376ーこわこわ
初めての海で、初めての事を体験して、とってもテンションが上がってしまった。胸がずっとドキドキしている。ワクワクも止まらない。
「にこにい、おてて! おててからたべたのら!」
「な! すげーな!」
ニコ兄と一緒にテンション爆上がりだ。二人で手を出してハイタッチなんかしたりして。
「ロロ、大丈夫だった?」
「れおにい、こわこわなのら」
「ふふふ、お目々を瞑りかけていたものね」
「らって、りあねえ」
本当に怖かったのだから仕方がない。
「ロロはまだ小さいからね。餌のお肉も重かったのだろう?」
「しょうなのら」
「ええー、ロロは怖がりだものね」
「りあねえ、らってこわこわなのら!」
「ほら、ふふふ」
その後、結局リア姉もやると言ってフリード爺に教わりながらお肉をあげていた。
海面の上に伸ばした手がプルプルして、お顔が引き攣っていたのを俺は見逃さなかった。
「りあねえ、おててが、ぷるぷるしてたのら」
「だって、すぐ近くに来るんですもの!」
な、怖いだろう? 人の事を笑えないぞ。屁っ放り腰だったもの。伸ばした手はプルプルと震えて、腰も引けていた。リーゼさんと大違いだ。
「リーゼは慣れているんだ」
まただ。この領地では、子供の頃から一体何をしているのだ。危険がいっぱいの領地で遊びまで危険なのか? とってもチャレンジャーだ。
「アハハハ! ロロは本当に怖がりだな!」
「ふりーろじい、れもれきたのら!」
「おう! そうだなッ!」
確かに怖がりなのだけど、あんまり怖がりだと言われたらちょっぴり反抗したくなってしまう。
それから港に戻ってきた。船から降りても、まだ地面が揺れているみたいに思える。
俺は後半、ずっとラン爺に抱っこされていた。ガッシリと抱っこしてくれるムキムキの腕は、この上なく安心感がある。しかもお尻が安定する。いいね、ラン爺の抱っこは。
なのに地面に下りても、フラフラ~と身体が動いてしまう。
「ロロ、大丈夫か?」
「にこにい、ゆれてるのら」
「初めて船に乗った者はよくそうなる」
「らんじい、しょう?」
「ああ。さあ、邸に帰って昼食だ。ロロのお昼寝がなかったら、浜で焼いて食べるんだけどな。ロロは食べたら直ぐに眠くなるだろう?」
そう、俺は直ぐに眠くなる。もうお昼なのか。あっという間だ。こっちに来てから時間の進みが早く感じる。色んな事をするからだろうけど。俺の胸もずっとポカポカでドキドキだ。
帰りはラン爺のお馬さんに乗せてもらった。ピカが並走して付いてくる。
「ロロ、馬は怖くないか?」
「こわくないのら! れも、たかいのら!」
「アハハハ、高いか。それにしても、ピカは綺麗だな」
「ぴか?」
「ああ。しなやかに走るあの筋肉だ。毛並みといい、本当に綺麗だ」
「おともらちなのら」
「そうか、友達なのか」
「しょうなのら」
ふふふ、ピカさん褒められちゃったよ。綺麗だって。
確かにピカは綺麗だ。プラチナブロンドの体毛が、揺れる度にピカピカ光っている。
それにピカは船の上でも全然平気だった。普通に歩くしじっと伏せている。お昼寝だってできちゃうよ。て、感じだった。
馬と一緒に走っていても、全然遅れたりしない。まだあれはピカの本気の走りじゃないのだろう。
だって、チラチラと俺を見たりしているもの。ラン爺の馬が走る速さに、合わせてくれているのだ。
「キュルン」
「あ、ちろ。おきたのら」
俺のポシェットからお顔だけ出している。
「チロはいつもそこに入っているのか?」
「しょうなのら。いちゅもここれ、ねているのら」
「アハハハ、チロはまだ子供なのか」
「ちょびっとおおきくなったけろ、まらちいしゃいのら」
ラン爺が後ろから、俺の身体ごと抱える様に手綱を持っている。パッカパッカと馬を走らせながら、俺を支えてくれる。
俺の背中に当たるラン爺の筋肉が、弾力があって温かい。しかもそれが背中に当たっているから、安心感もある。その筋肉とガッシリとした腕で、俺を支えてくれている。
俺達の前には、ニコ兄がフリード爺の馬に乗せてもらっていた。
俺は初めて知ったのだけど、リア姉とレオ兄も馬に乗れたのだ。全然知らなかった。ルルンデでは、馬に乗る事なんてないから。
前にお墓参りに行った時も、馬車だったから馬に乗る事はなかった。でも、今日は二人とも上手に馬に乗っている。
フリード爺とラン爺が乗る馬よりは小さいのだけど、同じ様に額に角がある馬の魔物にだ。もちろん、リーゼさんもだ。
リア姉とリーゼさんが並んで走っているのを後ろから見ると、なんだかかっちょいい。
華奢な女の子が、大きな馬に乗って颯爽と駆ける。二人共ポニーテールに結んでいる髪が弾んでいる。
二人は直ぐに仲良くなったみたいだし、雰囲気もどことなく良く似ている。
「リアもレオも上手に乗っている」
「うん」
「ロロ達の父上も上手だったよ」
「しょう?」
「ああ、それにとても強かったぞ。イシュトと一緒に、兄上に師事していた兄弟弟子だ」
「へえー」
ラン爺がどんなお顔をしているのか、後ろだから見えないのだけど。でもきっと今は、少し寂しそうなお顔をしているのだろうなと思いながら聞いていた。
お読みいただき有難うございます!
ゆっくり余裕をもって投稿できるのは久しぶりです。投稿前に読み返して、誤字がないか確認して、細かい手直しをしたり。
それができるのは、とっても有難い事なのだと思います。
皆様から頂いた感想にお返事するのも、めっちゃ嬉しくて。
私は皆様に支えて頂いているのだと、実感します。
浜でバーベキューもしたかったのですが、最後の回収をしたかったのでさっさと帰ります。ロロが寝てしまうとダメなので。^^;
いつも感想を有難うございます!
まだまだ頑張りますよ〜。宜しくお願いします!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
ロロは私の作品の中で最長になってしまいました。
さっさと完結させたくなる癖を抑えつつ、もう376話です。ここまで書籍化できるのかなぁ?
3巻出したい!書籍も宜しくお願いします!




