352ーぶどう狩り
「大きなダンジョンもありますからね」
「クリスティー先生、討伐もできるのですか!?」
こんな事を言っているのはリア姉だ。俺やニコ兄が聞くわけがない。それにレオ兄だって、まさか討伐に行きたいとか言うんじゃないだろうな、と言いたそうな顔をしている。
ここに来る前に、イシュトさんに言われたのだ。
「果樹園は森に近いから、念のため武器を持って行くのだぞ」
そう言われたので、リア姉は剣を、レオ兄は槍を持っている。俺とニコ兄はピカが収納してくれているピコピコハンマーだ。それに、ピカがいれば大丈夫なのだ。
「わふん」
「うん、ありがと」
当然だよ、僕が守るから大丈夫だよ。と、ピカさんが言っている。頼りになるね。
シゲ爺が、採ったぶどうを入れる籠を配ってくれた。
「まだ少しシーズンには早いんだけどな、収穫できる品種があるからぶどう狩りをするといいぞ」
「ひょー!」
「ワッハッハッハ! なんだ、ちびっ子! 可愛いな!」
「らから、ろろなのら」
「あん? あんだって!?」
おや、俺の言葉か理解できないか? 慣れないと難しいのかもね。イシュトさんが通訳してくれた。
「シゲ爺、ロロだと言っているんだ」
「ワッハッハッハ! ああ、そうだった!」
何か喋る度に、ワッハッハッハと笑っている。豪快というか何と言うか、ドルフ爺がまだ大人しく見えてしまう。
今まで俺の周りで豪快な人と言えば、ドルフ爺かギルマスかってくらいだった。でも、そんなのかる~く超えてきたぞ。
そんな中に、とってもお上品なネリアさんだ。
「ここのぶどうは、とっても美味しいのよ」
「ねりあしゃん、ぶろうじゅーしゅも、ここれちゅくってるの?」
「そうなのよ。あそこに大きな建屋があるでしょう。あそこで作っているのよ」
「しゅごいのら!」
「ふふふふ、みんなでぶどうを採ってくると良いわ」
「うん! にこにい、れおにい、いくのら!」
俺は二人の手を引っ張る。早く行こう、楽しみなのだ。
「アハハハ。ロロ、慌てなくてもいいから」
「ロロ、シゲ爺と一緒に行こうぜ」
「うん」
「やだ、私も行くわよ!」
「えー」
「ロロー!」
ふふふ。リア姉はお転婆さんだから、じっとしていられないのだろうね。鍛練でへばっていたのに、もう復活している。
ネリアさんと一緒に、座って待っていれば良いのに。だって一応令嬢なのだから。
「私が一番採るわよ!」
「姉上、だからそんなに張り切らなくても」
「なんでよ、やるわよ!」
ああもう、本当にお転婆さんなのだ。何でも一生懸命だ。真っ直ぐで、裏表がない。
俺にも真っ直ぐな愛情をくれる。
「りあねえ、おててちゅなぐのら」
「ロロ! ええ、繋ぎましょう!」
ちょっぴり、リア姉にサービスだ。リア姉の課題は、配分とか適度を覚える事だな。
ぶどうの蔓を伸ばすための枠組みが作られた、ぶどう棚が広がっている。
そこに入ると俺はちびっ子だから、そのままの姿勢で普通に歩けるのだけどリア姉やレオ兄は違う。腰を少し屈めて歩かないと頭が支えてしまう。
「実の粒が揃っていて、しっかり膨らんでいるのを採るんだぞ」
「わかったのら」
「今はまだ小さい実の種なしの種類しか収穫できねーんだけどな、もっと暑くなったら大きなのも採れるようになる」
「ほお~」
これはあれだ、きっと前世でいうデラウエアだ。小粒だけど甘くて酸味が少なくて、種がないから食べやすい。とってもポピュラーなぶどうだ。
「しげじい、あれはいい?」
プックリと粒の揃った一房を指して聞いた。ぶどう棚の隙間から差し込む陽に、キラキラと光って見える。とっても立派なぶどうだ。
「おう、良いぞ。届くか?」
「とろかないのら」
「あんだって?」
ふふふふ、どっかのおじさんみたいな言い方をしている。
「ロロ、抱っこしてあげよう」
「うん、れおにい」
レオ兄に抱っこしてもらい、俺は自分の小さな手にはさみを持ってチョキンとヘタを切った。俺の手に少し重みを感じるくらい立派な一房だ。
ニコ兄やリア姉も、其々採っている。
「れおにい、たべてもいい?」
「え? ロロ、今食べるの?」
「うん、おいししょうなのら」
「アハハハ、少しだけだよ」
「うん」
小さな一粒を指で取ってお口に入れた。ぷにゅッと指で押して中の実を出すと、口の中に甘い果汁が広がる弾力のある小さな粒を噛む。
「ふぉー! とっても、あまいのら」
「そう?」
「うん、れおにいも。あーん」
抱っこしてくれているレオ兄に、小さな一粒を差し出す。お口に入れてあげよう。
「アハハハ、僕は後で良いよ」
「らめ、たべて。とってもあまいのら」
「わかった、わかった」
レオ兄が口を開けると、そこにぷにゅッと小さな実だけを入れる。
「ん、本当だ。甘いね」
「ね~」
「あー! ロロが食べてるぞ」
「にこにい、あまいのら」
「なんだ、もう食ってんのか? ワッハッハッハ!」
「しげじい、とってもあまいのら」
「そうだろう!? 何百年も掛けて交配を重ねて、品種改良してきたんだ」
「ひょぉー!」
何百年だって!? それは凄い。きっとコツコツと、偶々良くできた株に花粉を授粉させて種を取り、また育てて授粉させてと繰り返してきたのだろう。
根気のいる気が遠くなるような作業だ。
お読みいただき有難うございます!
ロロにクリスティー先生が登場して話が出てくる影響でしょうか?ファンタジー部門のランキングでココちゃんがのびています。びっくりです。^^;
有難うございます!
今月前半ゆっくりしてしまった所為で、今ちょっと焦ってます^^;
原稿を2本抱えていて、月末まで頑張ります。
なのに本を何冊も買ってしまって、読みたい^^;
いつも感想を有難うございます!
誤字報告も助かってます。
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
ロロの紀伊國屋さんの在庫がどっと増えて、どっと減っていくのを毎日恐々チェックしてます^^;
売れなかったらどうしよう!
ロロ①発売中です。宜しくお願いします。




