365ー俺が守りたい
「なるほど、女神の加護ですか」
「え……」
「だからピカちゃんなのですね。ふむふむ」
クリスティー先生が自分一人で納得している。女神がどうとかは、秘密なのだぞ。知られてはいけないのだ。レオ兄とディさんに秘密だと言われている。
「しぇんしぇい、ひみちゅなのら」
「おや、そうなのですか?」
「しょう、ひみちゅ」
短い人差し指を立ててプニッと唇に当てた。
「ロロ、何だ?」
「れおにいが、ひみちゅらっていってたのら」
「そうなのか?」
「しょうなのら」
クリスティー先生がそれを聞いて、今度はリア姉とテオさんの鍛練を見学しているレオ兄を見た。ピカーンとクリスティー先生の眼がゴールドに光ったぞ。これはあれだ。精霊眼で見ている。
「ほぅ~。レオは鑑定眼ですか」
「しょうなのら。れおにいはしゅごいのら」
「おう、レオ兄はスゲーよな」
「しょうしょう」
ニコ兄と俺が、自慢気に胸を張る。自慢の兄だからね。俺なんかより、レオ兄は凄いのだ。
なにしろ鑑定眼にあの魔力操作。勉強だってできる。槍だけじゃなくて弓も使える。
レオ兄は、俺達四兄弟の中で一番凄い。なんでもできる頼りになる兄なのだ。
「なるほどでっす。ディが気に入るのも分かりますね」
そんな事を言いながら、クリスティー先生は持っていたピコピコハンマーで地面を叩いた。とっても嬉しそうにニコニコしている。
――キュポン!
「ふふふふ」
――キュポポン!
――キュポポンポン!
「とっても可愛らしいでっす」
「アハハハ! クリスティー先生ったら!」
「しぇんしぇい、たのしいのら」
「はい、楽しいですね。これはとても良いですね!」
クリスティー先生が、精霊眼で見た事を教えてくれた。
オークをやっつけた時のように、魔法を流すと衝撃波が飛ぶ。それはニコ兄も一緒だ。ただニコ兄のピコピコハンマーには、ぶっ刺す小さな槍の刃の様な物が付いている。
俺のについている翼はただのお飾りだけど、ニコ兄のは違う。ちゃんと武器になっているのだぞ。
クリスティー先生が解説してくれた。ニコ兄に分かり易く丁寧に。
「魔力を流すと、この部分がとっても強力になりまっす。それこそ、ブラックウルフなんて一撃でしょう」
「え、そんなになのか?」
「ええ、そんなにでっす。私も一つ欲しいくらいでっす」
クリスティー先生も、ディさんが持っていた様な杖を持っているのだろう? 杖なんか使わなくても、オークキングを瞬殺していたのだ。
ピコピコハンマーなんて全然必要ないのに、嬉しい事を言ってくれる。
ピコピコハンマーは、俺の代表作と言っても過言ではない。
「にこにい、らから、ちゅよいのら」
「お、おう。まさかそんなに強いとは思わなかったんだよ」
えー、だから俺がぶっ刺せるとか、強いとか何度も言っていたのに。信じてなかったのか? 思わずジト眼でニコ兄を見た。
「ロロ、信じてるって」
「らって、にこにい」
「信じてるけど、まさかそこまで強いと思わないだろう?」
魔力を流さなくても、ブラックウルフを足止め出来ていたのだぞ。そこに魔力を流すのだから、そんなの強くならない訳がない。
だが、重大な問題に俺は気が付いている。俺にはどうしようもできない事なのだ。
「れもなぁ」
俺は短い腕を組んで考えるポーズだ。ニコ兄に重大な問題があるのだよ。いくらピコピコハンマーが強くても、どうしようもない問題が。
「ロロ、どうしました?」
「にこにいは、ポカポカぐるぐるしないのら」
「ポカポカぐるぐるですか?」
「しょう、れおにいにおしょわったのら。かららのなかの、あたたかいのをぐるぐるしゅるって」
「ああ、魔力操作ですね」
「しょうしょう」
「おやおや、それはいけませんね」
「しょうなのら」
ほら、クリスティー先生も言っているだろう? レオ兄やディさんも言っていたように魔力操作は大切だよ。クリスティー先生と、二人並んで腕を組みニコ兄を見る。どうだ?
「ロロ、それは秘密だぞ!」
「しょんなことないのら」
「ええー!」
「ニコ」
今度はニコ兄が見られている。クリスティー先生は、ディさんよりシビアな気がする。ディさんならきっと、仕方ないな~なんて笑って済ませているだろうけど、クリスティー先生はそうはいかない。
「ニコは土属性と水属性ですか」
「おう、そうなんだ。毎日畑でめっちゃ役に立ってるんだ」
「普段から使っていてこれですか?」
「え……」
おっと、やっぱ言う事が厳しい。いつも使っているのだから、もっと使えてもよいのにという事だ。
俺もそう思うぞ。だから、ポカポカぐるぐるをしないからだ。レオ兄が教えてくれたし、俺も何度も言っていたのに。
「ロロに負けちゃっても良いのですか? お兄さんなのに」
「え……それは嫌だな」
「そうでしょう?」
「おう、もしもの時は俺が守りたいからな」
「なら、魔力操作を毎日コツコツとする事でっす。ニコはまだ子供ですから、身体も小さいし力もありません。体術や剣では大人に勝てないでしょう。ですが、魔法なら可能性がありまっす」
「そっか、そうだな」
俺、ニコ兄に守りたいと言われちゃった。当たり前のようにサラッと言った、ニコ兄のその言葉に驚いて固まってしまった。
お読みいただき有難うございます!
ニコってちびっ子なのにちゃんとお兄ちゃんで、とっても男気のある子なのですね。
末っ子のロロを守るのだと、思っているのです。ニコだってまだ守られていて良い歳なのに。
ロロが攫われた時もそうですが、私は何気にニコは偉いなぁと思うのです。
こんなお兄ちゃん欲しい^^;
いつも感想を有難うございます!
オークキングとフォーちゃん、プチゴーレムを戦わせるのを忘れてました!そもそも、ぶどう狩りに付いて行ってないし。(>_<)
書籍でなんとか!そこまで書籍化できるか決まってないのですけど(・_・;
頑張りまっす!
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宜しくお願いします。
元気なニコを!




