342ーこねこね
あの二人は畑しか眼に入っていない。もう何を育てようかとか考えているのだろう。
「でぃしゃん、とりしゃんがいるのら」
「うん、そうだね。あれも魔鳥だよ」
「じゃあ、うししゃんも?」
「そうだね。鶏さんも牛さんも近寄ったら駄目だよ。蹴られちゃうからね」
「ひょぉーッ!」
こ、こ、怖いのだ。この領地の魔獣さんってそんなに強いのか? 好戦的なのか!?
「アハハハ! 強いんだよ。自分より弱いと思ったら蹴りを入れてくるんだ」
「じぇ、じぇったいに、ちかじゅかないのら」
「うん、それがいいよ。でも、ピカと一緒だったら平気だ」
「ええー」
「ピカの方が強いからね」
「え」
ピカさんが強いのは知っているけど、ピカがいるだけで平気なのか?
「そうだよ、魔獣って相手が自分より強かったら手を出してこないんだ」
「へえー、お利口なのら」
「アハハハ、そうだね」
えっと、俺はどこでコネコネしようかな? あまりにも広くて、どうしたら良いのか迷ってしまう。
「ロロ、あの木陰がいいんじゃない?」
「うん、でぃしゃん」
俺がディさんと話している間も、ずっとクリスティー先生はニコニコしている。俺を抱っこして離さない。お手々はこっそり俺のお腹をプニプニしているのだ。これはもう仕方がない。
俺のふわもちボディーにはみんな抗えないのだ。
木陰に下ろしてもらって、俺は周りの土を見る。表面の土を手で退けてみるとサラサラではなくて、ちょっと湿気た土が出てきた。うん、これなら作れそうだ。
「でぃしゃん、おみじゅもほしいのら」
「お水がいるの?」
「しょうなのら」
「私が持ってこよう。ロロ、沢山いるのか?」
「ちゅちを、こねこねしゅるらけいるのら」
「ふむ」
きっと分かっていない。まあ、いいや。フリード爺がどこかにお水を取りに行ってくれた。
俺はしゃがみ込んで土を集める。園芸用なのかな? 小さなスコップを貸してもらった。それで土を掘る。その土にフリード爺が、持ってきてくれたお水を足しながらコネコネする。ピカさんみたいに強く、でもフリード爺の子分になってねと思うのだ。
「ちゅよくってぇ、かわいくってぇ、おりこうなのら」
「ふふふ」
ディさんとクリスティー先生が俺を見ている。そんなに見られると緊張するぞ。
「ディさん! クリスティー先生!」
ほら、ドルフ爺が呼んでるよ。
「おや、呼んでますよ。ディ」
「先輩……じゃないや、クリスティー先生だって呼ばれたじゃない」
「私はロロを見ているので、離れられないのでっす」
「えー、僕だって見たいのにぃ」
「ほら、ディ」
「はぁーい」
ふふふ、こんなディさんは初めて見るのだ。ルルンデだと、ディさんにそんな風に言える人なんていないから。
ディさんが最初は先輩と呼んでいたから、クリスティー先生の方が上なのだろう。
俺は手を動かす。コネコネ、コネコネ。お水を少し加えてコネコネ、コネコネ。フリード爺はお水を置いて、どこかに行ってしまって戻ってこない。どこに行ったのかな? きっとじっとしていられないのだろうな。まあ、いいや。
どこかから大きな声だけ聞こえてくる。何をしているのかな?
「なんだそのへっぴり腰はぁッ!」
フリード爺の声だ。きっと領主隊の鍛練でも見ているのだろう。
とにかくコネコネ、コネコネ。
「そんなに捏ねるのですね」
「しょうなのら。ちゃんとこねこねしとかないと、かわいたときにひびがはいるのら」
「おや、そうなのですか」
「しょうなのら」
ふふふん、泥団子を沢山作ってきたから、その経験から分かっているのだ。
「ふふふ、小さな手で可愛らしいでっす」
「しぇんしぇいも、いっしょにこねこねしゅる?」
「私もですか?」
「しょうなのら。きっとちゅよいこが、れきるのら」
「おやおや、そうですか?」
そうなのだ。俺よりクリスティー先生の方が当然魔力量は多いだろうし、エルフさんだから付与魔法なんてお手の物じゃないか? なら、クリスティー先生にだって作れるはずだ。
俺の隣にクリスティー先生がしゃがんで、土を同じ様にコネコネしだした。
「こうですか?」
「うん、じょうじゅなのら」
「ふふふ、そうですか?」
クリスティー先生と二人でコネコネ、コネコネ。
「ちゅちが、まとまってくるのら」
「はいはい、なるほど」
「しょしたら、ぴかみたいにしゅるのら」
「なるほどでっす」
俺はピカさんみたいに形を作っていく。耳は垂れ耳で、尻尾はフッサフサで、もふもふボディーもちゃんと再現するのだ。ふわっふわに見えるようにね。
今回はイッチー達より少し大きく作ってみよう。
「ロロは上手でっす」
「ふふふん」
俺はそう言うクリスティー先生の手元を見て、ちょっぴり固まった。
クリスティー先生は意外にも、とってもとっても不器用さんだったのだ。
どう見てもワンちゃんには見えない。なにか得体の知れない土の塊ができている。どうしてそうなった?
「え、二人で何やってんの?」
戻ってきたディさんが、俺達の手元を見て言った。俺が作っているのは、ちゃんとワンちゃんに見えるだろう?
お読みいただき有難うございます!
気付けば342話です。300話を超えてましたね〜
リリは389話が最終話でした。完結してからの番外編がとんでもなく多いのですけど。^^;
ハルちゃんは263話でした。
ロロはまだまだ終わりそうもないです。どうしましょう〜^^;
続けて読んで頂けるように、これからも頑張ります!
いつも感想を有難うございます!
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宜しくお願いします。
楽天ブックス様に在庫が復活してます!
他のweb書店様にも入荷したみたいです。ひぇ〜、これって売れるのかしら?Σ(゜д゜lll)
まだ手に入れていない方は、宜しくお願いします!
1巻にはまだプチゴーレムが登場しませんでしたね。2巻には登場します。




