367ーお口いっぱい
あのヒュージスライムだっけ? あれは本当に大きかった。とてもスライムには見えない。でもあの時が切っ掛けで、リア姉は火属性魔法が使える様になった。
と、俺はエビフライを食べよう。あーんと大きなお口を開けて、タルタルソースをたっぷりとつけて頬張る。当然、ほっぺにはタルタルソースがついてしまう。
「だからいつも言うけど頬張り過ぎだ」
「むぐぐ」
「ロロ、お口の中が無くなってから喋るんだよ」
「ふぐ」
お口の中がいっぱいで喋れない。でも沢山頬張る方が美味しさも倍増だ。
サクッとした衣に中のエビはほんのり甘くてジューシー。タルタルソースも程良い酸味があって、エビフライにベストマッチだ。
ああ、なんだか懐かしいな。前世の母親が作ってくれたエビフライを思い出す。
「ふゅ~、うまうまなのら!」
「ふふふ、ロロったら」
「ほら、ロロ。ほっぺ拭いておこう」
「うん」
いつもの様にニコ兄が俺のほっぺを拭いてくれる。
「テオ、早くても明日の夕方以降だろう?」
「ラン爺、多分そうだと思いますよ。お祖父様だけじゃなくて、お祖母様も一緒でしょうから」
「あのご夫婦は相変わらずだな」
「お元気ですよ。何より、リア達の事をとても心配されてました」
今度はクリームシチューだ。お野菜がゴロゴロ入っている。ここのミルクはとっても美味しい。コクが違うというのだろうか。なのにまろやかでクリーミーだ。
もしかして隠し味に、チーズがほんの少し入っているのかな?
「ロロ、美味しい?」
「うん、れおにい。とっても、うまうまら」
「ふふふ、食べる事に夢中ですものね」
「ロロはまだ小さいから、こんな話を聞いても分からないだろう」
「イシュト様、それはないですよ。ロロはとってもお利口でっす。全部理解しているでしょう」
「クリスティー先生、そうなのか?」
「はい、そうでっす。ね、ロロ」
「ん?」
俺のお口の中が今度は、クリームシチューで一杯で喋れなかった。モグモグとお口を動かしながら、クリスティー先生を見る。一応、頷いておこう。
「あんなに可愛いのに」
可愛いと理解している事と関係ないぞ。エンドレスでお口にシチューを入れてしまう。
「ロロ、もっとゆっくり食べなよ」
「ふぐ」
ほら、また喋れない。一生懸命モグモグしよう。
「ふふふ、ロロったら。お口の周りに付いているわ」
「リア姉、拭いてもすぐに付くんだよ」
そう言いながらも拭いてくれるニコ兄。いつも有難う。でも、俺は食べるのだ。
このパンもフカフカでほんのり温かい。いつも食べているパンより柔らかいぞ。どうしてだ? 作り方を教わりたいな。帰ったらマリーと作りたい。
手で割ると表面はパリッとしているのに、中はフカフカのパンだ。ルルンデにいる時は、普段はパン屋さんで買っている。だってパンって凄く手間が掛かる。
これはきっとお邸のシェフが毎日焼いているのだろう。
「めっちゃ美味いな」
「うん、いっぱいたべるのら」
「おう」
俺達ちびっ子チームは食べる事に夢中だ。リア姉達は大人と色々話しながらゆっくり食べていた。家にいる時とは違う。テーブルマナーというやつか。
こうして見ていると、あのお転婆なリア姉もちゃんと貴族なのだと思う。所作が綺麗だ。
俺みたいにエビフライに齧り付いたりしない。ちゃんとナイフを使っているし、お口いっぱいに頬張ったりもしない。家でもしないけど。
家だとどうしてもバタバタしてしまうし、こんなに豪華な食事でもない。カトラリーだって、こんなに何本も並んでいない。こんなところで、貴族だと思わせられる。
俺はどうなのだろう? お邸にいたのは2歳までだ。その頃の事なんて覚えていない。
隣りにいるニコ兄を見てみた。ニコ兄も器用にカトラリーを使って食べている。え、俺だけか? 俺って勉強しないといけないか? ちょっと不安になって、シチューを食べていた手を止めた。
「ロロ、どうしたんだ?」
「れおにい」
「もうお腹いっぱいなのか?」
「ちがうのら。ボクらけしらない」
「ロロ? 何をかな?」
「らってボクは、れおにいみたいに、たべられないのら」
「え?」
意味が分からないといった顔をしているレオ兄。お向かいに座っていたクリスティー先生が微笑んでいる。クリスティー先生は理解したみたいだ。
「ロロはまだちびっ子ですからね。これから勉強すれば良いのでっす」
「もしかして、テーブルマナーの事を言っているのかしら?」
「はい、ネリア様。ロロは気が付いたみたいでっす」
「まあ、お利口だわ。ロロ、これからお勉強すれば良いのよ。きっとお祖母様が教えてくださるわ」
「しょう?」
「ええ。それに気にするほどじゃないわ。ロロは上手に食べているわよ」
「らって、いっぱいちゅくのら」
「あら、ふふふ」
「だからロロ。口にいっぱい入れるからだぞ」
「らってにこにい、しょのほうが、うまうまなのら」
そこが駄目なのだろう。お口いっぱいに頬張るのがね。分かっているのだけど、これは止められない。
俺達が美味しく食べていた時だ。玄関の方が急に騒がしくなった。バタバタと人が動く気配がする。その内足音が段々近付いてきて、俺達のいる食堂のドアがバンッと大きな音をたてて開いた。
お読みいただき有難うございます!
さてさて、誰がやってきたのでしょう?
明日をお楽しみにして頂けると^^;
そろそろコミカライズのお知らせができれば良いのですが、私もまだ何も知らされてないのです。次の打ち合わせで確認してみよう。
早く皆様にお知らせしたいですし。
ロロとリリのコミカライズの担当さんは一緒なのですよ。ノベルの担当さんもお若いのですが、この二人はいつも遅くまでお仕事していそうで深夜にメールがきたりします。
編集さんって、大変なお仕事なのですね。
我慢強く対応して下さったおかげで、リリのコミカライズも動き出しました。ありがたい事です。
今日もめっちゃ寒いです。乾燥してますし、皆様も体調にはお気をつけ下さい。
いつも感想を有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
ロロの売上が好調だと担当さんから報告がありました。嬉しい!ご購入して下さった皆様、有難うございます!
リリみたいに、長く続けられると嬉しいなぁ。




