356ー魔物出現
「ロロは可愛いわ!」
リア姉がずっと俺を見ている。お口を尖らせて一粒ずつプニッとするのが可愛いらしい。
「だってそのお口よぅ」
だってこうしないと、実がどっかにいっちゃうのだ。無心にぶどうをプニッと食べた。
食べたら俺はどこでも眠くなる。本当、もう少し場所を選んでくれたらいいのにと思うのだ。ゆらりゆらりと身体が揺れる。
「ああ、ロロ。お眠だね」
「れおにい」
「おいで、抱っこしよう」
「おや、眠いのですね。私が抱っこしまっす」
クリスティー先生がそう言って、俺を抱っこしてくれる。レオ兄より大きな身体。俺の身体を優しく抱っこしてくれる腕。それに草原の様な良い匂い。それに包まれて俺は眠った。
ドゴーンと凄い音がして、驚いて眼が覚めた。
そんなに眠っていないぞ。びっくりしてまだ眠い眼を開けて周りを見ると、俺はクリスティー先生に抱っこされて馬車に乗っていた。
「ロロ、起きてしまいましたか?」
「しぇんしぇい、しゅごいおとがしたのら」
「はい、大丈夫ですよ。領主隊が確認しに行くでしょう」
なんだろう? 地面が揺れる様な音がした。どこからかな? 馬車の窓から外を見ると、防御壁のある方から土煙が上がっていた。
「あの場所は確か……」
クリスティー先生が何かに気付いたみたいだ。
ピカも反応して身体を起こしている。
「わふん」
「え、ぴか」
ピカが魔物だと言った。その割に慌てている感じではない。なら大丈夫なのかな?
「しぇんしぇい、ぴかが」
「はい、ピカちゃんはもう分かっているのですか?」
「うん、まものらって」
「おやおや、やはりそうですか」
やはりと言った。なんだ、クリスティー先生も分かっていたのだ。だけど、魔物ってダンジョンにしかいないのではなかったっけ?
そう俺が思っている疑問と同じ事をリア姉が聞いた。
「クリスティー先生、魔物はダンジョンにしかいないのでしょう?」
「ええ、普通はそうですね。しかしこの領地では、時々上位種が率いて出てくる事があるのでっす」
なんだって!? なんて怖い事なのだ。だからあの防御壁なのか。ルルンデにある防御壁よりも、ずっと厚みも高さもあって頑丈そうだ。なにより色が違う。他の街にある防御壁よりも白っぽく見える。
「あの防御壁には、魔物が嫌がる物を混ぜてあるのでっす。ですので、弱い魔物なら近付きもしません」
でも、今その防御壁のある方から土煙が上がっている。
「また上位種が率いて出てきたのでしょう。大丈夫ですよ。領主隊もいます。その内フリード様達が駆けつけてくるでしょう」
「ふりーろじいが?」
「はい、フリード様とランベルト様はフットワークが軽いですからね」
と、バシコーンとウインクをした。俺だけじゃなく、リア姉達も焦っていたのだけど、クリスティー先生は余裕だ。それだけこの領地では、起こり得る事なのだろう。
リア姉はもう剣に手を添えていた。顔つきもいつもとは違っている。こんな時はとってもイケイケなリア姉だ。
すると馬車が突然止まった。
「クリスティー先生! オークキングです!」
馬車の外からそう叫んでいる声が聞こえた。オークキングだって!? えっとそれは何かな? オークは知っているけど、オークの王様って事なのか?
「ロロ、オークの上位種だよ。身体が大きいし力も強い。知能も普通のオークよりずっと高いんだ」
「ひょぉーッ!」
そんなのが出てきているのか? ああ、クリスティー先生が言っていた。その上位種が率いているという事か。
「おや、やはり上位種ですか。皆は馬車に乗っていてください」
「クリスティー先生! 私も出ます!」
「リア、危険ですよ」
「大丈夫です! 私達だってCランクです!」
「そうですね、でも絶対に無理はしないでください」
「はい! レオ!」
「ああ、姉上」
ええー、リア姉とレオ兄も出るのか?
「りあねえ! れおにい!」
「ロロ、大丈夫よ!」
「ニコ、ロロ、外に出たら駄目だよ」
クリスティー先生と、リア姉、レオ兄が馬車から下りて走って行く。それを俺は馬車から見ていた。
「領主隊! 行くぞーッ!」
辺境伯のイシュトさんも馬で走って行く。その後を領主隊の人達が続く。イシュトさんはリア姉が持っているような、ロングソードをもう手に持っている。
よし、俺も準備だけはしておこう。
「ぴか、ピコピコハンマーらして」
「おう、そうだな。ピカ、俺のもだ」
「わふ」
でも、危ない事はしたら駄目だよ。と、ピカさんに言われた。しないよ、準備だけだ。あれだけみんなが行ったから、まさかここまでオークは来ないだろうし。
「キュルン」
「ちろ、れきる?」
「キュル」
チロが俺の頭に乗ってきた。馬車のドアを開けて身体を乗り出す。外には出ないよ。その俺の頭の上で、チロが鳴いた。
「キュルン!」
チロは、みんなの防御力を上昇させてくれる。でもお墓参りに行った時より、強力になってないか? だって、頭の上にいるチロが光ったのが俺でも分かったのだ。
「キュル」
「しょうなの?」
チロも成長したのだと言っている。そうだね、体も少し大きくなったし。
俺はそのまま、皆が走って行った方を見ていた。丁度、防御壁に沿って走っていたから土煙が収まってくると見えてきた。
お読みいただき有難うございます!
やっぱ魔物は出てきます。^^;
ココちゃんの時もそうでしたね〜
ロロ達はどう戦うのでしょう。
いつも感想を有難うございます!
そろそろ活動報告を書こうかなと思います。皆様が知りたい事等あれば教えて下さい。
まだご報告できない事とかもあって…言いたくてウズウズしているのですが^^;
いつも有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
ロロは本当に加筆や改稿を頑張りました。書き下ろしもwebでは書いていない事をと考えました。
イラストも好みはあると思いますが、担当編集さんと相談して、攻めていきましょう!とリリとは全く違った作風の方を選びました。
私はとってもお気に入りです。
こだわって出来上がった書影、とっても可愛いと思いませんか?^^;
担当さんが唸りながら考えて下さった帯にもご注目を!




