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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第6章 辺境伯領に行ったのら

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333/486

333ー1巻発売記念SS ディディエ・サルトゥルスル

ロロ達とディさんが会う切っ掛けになった事を書きました。

 僕はエルフのディディエ・サルトゥルスル。毎朝『うまいルルンデ』で特盛サラダを食べるのが日課だ。今朝もいつも通り、サラダを食べていたんだ。


「ディさん」

「あれ、おはよう。ギルマスどうしたの?」

「ちょっと見てほしい物があんだ」


 チンプンカンプンだという様な表情で、ギルマスがやってきた。


「見る? 何を見るの?」

「まあ、それ食べてからで良いから、俺の部屋に来てくれねーか?」

「うん、分かったよ」


 それだけ言ってギルマスが店を出て行った。なんだろう? 見てほしいと態々言いにくるという事は、多分僕の精霊眼で見て欲しいって事だろうな。それなら少し興味がある。

 そんな事を考えながら、シャクシャクとサラダを食べていた。

 

「オスカーさん、ごちそうさま」

「おう、ディさん。さっきギルマスが来てたみたいだけど、今日はギルドに行くのか?」

「うん、呼ばれちゃった」

「アハハハ、まあ偶には顔出すのも良いさ」

「そうだね、行ってくるよ」


 僕は『うまいルルンデ』の斜め向かいにある冒険者ギルドへ入って行く。勝手知ったるなんとかだ。そのまま受付を通り過ぎて2階へ上がりギルマスの部屋へ。


「ギルマス、お待たせ」

「おう、すまねーな」


 勝手にソファーに座っていると、女性職員がお茶を出してくれた。

 相変わらず忙しそうにしている。ギルマスが座っているデスクの上には書類が積まれていた。そこから大きな身体を一度ググッと伸ばして、ソファーの方へやってきた。


「で、何を見るの?」

「それがな、これなんだが……」

「ん? ハンカチ?」

「そうなんだ」


 一枚の普通のハンカチを出してきた。高価な生地でできた物でもない、庶民がみんな持っている様な普通のハンカチだ。

 ギルマスが言うには、最近Dランクで精力的にクエストを熟している姉弟がいるのだそうだ。その子達の頼みらしい。


「姉がリア、弟がレオってんだ。そのレオが見て欲しいって持ってきたんだけどな。俺には普通のハンカチにしか見えねーし」


 でもそのレオが、きっと何か付与されていると思うと言っていたらしい。


「そんなの聞いた事ないよ。だってハンカチだろう?」

「俺もそう思ったんだ。だけど、真剣に言ってくるから念のためと思ってな」

「そうなんだ。ふぅ~ん」


 そのハンカチを手に取る。ごくごく普通のハンカチだ。ワンポイントで葉っぱの刺繍がしてある。なんだか可愛いな。きっとこの刺繍をした子は、一生懸命したのだろうなと思った。

