320ー辺境伯家の人達
もしかして俺達の父様もこんな感じだったのかな?
「ロロ、父上はもう少し穏やかだよ」
「れおにい、しょうなの?」
こっそりレオ兄が教えてくれた。
どっちにしろ体育会系なのだ。だってリア姉だってそうなのだから。ふふふ。
手をお口にやってクスクスと笑っていると、綺麗で優しそうな夫人が話しかけてくれたのだ。
「遠慮しないでね。ほら、みんな座ってちょうだい。飲み物は何が良いかしら? とっても美味しいぶどうジュースがあるのよ」
「おー」
思わず声を出してしまったのだ。
「ふふふ、可愛いわね。ロロ君ね」
「ろろれしゅ。しゃんしゃいれっす」
短い指を3本立てて、ちょっぴり緊張しながら自己紹介をした。
「まあ、お利口だわ。ロロ君、ぶどうジュースでも良いかしら?」
「ろろれいい」
「ロロ、いいですだろう?」
「あ、にこにい。しょうらった」
「まあ、あなたもお利口なのね」
「ニコラウスです。俺もニコでいいです」
俺達に話し掛けてくれたこの女の人が、辺境伯夫人のコルネリア・インペラートさん。
緩いウエーブのあるブルーブロンドの長い髪に珍しいガーネット色の瞳だ。
体育会系の辺境伯とは違って、とっても優しそうで落ち着いている。
「僕はユリシュト・インペラートだ。ユーリで良いよ。君のその剣はもしかして……」
リア姉の持っている剣に、反応したのが息子さん。
少しだけ癖毛のアッシュシルバーの髪を一つに結んでいて、アメジスト色の瞳がとっても利発そうだ。
リア姉より少し年上かな? それほど体育会系には見えないのだけど、リア姉の剣に興味を持っていたのだ。
リア姉が持っている剣を見せながら、自己紹介をした。
「私は長女のアウレリア・レーヴェントです。この剣は父から譲り受けました」
「やっぱりそうだ。僕が父から譲り受けた剣と対になっているんだ」
「え? そうなんですか?」
「うん、待ってて。持ってくるよ」
「はい、見たいです!」
「まあ、ユーリ。それはまた後で良いわ」
「姉上もだよ。あ、僕は長男のレオナルト・レーヴェントです。お世話になります」
「まあ、みんな本当にお利口さんなのね。ユーリの妹がいるのだけど、リーゼったらお転婆さんなのよ」
その妹さんがリーゼネリア・インペラートさん。今は隣国の帝都の学院の寮に入っているそうだ。
「でも会いたいから帰って来ると、手紙がきたから会えると思うわ」
お転婆さんなのか。リア姉と一緒なのだ。
「ロロ、なにかしら?」
「りあねえもおてんばと、おもってないのら」
「思ってるじゃないー」
あ、しまったのだ。ちょっぴり緊張して、つい喋ってしまったのだ。
それから辺境伯夫人は、後ろに座っているマリー達の方へ行ってマリーの手を取った。
「貴方がマリーね。よく一緒にいてくれたわ」
「はい、旦那様や奥様にはお返しできない程の御恩がありますから。何としても私がお世話しないとと思ってました」
「貴方達も大変だったわね。ゆっくりしてちょうだいな」
「まあまあ、有難うございます」
今更なのだけど、こんな綺麗なお部屋にみんな付いて来たのだけど良いのかな?
ピカさんは良い。でも親コッコちゃん2羽も、当たり前の様に入ってきたのだ。
それにリーダー率いる子コッコちゃん達とプチゴーレム達もいるから、とっても賑やかなのだ。
そしてクリスティー先生が俺の目の前にしゃがんで聞いてきた。
「ロロ、ピカはロロの神獣なのですね」
「え……」
どうするのだ!? いきなりバレバーレなのだ! ディさん、どうしよう!?
ちょっと焦ってしまって、眼が泳いでしまった。
「し、しららいのら~」
うん、このまま誤魔化そう。そうしよう。
「アハハハ! ロロ、先輩も精霊眼を持っているんだ。隠せないよ」
そうなのか!? もしかしてエルフさんは、精霊眼が標準装備なのか!?
「そんな訳ないじゃない! アハハハ!」
「ディ、笑っていないで説明してください」
「アハハハ、はいはい」
クリスティー先生が『神獣』と言ったものだから、みんなに注目されちゃった俺とピカさん。
そんなに見ないでほしいのだ。緊張するではないか。ピカさんは平然として伏せている。度胸が良いね。
ちょっとジュースを飲んで落ち着こう。俺はコップを両手で持って、ストローでチュゥーとぶどうジュースを飲む。
「これ! めっちゃおいしいのら!」
「ロロ、そうなのか?」
「うん、にこにい。のんれ!」
「おう」
こんなに美味しいぶどうジュースを飲んだ事がないのだ。しかもぶどうジュースなのに、紫ではないのだ。淡いエメラルドグリーンだ。これってあれか? シャインマスカット的なぶどうなのか!?
「うわ、マジで美味い!」
「ねー!」
ニコ兄と二人で、ぶどうジュースに感動してしまった。するとそれを聞きつけたチロさんだ。
「キュルン」
「ちろものむ?」
「キュル」
目の前でクリスティー先生がじっと見て待っていた。えっとぉ……しまったのだ。チロまで出てきてしまった。もう俺はいっぱいいっぱいなのだ。
「でぃしゃん、おねがいなのら」
「うん、僕が説明するね」
ディさんが、ピカとチロは神獣だという事とコッコちゃん達をテイムしている事、プチゴーレムは俺が作った事を説明してくれた。




