325ー対の剣
余計にあの件が気になってくる。ディさんに調べてもらっている両親の事だ。
「ロロ、難しい顔をしてどうしたの?」
「なんれもないのら」
今考えても仕方がない。それよりも、リア姉の剣なのだ。
対になっている剣なのは分かった。でも、どうして対なのだろう?
それをユーリさんが教えてくれた。この辺境伯家のご先祖様が、実際に使っていた剣なのだそうだ。
実際は2本揃って一つの双剣なのだ。両手に剣を持って戦う人だったらしい。
その双剣が、ユーリさんとリア姉が持っている剣だ。
「とても強い人だったそうだよ。僕はまだ詳しくは教えてもらえないんだけど、それでもこの剣を見れば想像できるだろう?」
「ええ、確かに」
そうなのか? 俺は全く分からない。とても立派な剣だと思うくらいなのだ。
ちょっと気になった事があったから、レオ兄に聞いてみた。
「れおにい、みて」
「え? ロロ、剣をかい?」
「しょうなのら。あのましぇき」
「ああ、気になるの?」
「しょうなのら」
レオ兄の鑑定眼で剣を見てもらった。何故かというと、剣身と剣を持つところの境目にあるガードと呼ばれる部分に魔石が付いている。その魔石がリア姉とユーリさんの剣とでは色が違うのだ。
どうしてなのかな? て、思ったのだ。だって、双剣で一人の人が使うのなら同じ色にしないか?
俺だったらお揃いにするのにな~ってね。
「ロロ、よく気がついたよ」
「れおにい、なぁに?」
「この魔石は魔法攻撃の威力を増強させるんだ」
「「ええッ!?」」
ユーリさんとリア姉が同時に驚いている。あれれ? ユーリさんも知らなかったのか?
「こうして二本揃ったから気付けた事なのかもね。飾りだと思っていたよ」
いやいや、代々この辺境伯家にあった剣なのだろう? 父様が譲り受けるまでは二本揃っていたのじゃないか?
「剣に関して詳しい事は残っていないんだよ。それに剣に魔法を付与するのって、この領地では普通の事なんだ。だからまさか、そんな効果があるなんて思いもしなかったよ」
ほう、そうなのか? それで、具体的にはどうなんだろう?
「れおにい、しょれれ?」
「ん~、魔石の種類が魔法の属性になっているんだ」
リア姉の剣には赤い魔石、ユーリさんの剣には緑の魔石が付いている。
ああ、そっか。炎と風だ。リア姉は炎を使うから丁度良いじゃないか。
「ゆーりしゃんは、かじぇじょくせいまほう?」
「ん? ロロ、なんだって?」
「ユーリさんは風属性魔法を使うのかと聞いているんです」
「ああ、どうして分かったんだ? そうだよ、僕は風属性魔法を剣に付与して戦うんだ」
「やっぱりなのら」
「ロロ、色で分かったんだね」
「しょうなのら」
これは偶然なのだろうか? もしかして父様も火属性魔法を使う人だったのかな? そして、ユーリさんのお父さんは風属性魔法だ。それなら納得できる。
フリード爺が魔石の効果を、知っていたのかどうかは分からないけど。
「それにその魔石は取り外しができるみたいだね」
「「ええッ!?」」
また剣を持っている二人が驚いている。どうした? どうして使っていて気が付かなかったのだ?
あれれ? これって外せるな~なんて思わなかったのかな?
その剣は魔石を入れ替える事で、魔法属性が変更できるんだ。もし炎が苦手な人なら別の属性の魔石を付けると良い。なんて便利なんだ。よく考えられている。
「魔力を流すだろう? そうしたら剣身に彫ってある模様が光るんだ。とっても綺麗なんだよ」
あれれ? リア姉が魔力を流した時って光っていたっけ? ヒュージスライムを討伐した時って魔法を使っていたけど、俺は気付かなかったのだ。
「むむむむ」
「ロロ、今度は何だ?」
「にこにい、りあねえのけん、ひかってた?」
「え? 光ってたか?」
ニコ兄も覚えていないらしい。いつも一緒にいるレオ兄と、持ち主のリア姉は覚えていないのか?
「姉上が魔法を使う時はいつも真っ赤に光っていたよね」
「そうなのよ。なんで光るのかしら? て、思ってたの」
「アハハハ! リアは気付かなかったのか?」
まあ、リア姉はそんな感じなのだ。あら、また光ってるわ。くらいに思っていたのじゃないかな? だってリア姉の性格だもの。
「ロロ、また失礼な事を考えているでしょう?」
「しょ、しょんなことないのら~」
いかん、気が緩んでしまって忘れていたのだ。リア姉は俺の考えている事をよく当てる。気を付けないと。むふふ。
「みんな仲良しだな。会えて嬉しいよ」
キラッキラな笑顔でユーリさんがそう言った。ここの人達はみんな良い人なのだ。
対の剣は実は双剣だった。しかも魔法属性を増幅させる魔石まで付いていた。レオ兄が鑑定眼で見なかったら、分からなかったかも知れない。
凄いのだ。なんだかチートっぽいぞ。リア姉ったら、ヒロインみたいなのだ。いや、ヒロインじゃないな。どっちかというヒーローなのだ。
「ロロ、また何か考えているわね」
「りあねえは、ひーろーなのら」
あ、ついポロッと言ってしまった。
「なんでよぉー! それを言うならヒロインでしょう!?」
「らって、ひろいんじゃないのら」
おっと、またまた言ってしまったのだ。
「ロロー!」
「アハハハ!」
ユーリさんに笑われてしまった。つい言ってしまったものは仕方がない。
そして、リア姉は俺に抱きついてくる。もちろん、手は俺のお腹をプニプニしているのだ。




