328ーお腹がすいた
「おう? その顔は、ロロは分かっているな!?」
「たぶんなのら」
「資源になるのだ。そのお陰でこの領地が潤っているという側面もあるのだ」
ああ、やっぱそうなのだ。ルルンデだってそうだったもの。こことは規模が違うのだけど。
冒険者達が討伐してきた魔獣は、冒険者ギルドを通してお店に卸される。ダンジョンで魔物を倒して手に入る魔石も同じだ。魔道具店に卸される。
それをまた冒険者達や街の人達が購入する。そうして流通している。ここも同じなのだと思ったのだ。
みんなで邸の方へ歩いて行くと見えてきた。
さっき話していた邸の前の広場に、テーブルセットが出されて良い匂いがしている。
「皆が来たから昼飯はバーベキューにしたのだろう」
「ばーべきゅー!」
「ロロったらお腹空いていたの?」
「りあねえ、ぺこぺこなのら」
またお腹が鳴らなきゃ良いのだけど。
――キュルルルル~
思っていた矢先にコレなのだ。制御不能な俺のお腹が鳴ってしまった。
「ワッハッハッハ! ロロの腹の音は可愛らしいなッ!」
ちょっぴり恥ずかしい。良い匂いがお腹を刺激しちゃったのだ。
ディさんやドルフ爺も出てきた。みんな揃ってお昼ご飯だ。
大がかりなバーベキューだった。串に刺したお肉が焼かれ、お野菜のサラダがあって、ポトフもあった。パスタや焼き立てのパンもある。
「ひょぉ~! おいししょうなのら!」
「ロロったら可愛い」
「リアはロロが可愛いか!?」
「はい! 当然です! ロロだけじゃなくて、レオもニコも可愛い弟です!」
「おう! 良い子達だ!」
もうフリード爺とは仲良しになったのだ。
リア姉は誘われた朝の鍛練に、参加するつもりらしい。レオ兄はちょっと躊躇していたのだけど。
「姉上一人参加させるのもね」
なんて言いながら、レオ兄も参加するみたいだ。
「ロロ、俺達は見てみようぜ」
「うん、にこにい」
「ニコも参加して良いのだぞッ!」
「ええー!」
「ワッハッハッハ!」
豪快に笑っている。こっちまで笑ってしまうのだ。
いやいや、俺ってばヤバイ。またウルウルしてきそうなのだ。
さっきからずっと、ポカポカが増え続けている。こんなに温かく迎え入れてもらって、俺はどうすればいいのか分からない。
ルルンデでも、みんなに可愛がってもらっていた。だけど、それとはまた少し違う気がするのだ。俺がこの世界で初めて経験する温かさなのだ。
「ロロ、甘えればいいんだよ」
「れおにい、しょう?」
「うん。ロロは父上や母上が、可愛がってくれていた事を覚えていないだろう? ここでは遠慮せず甘えたらいいよ」
「わかったのら」
レオ兄は流石だ。俺が話さなくても、何を感じて何を考えているのかよく理解してくれている。
俺は初めて与えられる沢山の大きな愛情に、少し戸惑っていたのだ。
その時の俺達の雰囲気なんて気付いてもいないフリード爺が、思い出したようにレオ兄に言った。
「そうだ、レオ。ランベルトに槍を教わると良いぞ!」
「ランベルトさんですか?」
「おう! ランベルトは大槍を使うからな!」
「大槍ですか!? うわ、僕は見た事がないです!」
字の如く、レオ兄がもっている槍よりずっと大きな槍らしい。
あの穏やかそうなラン爺が大きな槍を使って戦うという。あまり想像できないのだ。
「ランベルトだってAランクだ」
「「ええぇーッ!?」」
驚いているのは、俺とニコ兄だ。Aランクだって。とっても強い。いや、待てよ。だってという事は?
「イシュトもAランクで、私はSランクだ!」
「「「ええーッ!」」」
俺とニコ兄だけでなく、リア姉も驚いて思わず声を上げた。さっきのウルウルなんて、吹き飛んだのだ。
「え、え、えしゅ!」
「ワッハッハッハ! そうだぞッ! この領地では私だけだぁッ!」
び、び、びっくりなのだ。レオ兄、なんとか言って欲しいのだ。俺達はびっくりして言葉が出ないぞ。
「Sランクって、国内では数人しかいないって聞きました」
「おう、レオはよく知っているな! そうらしいぞ、ワッハッハ!」
でも父の師匠だったフリード爺が、弱いはずがないのだ。
そのSランクのフリード爺は、ツーハンデッドソードと呼ばれる剣を使う。普通は両手で扱うとても大きな剣だ。しかもそれを片手で振り回すらしい。とんでもないのだ。
それだけじゃない。フリード爺は剣ならなんでも使えるらしい。流石師匠だ。
そしてラン爺は、大槍だけでなくロングソードも使う。ガンガン前に出て行くのがフリード爺なら、その背中を守っているのがラン爺らしい。
で、フリード爺が父と今の辺境伯に剣を譲ったのはどうしてなのだろう? 自分で使ったりしないのか?
「いやいや、私は双剣は使わん。扱えはするのだが、あれは性に合わん! ワッハッハッハ!」
また大きな声で笑っている。きっとなんでも一直線で豪快なのだろう。悪く言えば大雑把。マリーじゃないけど。
双剣だって使えるのだ。なのに性に合わないとか言って、アッサリと剣を譲ってしまう。なんて豪快なんだ。
「私が持っていても、宝の持ち腐れだッ!」
「お祖父様、そんな事はないですよ」
また、ワッハッハと笑っている。豪快なお爺さん。まだ元気なのに領主を息子に譲ったのだ。それも、どうしてなのだろう?
お読みいただき有難うございます!
発売日がとうとう明後日になりました。今からドキドキです。
2冊同時発売という事で大変でしたが、どちらも加筆改稿してあり満足して頂けると思います。
リリはもう5巻になりました!ここまで続刊を出せたのも、皆様のお陰です。有難うございます!
ロロは1巻です。なんとオリジナルキャラが登場します。書き下ろしも2本収録されています。
是非、パワーアップしたリリとロロを手に取って頂けると嬉しいです。
有難い事に、ロロは一部ではご予約できなくなっているようです。ですが、まだまだAmazonさん等ではご予約して頂けます。宜しくお願いします!
では、今日は2作品の書影を!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。




