366ー大きかった
ニコ兄だってまだ子供だ。俺と二人でちびっ子チームだと思っていた。二人とも守られる側なのだと。
なのに、ニコ兄は俺を守りたいと言った。いつもニコ兄はマメに俺の世話を焼いてくれる。それだけでも充分なのに、俺を守りたいって。
「ふ、ふ、ふえ……」
そんな事言われたら、泣いてしまうだろう!?
「ロロ、どうしました?」
「なんだよ、どうしたんだ!?」
「らって、にこにい」
パフンとニコ兄に抱きついた。
俺はなんて幸せ者なんだ。みんなにこんなに思ってもらって、大事にしてもらって、まだ子供のニコ兄でさえ俺を守りたいなんて言ってくれる。
前世の俺は趣味の友達はいたけど、肉親とは縁遠かった。こんな気持ちをストレートに貰った事がなかった。それはきっと、俺の所為もあったのだと思う。
俺が変に遠慮して、距離を取ってしまった事も原因だろうと。そんな俺が今世ではどうだ?
両親はいない、覚えてもいない。でも姉兄が、周りのみんながとっても温かい。俺は何も返せないというのに。
「おやおや、ロロは泣き虫ですね。ふふふ」
「えー、クリスティー先生。ロロはどうしたんだよ!?」
「嬉しいのですよ。ニコがロロを守りたいなんて言うからでっす」
「なんだよ、当たり前じゃないか。俺はロロの兄ちゃんなんだぞ」
「ふえ……らって、にこにい」
「おう、どうした?」
「にこにいは、ちびっこなかまなのら」
「なんだよ! 俺、ちびっ子じゃねーっての!」
「ふふふふ、良いお兄さんでっす。ね、ロロ」
「うん、うれしいのら。にこにい、ありがと」
「おう! ロロは俺の大事な弟だからな!」
ニコ兄が俺の頭をワッシワッシと撫でてくれる。まるで、俺がピカを撫でるみたいにだ。
なんだ、クリスティー先生は全部お見通しだ。俺の事も色々分かっているのだろうに、黙っていてくれる。多分ディさんもそうだろう。
話せる機会があったら、ちゃんと話してみようとまた思った。
その日の夕ご飯はクリームシチューだった。それになんとエビフライ。エビフライなんて、この世界に生まれて初めて食べる。
「ひょー!」
「スゲー! こんな大きなエビ初めて見たぞ!」
ニコ兄も驚いている。貴族だった頃を、覚えているニコ兄でも初めてだと言う。
「僕も初めてだよ」
「そうね、エビなんて高価ですもの」
レオ兄とリア姉もそうらしい。この領地には港があるからかな? 海にも行ってみたいなぁ。
ちょっと待て。このエビフライに添えられている白いもの。これってタルタルソースじゃないか?
この世界にタルタルソースなんてあるのか? ここで言ってはいけない。またどうして知っているのかと言われちゃうから。俺は学習したのだ。
「海が近いから、海産物は手に入りやすいのよ」
「明日は海に行ってみるか?」
「らんじい! いきたいのら!」
「でも明日辺り、多分お祖父様とお祖母様が到着されると思うぞ」
「テオ、早くないか?」
「お祖父様達なら、きっと馬を飛ばしてくるでしょう」
「あー、あの人達ならやりかねないな」
と、イシュトさんが言った。一体どんな人達なのだ? お祖父様とお祖母様。貴族なのだから馬車で来ると思っていたけど馬を飛ばしてくるって。
「リア達に早く会いたいんだよ」
「テオ様、そうなのですか?」
「ああ、まだ見つからないかと僕も責っつかれていたからな」
「それだけ心配されているのよ」
「君達の事を聞いて私達も驚いたからな」
「本当ですわね」
イシュトさん達は、どこからどうやって俺達の事を聞いたのだろう? お隣の領地だからかな?
「君達のご両親が治めておられたレーヴェント領とは取引があるんだ。塩が有名だろう?」
あの三色のとっても美味しいお塩の事だ。領地の特産品でもある。その塩が採れるピンク色した湖、フューシャン湖。そこに増殖したスライムを、リア姉とレオ兄が退治した。
「一時期塩が入らなくなったことがあったんだ。それで調査したら、領主が変わっているというではないか。しかも君達の行方が分からなかった」
「本当に、あの時は驚きましたわね」
それから直ぐにお祖父様達に確認したのだそうだ。
辺境伯家とお祖父様達の家とは代々交流がある。同じように魔物が出る領地で隣国とはいえお隣さんだから、昔から仲良くしていたらしい。父は辺境伯家にお世話になって剣の修行をしている時に、母と出会って恋に落ちた。それからは父の領地も含めて交流があったという。
俺達がお墓参りに行く少し前から、塩の流通が止まっていたと聞いた。なら俺達が家を追い出されて1年経っている。
「1年も私達は知らなかった。その間、君達はどうしているのかと心配したんだ。既にテオが探しに出ていると聞いたから、手は出さなかったのだ。そんな時に、何故か突然塩の流通が正常に戻った」
「リア姉とレオ兄が、スライムを退治したからだぞ」
「まあ、そうなの?」
「でっかいしゅらいむ」
「え? ロロ、大きかったのか?」
「しょうなのら。らんじい、とってもとってもおおきかったのら」
そう言って俺は両手を広げた。これよりもっと大きかったと。
お読みいただき有難うございます!
毎日寒いですね〜、12月に入って今年初の風邪をひいてしまいました!何故12月!?
ずっと書籍化作業が続いていたので、落ち着いた今で良かったのですが。^^;
皆様も、お気をつけて下さい。
投稿は変わらずいつもの時間にしますので、宜しくお願いします〜!
今日のお話はロロがまたちょっと泣いちゃいました。さて、明日は少しだけ動きがあります。
少しだけです。^^;
いつも感想を有難うございます!
本当に皆様の声に励まされて、毎日投稿を続けています。心からの感謝を!
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宜しくお願いします。
レビューも書いて頂けるとめちゃくちゃ嬉しいでっす!
あまり出さないようにしているのですが、ロロを守るピカのシーンを。これって、本当に胸を締め付けられませんか?だからあまり、使わないようにしていたのです。




