358ー魔法付与
離れて見ているとよく分かる。
「しゅごいかじゅなのら!」
「ロロ、そうなのか!?」
ニコ兄も俺に並んで外を見る。フリード爺とラン爺が馬に乗ったまま、バッサバッサとオークに斬りつけている。フリード爺の後ろにラン爺がいた。
大きな剣を片手で振り回しながら突っ込んで行くフリード爺の後ろを、ラン爺がフォローしながら付いて行く。
フリード爺は、斬り込み隊長みたいだ。どんどん突き進んで行く。あんなに大きな剣をよく片手で使えるものだ。
ラン爺は大きな槍でフリード爺が打ち溢したオークをなぎ倒している。
「スゲーな!」
「ちゅよいのら!」
「わふ」
思わず馬車から、身を乗り出してしまいそうになった。
それ以上前に出たら駄目だよ。と、ピカが言う。分かってるって。外には出ないよ。
フリード爺とラン爺の向こうを見ると、リア姉やレオ兄がイシュトさんや領主隊に交じって戦っていた。
ああ、リア姉が一人突っ込んで行っている。やっぱりそうなるよね。華奢な身なのに、ロングソードを振るう。リア姉の動きに合わせて、スカートの裾が翻り長いポニーテールが踊る様に揺れている。
リア姉の剣が青い炎のように変化している。もう魔力を流しているんだ。
あれだけ苦手だと言っていたのに、いつの間にか完璧にマスターしている。そのリア姉が剣で斬りつけ、その後をレオ兄が追いながら槍で薙ぎ払う。領主隊に負けじと斬り込んで行く。
あれれ? よく見るとレオ兄の槍の刃が緑色をしていないか? まさかレオ兄も魔力を流しているのか? しかも槍の穂先が伸びている。レオ兄が槍を動かす度に、残影のように緑色の光が動く。
考えてみれば納得だ。魔法操作が苦手なリア姉でもできるのだ。俺達兄弟の中で、一番魔力操作が上手なレオ兄にできないはずがない。
「リア! 一人で突っ込むんじゃないッ!」
ほら、イシュトさんに注意されている。
そのイシュトさんも強かった。リア姉が2回斬りつけないと、オークを倒せないとする。でもイシュトさんは、1度でオークの首を飛ばしている。首チョンパなのだ。
イシュトさんの剣も、フリード爺とラン爺の剣も緑色に発光している。領主隊の人達もだ。この領地の人達は、魔法を付与するのが標準装備らしい。
その向こうでは、クリスティー先生が魔法でオークキングと戦っていた。しかも瞬殺だ。
クリスティー先生が手を動かしたと思ったら、それだけで大きなオークキングが倒れる。ドドーンと大きな音を立てて砂煙をあげて倒れている。何をしたのか全然分からない。
「うわ、しぇんしぇい!」
「超つえー!」
何十頭もいるオークをイシュトさん、リア姉、レオ兄、フリード爺、ラン爺が。3頭のオークキングをクリスティー先生が一人で相手している。既に1頭倒しているのだけど。
それなのに、クリスティー先生は動じない。正に一歩も動かないのだ。
クリスティー先生の身体の周りにフワリと風が巻き起こる。クリスティー先生のキラキラとした長いブロンドの髪が風に靡いている。まるでクリスティー先生自身が、風を纏っているように見える。
その風が大きな槍の形になって飛んで行くと、そのままオークキングの身体に風の槍が突き刺さる。オークキングは為す術もなく、ドーンと音を立てて倒れていく。
そのうち逃れてきたオークが、停まっている馬車に向かって走ってきた。
レオ兄やラン爺の眼を掻い潜り、でっぷりとした体を揺らしながら突進してきたのだ。
「ぴか!」
「わふん」
大丈夫、下がっていて。なんて、とってもかっちょいい事をいうピカさん。馬車の外に飛び降りピカが吠えた。
「わおーん!」
ピカが吠えると、幾つもの大きな風の刃が飛んだ。その刃で、走ってきたオークをぶった斬る。ピカさん、相変わらず強い。
でもこれはまだピカの本気じゃない。だってブラックウルフと、戦った時とは吠え方が違うもの。
それでもピカは、クリスティー先生と同じようにオークを瞬殺していく。
「やっぱピカは強いな!」
「にこにい、ぴこぴこはんまーなのら!」
「ロロ、駄目だぞ! 俺達は外に出たら邪魔になるぞ!」
「れもやっちゅけるのら! ぴか!」
俺が呼ぶと直ぐにピカは側に来てくれる。
馬車の中から俺はピカの背中に、ヨイショと飛び乗った。それでもオークは俺より大きい。
「ぴか、おーくのほうがおおきい」
「わふ」
「らからね、たかいところにいきたいのら」
「わふぅ」
ピカさんに、仕方ないなぁ……しっかり掴まっていて。と、言われた。
「ロロ、俺も行くぞ!」
ニコ兄が同じ様に馬車から飛び降りて、俺の後ろにストンと乗ってきた。よし、一緒にやっつけるのだ!
「ぴか、いいのら!」
「わふん」
ピカがシュタッと高くジャンプしてどこに行くのかと思ったら、俺達の乗っていた馬車の屋根に飛び乗った。び、び、びっくりなのだ。
うん、ここならとっても高いぞ。ちびっ子の俺でも全部見渡せる。
「ぴか、しゅごいのら!」
「すげー!」
「わふん」
危ないから、僕から下りたら駄目だよ。と、ピカが言った。そんな事を言いながら、ピカは直ぐに風の刃を飛ばしたりしている。まさか馬車の屋根に飛び乗るとは思わなかったけど、それでもピカってとっても頼りになる。
お読みいただき有難うございます!
やっぱリアを突進させないとと思って、何度も書き直したり修正したりしました。如何でしょう?^^;
ココちゃんも、馬車の屋根に乗って戦ったのです。だからロロも乗せたかったのです。
さて、これからニコとロロはどうするのか?ちびっ子コンビの活躍は明日です。
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宜しくお願いします。
ネトコンの二次選考通過作品が発表されました。
「稀代の大賢者は0歳児から暗躍する」が通過しました!有難うございます!
ロロは早くに書籍化が決まっていたのですが、ラウも書籍化されるかも!?




