341ー聖獣がいた
この世界では、フェンリルの神獣はピカだけらしい。他の世界にはいるけど。と、ピカが教えてくれた。
「へえ~、しょうなの」
「ロロ、ピカと何を話していたの?」
「でぃしゃん、ぶらっくふぇんりるも、しんじゅうなのかきいたのら」
「あの子達は神獣ではありませんでしたよ」
「しょうなのら。ちがうっていってたのら」
なんだ、クリスティー先生は知っているのだね。
「色々発明したあの令嬢が、森でテイムしたのですよ。えっと、名前を何と言いましたか……そうそう、ノワでしたね。この地域の森の守護聖獣でっす。ですので令嬢が亡くなったら、森に帰っていきました」
懐かしいですね~と、クリスティー先生が切なそうな表情で話してくれた。
亡くなったらとクリスティー先生が言った。代々のこの家の人達をクリスティー先生は見送ってきたのだろう。俺には想像できない事だ。
しかし、聖獣か。どっかで聞いたぞ。えっとぉ、確か……。
「しぇいじゅう……くーちゃんといっしょ?」
「ロロ、そうだよ」
「んん? ディ、まだ他にもいるのですか?」
「そうなんだ、クーちゃんって大きな亀の聖獣がいるんだ。ロロがテイムして霊獣から進化したんだ。凄いでしょう?」
「まあッ! なんて珍しい事でしょう!」
「アハハハ、だろう? 僕も初めて見たよ」
「私も進化して聖獣になったものなんて、見た事がありませんよ!」
ほうほう、クーちゃんはそんなに珍しいのだね。へえ~。でもクーちゃんだしなぁ。ドルフ爺に恋して、卵を産んじゃったくらいだし。
なんて、思いながらモグモグと食べる。そして、ニコ兄にほっぺを拭かれる。その繰り返しだ。ニコ兄、いつも有難う。
「アハハハ! ロロったら全然分かってないよね?」
「でぃしゃん、わかってるのら。くーちゃんは、めじゅらしい」
「そうそう。アハハハ」
「こんなに驚くのは、あの令嬢がいた時以来でっす」
クリスティー先生が、綺麗な青い眼をまん丸にして俺を見ている。
そんな事を言われても、俺は不可抗力なのだよ。だってお名前を付けただけなのだもの。
「ロロ、どうやって進化させたのですか? 知りたいでっす」
「おなまえちゅけたらけ」
「へ?」
だからだな。クリスティー先生、そんな呆けたお顔をしなくても良いと思うのだよ。
ティーカップを持ったまま、俺を見て固まっている。
「くーちゃんって、おなまえちゅけたら、ぺかーッって」
「光ったのですか?」
「しょうなのら。びっくりなのら」
「アハハハ!」
ディさんが、涙を拭きながら笑っている。そんなに面白い事を言ってないぞ。
他の人達も俺を見ている。レオ兄なんて、ちょっと呆れたような顔をしているのは何故だろう?
まあいいや。食べよう。とっても美味しいから、いっぱい食べよう。
「これは是非ゴーレムを作るところを、見てみたいのでっす」
「そうだよね。じゃあ、ロロ。オヤツを食べたらプチゴーレムを作ってみよう」
「うん、でぃしゃん」
コネコネすれば良いんだね。ディさんが良いと言うなら問題ないのだ。
「れもなぁ~」
「ロロ、フリード爺の子分にって思ったら強くならないかな?」
「しょっか。しょうしゅるのら」
ふむふむ。流石ディさんなのだ。強い基準が欲しかったから、それなら良いと思うのだ。フリード爺の子分と思って作ってみよう。
フリード爺も強いから、きっと強いプチゴーレムになるのだ。なんといってもSランクだから。
でも、もう一つ問題があるぞ。
「でぃしゃん、けろ」
「ロロ、どうしたの?」
「ぴかのこぶんらから、わんちゃんなのら」
「ああ、そっか」
「しょうなのら」
「んん?」
フリード爺はまだ俺の言葉が、全部理解できる訳ではないらしい。少し長くなると、え? て、お顔をしている。仕方がないなあ、ディさん通訳してほしいのだ。
「フリード様、同じワンちゃんみたいな感じで良いですか?」
「おう、それで良いぞ!」
「ロロ、作れそうかな?」
「うん、おなじれいいなら、ちゅくれるのら」
なんだったら人型でも良いぞ。小さな人型のゴーレムも、作ってみたいとちょっぴり思った。
と言う事で、ディさんとフリード爺と一緒に裏庭に出て来た。何故かとってもニコニコしているクリスティー先生に、俺は抱っこされている。ドルフ爺とニコ兄も一緒だ。
「ディは作るところを見たのですか?」
「僕もちゃんと見てないんだ。だからとっても楽しみだ」
そうだっけ? ディさん見ていなかったっけ? 覚えてないのだ。
お邸の裏側はとっても広かった。お邸の前だって広いと思ったのに、そんなもんじゃなかったのだ。
畑があって、お野菜や薬草が沢山植えてある。その脇には小屋が並んでいて、大きな鶏さんと牛さんがいる。
これって普通じゃないよな? だって大きさが、俺が知っている鶏や牛とは違っていてとっても大きい。鶏さんなんて、コッコちゃんよりも大きいぞ。
並びには建屋が並んでいて、その奥には兵舎と広い鍛練場があった。
ここはどれだけ広いのだ? びっくりして思わず声が出てしまった。
「ひょぉーっ! ひろいのら!」
「スゲー!」
「ニコ、広いだろう?」
「ドルフ爺、スゲーな!」
「おう、ルルンデにはない野菜があるから、分けてもらったんだ」
「楽しみだな、また増やそうぜ」
「おう」
ドルフ爺とニコ兄はお野菜に夢中なのだ。二人で畑に入って行った。




