359ー魔法バージョン
「ニコ坊ちゃま! ロロ坊ちゃま!」
「マリー、危ないから中に入ってろ!」
マリーが馬車の外に出ようとしていたところを、ニコ兄が止めた。そうだよ、馬車の中にいて欲しい。俺達が守るのだ!
よし、いくぞ! ピコピコハンマー! 俺は魔力を込め両手で握りしめているピコピコハンマーを、思い切り振り下ろした。
「たぁーッ!」
思いっきり腕を振ったものだから身体が仰け反るみたいに揺らいで、後ろにいたニコ兄に支えられしまった。ちょっと力を入れすぎちゃったかな?
俺が振り下ろしたピコピコハンマーは、地面を叩いてもいないのにキュポン! と音がして、衝撃波のようなものがオークに向かって飛んだ。それが命中して、オークがドドンと倒れた。
どうして叩いていないのに音が鳴るのかな? あの音はどんな時でも標準装備なのか?
「ええ!? ロロ! なんだよそれ!?」
「ぴこぴこはんまー、まほうばーじょんなのら!」
ふふふん、とピコピコハンマーを掲げる俺。どう? 強いだろう?
「わふぅ」
え? あれ? ピカさんちょっぴり呆れちゃってる? だってあの音は、俺の所為ではないのだ。
「ロロ、スゲーじゃん! 俺もできるのか!?」
「れきるのら。らからまりょくをこめるのら!」
「ああー……」
え、なんでそこでテンションが下がるのだ? せっかく盛り上がっていたのに。そんなに自信がないのか?
よし、鼓舞してあげようではないか。俺は体をひねって後ろのニコ兄をじっと見る。
「にこにいなら、じぇったいに、れきるのら! やるのら!」
「よしッ! やるぞッ!」
ニコ兄がムムムッと難しい顔をして集中し、魔力をピコピコハンマーに流そうとしている。だけど上手くいかない。ああ、ちょっぴり下手っぴなのだ。これは、魔力操作の練習をしていないな。
「にこにい、ちゅちを、うごかしゅかんじなのら!」
「おう!」
その方がニコ兄には分かり易かったらしい。見る間にニコ兄から魔力が、ピコピコハンマーに溜まっていく。よし、良いぞ。
「いくぞッ! とおーッ!」
ニコ兄がピコピコハンマーを振り下ろすと、ボボーン! と音がして衝撃波が飛んだ。やっぱ音が鳴るけど、走ってきていたオークに命中だ。
「やったのら!」
「スゲーな! できたぞ!」
ニコ兄もやればできる。
ピカが風の刃を飛ばしてオークをやっつける。その合いの手のように俺とニコ兄がピコピコハンマーで、キュポポーン! ボボボーン! と、衝撃波を飛ばす。少しは戦力になっている。
そうこうしている内に、クリスティー先生がオークキングを倒してしまった。リーダーを失くしたオーク達は、慌てて森に向かって逃げ出した。
「にげるのら!」
「逃がして堪るか! ピカ!」
「わふッ」
え、そう? ピカさんが深追いしたら駄目だと言った。高いところから見るとよく分かる。特等席だ。
森の近くにはクリスティー先生がいるし。イシュトさんや領主隊、リア姉やレオ兄だっている。
フリード爺やラン爺を、なんとか躱してオークは逃げようといているがそうはいかない。フリード爺とラン爺が片っ端から斬っている。
「領主隊! できるだけ狩っておくぞぉーッ!」
「おおーッ!!」
フリード爺が鼓舞している。入り込んでいたオークを全滅させる勢いだ。
俺はこんなに大勢で討伐するのを初めて見た。
お墓参りに行った時にも魔獣は出てきたし、リア姉とレオ兄がスライム退治をしているのを見た。
でも、こんなに大掛かりじゃなかった。道中に出てきた魔獣は、ほとんどピカが瞬殺していたし。
まさか防御壁を破って魔物が入ってくるなんて、ルルンデの街では有り得ない事だ。
びっくりした。それが正直なとこだ。怖がる暇もなかった。マリー達がこっちの馬車に走って来た事もある。守らなきゃと思ったのだ。
怖いよりも、その気持ちの方が強かった。いつも守ってもらってるちびっ子なのに。
きっと俺が冷静でいられるのは、ピカとチロがいるからだ。どんな事があっても、ピカは強いと信じているから怖くなかった。そう思って、ピカの首筋に抱きついた。
「ぴか、ありがと」
「わふん」
「ちろもね」
「キュルン」
当然だよ、僕がみんなを守るからね。なんて、とってもかっちょいい事を言ってくれる。
あの泣き虫女神は冴えないけど、ピカとチロを寄越してくれた事はとっても感謝しよう。ピカがいる事が、大きな安心感に繋がるのだ。
ワシャワシャとピカの首筋を撫でる。サラッサラの体毛で、抱き着くとモフモフだ。
チロが俺の肩に乗ってきた。チロチロとほっぺを舐めてくる。
「ちろ、くしゅぐったいのら」
チロも有難うね。少し大きくなって力も強くなったみたいだ。成長したのだと言っていたし。
「ロロ、終わりだな」
「うん、にこにい」
あ、ネリアさんは大丈夫なのかな? 一人で馬車にいるのではないかな?
俺達の前に停まっている馬車にネリアさんが乗っている。ここで俺達がオークを食い止めていたから、ネリアさんが乗る馬車には影響はなかったはずだけど。
「にこにい、おりるのら」
「そうだな、でもピカから離れたら駄目だぞ」
「けろ、ねりあしゃんが、しんぱいなのら」
そんな話をニコ兄としていると、リア姉とレオ兄が走ってくるのが見えた。俺はピコピコハンマーを持った手を振る。
お読みいただき有難うございます!
ちびっ子だけど、ニコとロロも守りたくて役に立ちたかったのです。
そんな気持ちで、ピコピコハンマー魔法バージョンです。何故か音は鳴るのですけど^^;
最近、常連になって下さっている方だけではなく、チラホラと新しい方も感想を下さるみたいで嬉しいです。
ロロは皆様の感想も参考に、進めたり加筆したりする時もあるので、気楽に書いて頂けると!
ただし、激弱メンタルなのでお手柔らかにお願いします。^^;
いつも感想を有難うございます!
年内に何かお知らせできるかも知れません。コミカライズ、早く見たいですよね〜!
いつも有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
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