 だって、一針一針丁寧に刺繍してある。


「その刺繍が問題なんだ。レオ達の末の弟がしたらしいんだ」

「え? 弟?」

「おう、3歳だとよ」

「ええ? 何それ」

「だろう? でもまあ、一応見てくれよ」


 そのレオがとても真剣だったのだそうだ。それにこうしてちゃんと僕に言ってくるところを見ると、ギルマスはそのレオに多少は目を掛けているって事だろう。


「ふぅ~ん、どこからどう見ても普通のハンカチだ」

「おう、そうだろう?」

「でも3歳の子が刺繍したにしては、上手だよね」

「おい、そこかよ」

「アハハハ、とにかく見てみるよ」

「ああ、頼む」


 僕が持っているスキル、精霊眼でそのハンカチを見て驚いた。


「え……信じらんない」

「どうした?」

「そのレオ?」

「ああ。レオとリアだ」

「この刺繍をした末っ子は?」

「知らねーぞ」

「ギルマス、是非会いたい!」

「てことは、ディさん」

「ああ、とってもよくできた付与だ」


 効果としてなら、そう大した事はないんだ。だけど、思いだ。

 これを付与した末っ子は、姉や兄の事が心配なんだ。敢えて言葉にするなら、運向上かな。いや、お守りだ。とっても効果のあるお守りなんだ。

 例えば右に行くのか、左が良いのか迷ったとする。そんな時に無意識に正解の道を選ぶといった感じだろうか。そんな付与なんて聞いた事がないぞ。

 大抵、付与というと魔石や武器にするのが普通だ。そしてその効果も、防御力アップや攻撃力アップといったものが多い。それが冒険者達にとっては有益だからだ。

 なのにこの付与は何だ。それ以前に悪い事が、持ち主に起こらないようにと付与してある。

 だからこの付与をした子は、姉や兄の事を心配しているんだと思った。

 無事に帰ってきてほしい。怪我をしてほしくないってね。そんな付与をしたその末っ子に僕は興味を持った。

 それから、数日後。その子達がギルドに来ていると連絡を貰った僕は、浮き立つ心を抑えながら会いに行った。

 ソファーにちんまりと座っているちびっ子がいた。ペコッと頭を下げてくる。

 この子があの刺繍をしたのか?

 え……!? ちょっと待って。

 僕は平静を装いながら、心臓がバッコバコだった。

 だってその子の側に寝そべっている大きなワンちゃん。いや、ワンちゃんに見えるけど違う。

 精霊眼で見なくても分かる。神獣フェンリルだ。エルフの僕でさえ、初めて見た。

 僕は畏敬を感じて、少し身震いしてしまった。それを無理矢理抑え込み、和かな顔を作る。


「ろろれしゅ。こんちは~」

「アハハハ、お利口だね。ロロくんか……ピカの主だね」


 ぷくぷくのほっぺをしている。まだ幼児体形で何処も彼処もぷくぷくだ。今すぐ抱っこしたい気持ちを抑えて僕は挨拶をした。


「僕はエルフだよ。ハンカチを鑑定したんだ。それで是非とも刺繍をした人に会いたくて来たんだ」


 そう話し出すと、キョトンとした表情をしている。自分の事かな? みたいな。アハハハ、なんて可愛いんだ。


「僕はディディエ・サルトゥルスル。ディでいいよ、よろしくね」

「でぃしゃん?」

「そうだよ、ロロくん」

「ろろれいい」

「そうかい? じゃあ、ロロ。君の刺繍を見させてもらったんだ」


 やっと落ち着いて座り、話を聞く。


「話を進める前に、ロロ。君を見てもいいかな? 君はとっても興味深い」


 これがロロとの出会いだ。この時の事は今でもはっきりと覚えている。

 初めてロロを精霊眼で見た時は、冷静なフリをしていたけど内心は全然冷静なんかじゃなかった。まさかと思ったんだ。

 話には聞いた事がある。でも実際に主神の加護を、授かっている子を見たのは初めてだったから。その上、神獣に守られている。

 この子は世界に愛されている。この子がこの世界にいる意味があるんだ。いや、きっと必要なんだ。そう思った。

 でもまだ本人はちびっ子だ。だから、僕はその事を自分の心の中に仕舞った。

 それから色々あって、僕は急速にロロ達と親しくなった。悲しい事件が切っ掛けだったんだけど。

 

「でぃしゃん!」


 僕を呼びながらトコトコと走ってくるロロ。あの事件の時には、守ってあげられなくてごめんね。

 僕が付いていたら、あんな目には遭わせなかったのに。


「ロロ! おはよう~!」


 今日も僕はロロに会いに来た。

 この子達とエルフの僕が知り合ったのも、きっと意味があるんだ。そうとしか思えなかった。

 ロロ、約束を覚えているかな? ロロが大きくなったら本当にエルフの国に行こうね。

 ロロがどんな顔をして驚くだろうと思うと今から楽しみだ。


お読みいただき有難うございます!

本編には書かなかった事をと考えました。

ディさん、人気があるのですよね〜^^;

明日から通常に戻ります。

もうご購入頂いた方、有難うございます!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


ディさんが言う悲しい事件のイラストを。

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
ディさんはあれだけ活躍してますから、人気は高いと思いますね エルフキャラのいいとこだけを濃縮(凝縮?)したエルフですしね
優しいでぃしゃん♡ぷくぷくロロのお腹をプニプニしながらも実はドキドキだったとは。
ロロとディさんの運命的な出逢い。 良いですね。(^O^☆♪ 感動です♡ 光の精霊、白い鳥なんとルーだったですね。気が付きませんでした。 (๑>◡<๑)
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