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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第6章 辺境伯領に行ったのら

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326/486

326ーなんとなく!?

 それから何故かユーリさんとリア姉は、木の剣を持ち出して手合わせをし出した。本当に二人は体育会系なのだ。


「ふゅ~」

「ロロ、疲れたかな?」

「ううん、しょうじゃないのら。なんらか、どきどきしゅるのら。うれしいのら」

「ふふふ、本当だね」

「おう、心配してくれてたんだなって分かるしな」


 そうなのだ。ニコ兄の言う通りだ。これは父様と母様が繋いでくれた縁なのだと思う。


「まだまだ腰が入ってないぞーッ!」


 大きな声でそう言いながら、やって来たのはフリード爺だ。もうお話は終わったのかな? でも、フリード爺一人なのだ。ラン爺はどうしたのかな?


「私は堅苦しい話は合わん」


 あらら、一人抜け出してきたという事だね。フリード爺も体育会系なのだ。

 俺を太い腕でヒョイと抱き上げて、ユーリさんとリア姉を見ている。


「あの剣はフリード様が譲られたのですか?」

「おう、レオもフリード爺と呼んでくれ! フリード爺だ!」

「は、はい。えっと、フリード爺……様」

「ワッハッハ! まあそれでもよい。そうだな、あの剣は私が息子とアルに譲ったんだ。ちょうど良いかと思ってな」


 レオ兄がフリード爺に聞いたのだ。あの剣に付いている魔石の事だ。魔法攻撃の威力を高めると。


「ん? そうなのか? 知らんぞ?」


 ええ!? 知らないって!

 キョトンとして、それがどうした? と、いった表情をしているフリード爺。


「ワッハッハ! 剣に関しては何も残っていないのだ。だがな、緑は息子、赤はアルと思ったんだ。なんとなくだ!」


 なんとなくだって。いやもう、本当に俺は言葉が出ない。

 こういう人、時々いるのだ。何の根拠もないのに、正解を選ぶ人だ。

 ハンカチに刺繍し出した最初の頃、俺はそれを狙ったんだ。なんとなく駄目だと分かる。そうして危険を避けて欲しかった。

 それを地で行く人なんだ。フリード爺には俺のハンカチなんて必要ない。


「ロロはまだ剣を使わないのか?」

「ボクは、ぴこぴこはんまーなのら」

「んん? ぴこ?」

「ぴこぴこはんまー。ばしこーんしゅるのら」

「アハハハ!」


 あれ、レオ兄が爆笑しているぞ。だって、剣と言っても俺はおもちゃの木の短剣だし。ピコピコハンマーの方が毎日使っているのだ。


「ロロが作ったんですよ」

「なにぃッ!? 作っただとぉッ!?」


 声が大きい。抱っこされて耳元で喋るから耳がキーンとなるのだ。

 これって、ギルマスみたいだ。ギルマスの方がまだマシかも知れない位に大きな声だ。でも、楽しい。ふふふ。


「ぴか、ぴこぴこはんまーらして」


 側でお座りしていたピカさんにそう言った。


「わふん」


 コロンとピカが出したピコピコハンマー。俺のとニコ兄のと二つだ。

 下ろしてもらおうと、フリード爺の腕をポンポンと叩く。


「おりるのら」

「おう」


 ニコ兄と一緒に、ピコピコハンマーを持って地面を叩いてみる。


 ――キュポン!


「おおッ!?」


 もう一度なのだ。


 ――キュポポン!


 ニコ兄も隣で叩いている。


 ――ボボーン!


「ふふふ、あれで二人はマンドラゴラを叩いて気絶させるのです」

「な、なんとぉッ! ワッハッハッハ! これは凄いぞぉッ! ロロが作ったのか!?」

「しょうなのら。こねこねして」

「んん?」


 コネコネだよ、コネコネ。土をね、コネコネ。


「ワッハッハッハ! それはディさんが可愛がるはずだなッ!」


 なんて大らかなお爺さんなのだ。細かい事は気にしない。でも、受け入れてくれる。だってピコピコハンマーだぞ。あの音だぞ。どうみてもおかしいじゃないか。

 3歳の俺が作ったのだ。なのに、そんな事疑いもしない。

 大きくてかっちょいい。この人が父様に剣を教えていたのだな。

 きっと父様も、この人柄が好きだったのじゃないかな?


「リアはアルによく似ている」


 懐かしそうな眼をして、フリード爺が言った。リア姉の動きを眼で追っている。

 アルとは、俺達の父様アルフォンスの呼び名だ。

 父様がアルフォンス・レーヴェント、母様がクロエリア・レーヴェント。仲の良い夫婦だったそうだ。

 リア姉は見た目も父様似らしくて、レオ兄の方が母様に似ていると聞いた。ニコ兄はリア姉程じゃないけど、どちらかというと父様似。


「ロロは両親どちらの色も貰っていて、どちらにも似ているんだ。でも性格は母上似かな?」


 と、レオ兄が言っていた。

 フリード爺は父様を可愛がっていたのだろう。俺達四人を順に懐かしそうな眼で見る。


「アルとクロエの事は残念だった。だが、四人が無事でいてくれて本当に良かった。事故の事を聞いた時は冷や汗が出たぞ」


 そんな話をしていたのに、フリード爺はウズウズしている。ユーリさんとリア姉の中に自分も入りたいのだ。


「ユーリ! 小手先だけで斬り込もうとするんじゃない!」

「はい!」

「リアは突っ込みすぎだ! もっと相手をよく見るんだ!」

「はい!」


 とうとう口出ししだした。まるで先生だ。いや、師匠だ。父様の師匠だった人なのだ。

 少し父様に触れたような気がした。

 こっちに来てまだ数時間なのに、心が満たされていく。どんどんポカポカして、溢れていく。こんなに温かくなった事がない位なのだ。

 それをどうすれば良いのか分からなくて……どうしよう……俺ってちょっと泣きそうなのだ。


お読みいただき有難うございます!

あと数日でロロ1巻の発売です。お陰様で、昨日は楽天ブックス様で予約ができない状態になりました。ご予約頂いた皆様、有難うございます!

書き下ろしで両親の事に触れています。素敵な挿絵もあります!楽しみにして頂けると嬉しいです!

今日は、その挿絵から泣き虫女神とプンスカしているロロをどうぞ!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
そもそもピコピコハンマーの発想がこっちの世界独自の形ですからね >>女神様 ……絵柄で判断してはいけませんが、ポンコツ臭が漂ってます……ね
泣き虫女神様、可愛い╰(*´︶`*)╯♡それを見て怒っているロロも微笑ましい。٩(^‿^)۶
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