344ー犠牲にはしたくない
「かんしぇいなのら」
「おおー!」
「なるほど、よく考えてますね」
「どろだんごを、ちゅくってたから」
「お団子ですか?」
「しょうなのら」
ちびっ子ならきっと誰でも土でお団子を作るだろう? あれの応用だ。
「ぴか、れきた」
「わふん」
ピカさんはあんまり興味がないみたいだ。連れて帰らないしね。ここにフリード爺と一緒にいてもらう。強い子だったら良いのだけど。フリード爺と一緒に領地を守ってもらうのだ。
「かわかしゅのに、かげがいいのら」
「よし、持って行こう。誰かが間違って持って行かない様に、向こうに並べておこう」
「うん」
建屋の軒下に並べておく。3頭できた。うん、ピカさんを作るのは二度目だから、なかなかのクオリティーだ。イッチー達よりは、一回り大きく作ったピカさん仕様の土人形。でもまさか、ここで土人形を作るなんて思いもしなかった。
「ロロは器用なのでっす」
「そうなんだよ。この小さな指で一針ずつ刺繍しながら付与するんだ」
「それは凄いでっす」
ふふふん。クリスティー先生に褒められちゃった。それにしても、クリスティー先生が作ったお人形はどうするのかな? 動いたりしないのかな?
「全然魔力を込めていないので、動かないですよ」
「なんらー」
この見た目で動いたら面白いと思ったのに。魔力で思い出したぞ。
たしかイッチー達は、俺の魔力で動いていると言ってなかったっけ?
「でぃしゃん、まりょくら」
「あ、そうだね。どうしよう? クリスティー先生に魔力を流してもらおうか?」
そんな事ができるのか? 誰の魔力でも良いって事なのか?
「ロロが作ったから、ロロの魔力が一番なんだけどね。クリスティー先生なら大丈夫だ」
「へえ~」
「ゴーレムに魔力を流すのですか?」
「そうなんだ。でないと動けなくなっちゃうんだよ」
「ふむ、なるほど。なら私が魔力を流しましょう」
よし、解決なのだ。これで安心だ。
「ふふふ、ロロは本当に聡い子ですね」
「可愛いしね」
「はい、とっても可愛いでっす」
またまた俺はクリスティー先生に抱っこされた。此処に来てからよく抱っこされる。
俺みたいなちびっ子がいないからかな? みんな大人だから。
「ちびっ子は久しぶりでっす」
やっぱそうなのだ。クリスティー先生やディさんはちびっ子が好きなのだね。
「ロロ、前に話さなかったかな? エルフはちびっ子を大切にするんだ。みんなで育てるって意識があるんだよ」
「きいたような、きがしゅるのら」
「ふふふ。いつか私達の国にも行ってみてほしいですね」
「いきたいのら」
「ねー、ロロが大きくなったら一緒に行くんだよね!」
「うん、でぃしゃん」
「おやおや、私も一緒に行きたいでっす」
「いっしょにいくのら」
「はい、そうしましょう」
楽しみだ。ディさんとクリスティー先生と一緒に、エルフの国に行くのだ。
お邸のあの部屋に戻ると、辺境伯と夫人、それにテオさんとジルさんもいた。こっちに着いてから、テオさんとジルさんはずっと辺境伯と話していた。もう良いのかな? リア姉達もいて、みんな勢揃いだ。
「あら、ロロちゃんったら汗をかいちゃったのかしら?」
夫人が俺をみて言った。そうかな? お外にいたからかな?
俺の短い前髪が、オデコに張り付いていた。暑いと感じた事はなかったのだけど。
「ロロ坊ちゃま、お着替えしましょうか?」
「えー。まりー、いいのら」
「風邪をひいたらいけませんから、お着替えしましょう」
「わかったのら」
俺はマリーと一緒に、自分達のお部屋に戻る。
それから辺境伯やテオさん達と、リア姉やレオ兄が何を話していたのかは知らない。
でもお着替えして戻ってきたら、フリード爺が涙ぐんでいたのだ。大きな身体を丸くして、両手でお顔を隠していた。
どうしてフリード爺が? とも思ったけど、それよりとっても真剣な雰囲気だった。
みんな揃って、何を話していたのだろう?
「ロロ、おいで」
「うん」
レオ兄に呼ばれて、俺はトコトコと側に行った。レオ兄は俺を抱き上げ、お膝に座らせてくれる。
「ニコやロロに、これ以上寂しい思いをさせたくないのです」
「レオ……」
ほらまた、フリード爺が眼をウルウルさせている。涙もろいのか? 『うまいルルンデ』のオスカーさんといい、筋肉モリモリの人って涙もろいのか?
「だが、レオ。リアもだ。もう一度復学する事は考えた方が良い。まだまだ君達は知識をつけないといけない」
「はい、辺境伯様」
「そうね、でもゆっくり考えると良いわ。後悔しないようにね」
「ネリア様、有難うございます」
なんだ? そんな話をしていたのか。俺は確かにみんな一緒がいいと言ったけど。でもだからって、リア姉やレオ兄を犠牲にはしたくないのだ。
「れおにい」
「ロロ、どうした?」
「ボクのために、あきらめるのはらめなのら」
「ロロ」
「ロロったら」
だってそうだろう? レオ兄はあの領地を治める家を継ぐつもりだ。きっともっと勉強しないといけない事があるのだろう?
それを、俺の為に我慢するのは良い事ではない。俺だってそれは嫌だ。
「みんないっしょがいいけろ、がまんしゅるのら」
「そうだぞ。俺だってそう思うぞ」
ほら、ニコ兄だって俺と同じ気持ちだ。リア姉とレオ兄の足を引っ張りたくない。俺達だって大切に思っているのだ。




