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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第6章 辺境伯領に行ったのら

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332/486

332ーご先祖さま

 クリスティー先生もエルフさんだ。俺には想像できない年月を生きている。

 きっとそのご先祖様の事も、懐かしく思っているのだろう。


「ソースだけではありませんよ。この食事方法をバーベキューと呼ばれたのも、その方が最初なのです。それから兵達の間で広がって、庶民から貴族へと浸透していったのでっす。この領地発祥のものは、それだけではありません。例えばガラスペンやえんぴつでっす。今は誰でも持っているメジャーな物になりましたが、それを発明されたのですよ。当時の辺境伯のご令嬢で次女の方だったのですけどね、とっても楽しい人でした」


 ん? ちょっと引っ掛かっちゃったぞ。 バーベキューと名付けたって事なのか? それにガラスペンにえんぴつだって。前世ならそれは普通の物なのだけど、この世界では違う。えんぴつは俺もよく使う。レオ兄にお勉強を教えてもらう時には、いつも使っている。

 リア姉はブルーの、レオ兄はラベンダー色の綺麗なガラスペンを持っている。入学する時に母様に貰った物だ。

 それを発明したご令嬢だって、一体何年前に生きていた人なのだろう。


「そうですね……もう300年以上前になりますか」

「ひょぉ~!」

「マジかよ!」


 クリスティー先生は最低300年生きているという事なのだ。

 そのクリスティー先生を先輩と呼ぶディさんもよく似た年月を生きているのだろう。きっと300年じゃ足らないのだろうな。


「先輩……」

「ディ、クリスティー先生でっす」

「はいはい、クリスティー先生。あの時だよね? 邪神の眷属が……」

「そうですね」


 えっと、あれか? ルルンデの街に伝わっている、邪神が攻めて来た時の事なのかな?


「えっちょ、おまちゅりの?」

「ロロは本当にお利口だ」


 ニコニコして俺を見ながら、サラダを食べるディさん。食べる手は止めないのだ。


「おや、ロロは分かっているのですか? 今の会話だけでですか?」

「クリスティー先生、そうなんだよ。ロロだけじゃなくて、この子達はお利口なんだ」

「え、俺全然分からないぞ」


 ニコ兄、少し考えたら分かるのだ。邪神とくれば、思いつくのはあのお祭りだろう?


「ニコはそのまま真っ直ぐに大きくなってほしいな」

「えー! ディさん、それどういう意味だよ!」

「アハハハ! ニコは素直で兄弟思いの良い子だって事だよ」


 うまくごまかしたつもりのディさん。でもニコ兄は、納得していないみたいだよ。


「もう300年も経っちゃったんだね」

「ディ、貴方は覚えてますか?」

「もちろんだ、忘れられないよ。あそこで眷属を一人倒してくれていたから、邪神を封印できたんだ」


 多分ルルンデの街のお祭りで、語り継がれている邪神の事だと思うのだけど。


「しぇんしぇい、でぃしゃん、もっとききたいのら」

「ロロ、そうですか? もう300年以上前になりまっす」


 クリスティー先生が、懐かしそうな眼をしながら話してくれたのだ。

 ルルンデの街に、邪神が攻めてくるまだ少し前らしい。この国の城と教会が、邪神の眷属に乗っ取られてしまった事があったのだと言う。


「あの時は確か……第3王子をこの領地で保護したのが始まりだったのでっす」


 王妃から不当に虐げられていた第3王子。それに気付いたその時の辺境伯が、無理矢理城から連れ出し領地に連れて帰ってきた。

 それが切っ掛けで、王と王妃の様子がおかしいと気付いた。そしてその第3王子を連れて、王都へ向かった。

 クリスティー先生の協力もあって、王都全体が邪神の眷属に洗脳されそうになっている事を掴んだ。王と王妃は邪神の眷属に、弱らされ命が危なかったのだという。

 そして、辺境伯一家でその眷属に立ち向かい、2度の戦いの末に眷属を倒したのだそうだ。


「ひぉー! しゅごいのら」

「そうでしょう? とても強い方達だったのでっす。力だけではなく、心も強い方達でした」


 だがその事が切っ掛けで、王族の威信が揺らぐ事になってしまった。王権を譲らなければならなくなってしまったらしい。


「第3王子はこの辺境伯家のご令嬢で長女の方と婚姻し、こちらで住んでおられたのです。ですが、兄王子が王位を継がれた後に王権を譲り渡されました。それで、テンブルーム王国となったのでっす」


 無駄な争いがなかった事は幸いでした。と、クリスティー先生が少し寂しそうな顔をしたのだ。


「僕達はこの国の国民じゃないからね」

「ええ、ディ。あれは仕方がなかったと思っていますよ」

「そうだね。でも国民や辺境伯家の人達には被害はなかったし」

「ええ。国を治める人や国名が変わっても、この家の人達の基本は変わりません。あの頃生きた人達の思いを継いでおられまっす」


 クリスティー先生やディさんは、その時に生きた人達の事を覚えている。沢山の人を送ってきたのだろう。300年だ。一体何代の辺境伯を送ってきたのか。


「ココ様が婚姻されなかった事は心残りだったのでっす」

「そうだね。でもあの令嬢はだって……」

「ディ……」


 クリスティー先生が首を横に振ったのだ。それ以上は言うなという事なのだろう。

 二人共、寂しそうに見えたのだ。ディさんはサラダを食べていた手が止まっている。


「でもディ、この子達はあの時と同じ様な楽しさを感じまっす」


 お、話が俺達の事になったぞ。


お読みいただき有難うございます!

今日は夜になりますが、もう一話発売記念SSを投稿します。宜しくお願いします!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
あれから300年、月日が経つのが早いのか遅いのか⁉️分からないですけど。国名が変わった経緯が判明してスッキリしました。 ココちゃんは、結局誰とも婚姻しなかったのですね。残念。 バーベキューソース、トマ…
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