゴーレム達に向けて、大きな声で披露したフリード爺。しかもとっても満足そうだ。女神の様に語尾の『だぁーッ!』にエコーがかかりそうな感じで、思い切り言い切った。
「ぶふッ! 兄上、何ですかそれは」
ほら、ラン爺が吹き出している。だって、フーちゃん、リードちゃん、リヒちゃんってまんまじゃないか。
俺が、フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんと名付けたのと同じ思考だ。3歳児と同じってどうなのだ? それでもフリード爺は、満足気にしている。嬉しそうだ。
「3体揃って、フリードリヒだ! ロロだって、そう名付けていただろう!?」
「ええー!」
俺の真似をしたのか? それは駄目だ。と、思っても遅かった。3体の新ゴーレムの体が、ペカーッと光っちゃった。あらら~。
「あー、ちゅけちゃった」
「ふふふふ!」
クリスティー先生、笑っているけど良いのか? そんな安直なお名前で。
「可愛いじゃないですか」
「ええー」
可愛いか? 可愛いのか? クリスティー先生の『可愛い』の基準が不安だ。
「ロロ! 私も欲しいわ! ゴーレム!」
「これ、リーゼ。お前はまた何を言っているんだよ」
「だってランお祖父様! 可愛いじゃない!」
もしかして言い出すのではないかと、思ったのだ。リーゼさんの性格ならね。でもさ。
「りーぜしゃんは、ふりーろじいみたいに、じゅっといないのら」
「え? ねえ、リア。ロロは何て言ってるのかしら?」
「ふふふ、リーゼはまた学院に帰るのでしょう? ロロはそれを言っているのよ。ずっとここにいないからって」
「あー、そう言われればそうね」
そうなのだよ。いない間はどうするのだ? 人任せは駄目なのだ。
フリード爺は自分でゴーレム達に、鍛練しそうだろう?
「これからは私と一緒に、この領地を守ってくれッ!」
「キャン!」
「アン!」
「キャンキャン!」
おやおや、新ゴーレム達もやる気だ。なんだか良いチームなのだ。チームフリード爺。いや、それはダサすぎる。
フリード爺の周りをキャンキャンと鳴きながら走り回っている新ゴーレム、もとい、フーちゃん、リードちゃん、リヒちゃん。3体でフリードリヒだ。
自分のお名前をつけたかったのかな? 俺なら絶対に嫌だけど。
そして3体のリーダーは、フーちゃんに決まった。最初に俺の前に来ていた子だ。
「クリスティー先生、この子達はどれ位生きるのだ? いや、生きるといっても良いのか?」
「ああ、そうですね。魔力が供給される限りはと言いたいのですが、なにしろ元は土なのでっす。それでも数百年は大丈夫じゃないでしょうか?」
「な、な、なんだとぉーッ!?」
「ええーっ!?」
フリード爺と一緒にびっくりしちゃった。だってそれならうちのプチゴーレム達もそうなのか? 作った俺より長生きなのか? それってどうなのだ?
あ、でも俺がいなくなったら魔力を貰えないのかな?
「ふふふ、ロロにはディがいますね」
「あー、でぃしゃんが、かわりにあげてくれるかな?」
「そうですね、きっとそうでしょう。ディがエルフの国に帰る時には、一緒に連れて行くでしょうね」
「しょれなら、あんしんなのら」
ディさんはそんな事、全然言ってなかった。分かっていただろうに。もしかして、俺に気を使ってくれてたのかな?
「ならこの子達の事は、クリスティー先生。頼んだぞッ!」
「はい、代々受け継いでまいりましょう」
そっちなのか? この家で代々ゴーレム達を引き継いでいくのか?
それならもっと丁寧に作れば良かった。なんて、ちょっぴり後悔したりして。




