354ーマリーは大雑把だから
とっても綺麗に盛り付けてあるサンドイッチのお弁当。これはマリーが作ったのではないな。
「あらあら、ロロ坊ちゃま。お邸のシェフですよ」
「やっぱり」
「ロロ、それは言ったら駄目だぞ」
「あ、いっちゃった」
あ、いけないと、小さな両手でお口を塞ぐ。塞いでも、もう遅いのだけど。そんな俺を見て、ネリアさんがふふふと笑う。
「構いませんよ。私が作ったら大きくなりますものね」
「あら、大きくなるの?」
「けろ、まりーのも、うまうまなのら」
マリーが作るサンドイッチはこれ位と、手で大きさを表す。俺の小さな手で持つと、本当に大きいのだ。
「まあ、そんなになの?」
「しょうなのら」
「あらあら、恥ずかしいです」
でも、エルザとユーリアも笑いながら頷いている。本当に大きいからね。あれを半分に切れば良いのだ。
「ロロ、食べよう」
「うん」
これはアボカドとエビのサンドイッチだ。エビなんてルルンデでは、滅多に手に入らない。
だってルルンデは海が遠いから、輸送している間に傷んでしまう。
そこで高級品であるマジックバッグを持っている大店の商店が、態々貴族向けに仕入れて海産品を販売している。
マジックバッグがあって、腐らないといっても海まで距離がある。だからお高くて、食べられるのは限られた貴族だけだ。
そのサンドイッチに、ハムッと齧り付いて俺は驚いた。
「こ、これ、まよねーじゅ!」
「あら、ロロは知っているの?」
あ、いかん。驚いてつい口に出してしまった。この世界では珍しいのかな? 兄弟で俺だけ知っているって不自然だ。
「ロロ、なんで知ってんだ?」
「えっちょぉ……」
「私が教えたのですよ」
そう言いながらクリスティー先生が歩いてきた。イシュトさんは、どこに行っていたか知っているみたいで声を掛けている。
「クリスティー先生、もう良いのか?」
「はい、今年も良いワインができそうでっす」
「シゲ爺、できたらまた邸に持ってきてくれ」
「おう、分かってるぞ」
どこに行っていたのかと思ったら、クリスティー先生とイシュトさんはワインが目当てだったらしい。
「しぇんしぇい、ぶろうをとったのら」
「沢山採ったぞ」
「ニコもですか?」
「おう! めっちゃ甘かった!」
「おやおや、もう食べたのですね」
ふぅ、マヨネーズの件はクリスティー先生が助けてくれた。でもこれってクリスティー先生は、分かっているって事に決定だ。
俺の前世に気付いているのではないかな? でないとこんな事は言わないだろう。
そう思ってクリスティー先生を見ると、バシコーンとウインクをされた。
これはディさんよりも破壊力がある。だって、とっても綺麗にウインクをするから。まるでどこかのアイドルだ。
ディさんがウインクをする時は照れ隠しの時もある。少し照れながらウインクするのだ。
でもクリスティー先生に照れは全く感じられなく、思い切りバシコーンされた。思わず眩しく感じてしまうくらいだ。
ウインクの意味は、黙っていてくれるという事だと思う。でもちゃんと、クリスティー先生とお話しできたら良いな。
このマヨネーズもクリスティー先生が話してくれた、辺境伯家のご先祖様の令嬢が開発したものなのだそうだ。この領地から広がった。
だからこの国では、一応知られている。だけどこれも日持ちがしないので、庶民の間ではあまり使われないらしい。
卵をプリンにするよりは食べるのと同じで、マヨネーズにするよりは食べるのだ。
「懐かしいわね」
「そうだね、姉上」
「お邸にいた時は、時々食べたよな」
リア姉とレオ兄、ニコ兄は食べた事があるらしい。お邸に住んでいた頃、まだ両親が元気だった頃だ。やっぱ貴族だったのだなと、変なところで思った。
この世界で初めて食べたマヨネーズ。とっても濃厚で美味しい。
プリプリのエビとクリーミーなアボカドに、シャキシャキのレタス。懐かしい味だった。
それに定番の卵とベーコンの、サンドイッチもある。今日のサンドイッチは大きくないから、俺はどっちも食べよう。
「うまうまら」
「な、美味しいな」
「本当、とっても美味しいわね」
「姉上はマヨネーズが好きだよね」
「レオもでしょう?」
「そうだけと、僕よりニコの方が好きだろう?」
「マヨネーズを嫌いな人なんていないぞ!」
「アハハハ、ニコ、そうだね」
やっぱこの世界でもマヨネーズは人気だ。
「『うまいルルンデ』でも使ってますよ。大人気です」
「エルザ、『うまいルルンデ』にあるの?」
「ありますよ、数量限定ですけど。毎朝決まった量だけオスカーさんが作ってます」
「そうなのね。今度食べに行きましょうよ」
「本当だね」
意外にも、とっても身近なところにあった。マヨネーズって作るのに、そんなに手間が掛からなかったと思うのだけど。
「おばあちゃんは、一気に全部入れちゃうから」
「あらあら、ユーリア。それを言わないでちょうだい」
「ふふふ、マリーはそうなのね?」
「ワッハッハッハ!」
またシゲ爺が笑っている。マリーはどうも大雑把だから分量をちゃんと計らないし、なんでもドバーッと入れる。クッキーやパンケーキを作る時もそうだ。
お読みいただき有難うございます!
マヨネーズの作り方をご存知ですか?卵黄、お酢、塩をしっかりと混ぜたものに、サラダ油を少しずつ入れて混ぜるそうです。ここがポイントです。ご存知の通り、マリーは大雑把です。
一つ一つの工程を丁寧にというのが苦手なのですね。一気に材料をドバッと混ぜてしまって失敗します。
それを知っているから、誰もマリーに作って欲しいとは言いません。^^;
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