319ークリスティー先生登場
大人の男の人に、抱き締められるなんてあまりない。ディさんはよく抱きついてくるけど別物だ。
大きくて太くて力強い。少しお日様の様な匂いがする。父様もこんな感じなのかと思ったのだ。
「心配していたのだぁッ! どうしているのかと気になっていたのだッ!」
逞しい両腕の中に俺達を抱きしめながら、バッシバッシと叩いている。俺はドンドンと伝わる振動で、ちょっぴりふらついてしまったのだ。気持ちはとっても伝わるのだけど。
その直ぐ側には夫人らしき人がいた。優しい眼で俺達を見ている。ホッとした様な、少し悲しい様な複雑な眼だったのだ。
「何もできなくて、ごめんなさいね。もっと早くに知っていれば……」
「有難うございます。父がお世話になっていたと聞いていました」
冷静なのはレオ兄なのだ。
俺達はただ抱きしめられて、その場で立っているのが精一杯だった。
「お世話なんて……いつも一緒に鍛練されていたのよ。あなた、いつまでもそうしていたら子供達が動けませんわよ」
「お、おう。すまん」
グスッと鼻水を啜っている。熱血漢なのだろうか。やっとゴツイ腕から開放してくれた。
その後ろから、綺麗なエルフさんがヒョイとお顔を出した。
ディさんよりは落ち着いた感じを受ける。そのエルフさんが俺に向かって歩いてきた。
「君がロロ君ですか?」
そう言いながら、いきなり俺を抱っこしたのだ。ちょっぴり驚いてしまったけど、俺は練習していたみたいに自己紹介をするのだ。
「ボクはろろ」
「ふふふ、可愛いですねー。私はクリスティー先生でっす」
「く、く、くりしゅてぃーしぇんしぇい」
「はい、そうですよ」
「アハハハ。先輩、ロロが怖がっているよ」
「おや、怖いですか?」
「こ、こ、こわくないのら~」
「はい、お利口でっす」
ニッコリとしたエルフさん。クリスティー先生というそうだ。でもそれって、俺にはとっても呼び難いのだ。長すぎるぞ。
「しぇんしぇい」
「クリスティー先生でっす」
「く、くりしゅてぃーしぇんしぇい」
いかん、舌を噛んじゃいそうだ。
「おや、まだ言い難いですか? ならロロ君だけ先生でも良いです。あなた達を待っていましたよ。楽しみにしていたのでっす」
クリスティー先生が、みんなを順に見ていた。
「おや、これはまたびっくりでっす!」
そうだ、コッコちゃん達を見て少し眉を動かしたと思ったら、次に大きく眼を見開いた。プチゴーレム達を見て驚いているのだ。だけど、それだけでは済まなかった。
「ええッ! なんですか!? ロロ君ですか!?」
「ろろなのら」
「はい、分かってまっす」
「ろろれいいのら。れね、りあねえ、れおにい、にこにい、まりー、えるざ、ゆーりあ、どるふじいなのだ。このこは、ぴか。しょれと、ちろ」
それにリーダー達とプチゴーレムも、一気に紹介したのだ。その間クリスティー先生は、うんうんと頷きながら、ええッ!? とか言ったりしていた。
「ロロ君、いえ、ロロ。ピカはロロですか?」
意味が分からないのだ。ディさん、ヘルプなのだぞ。
「先輩、取り敢えず落ち着きましょう」
「ディさん、私も驚いているぞ! フォリコッコを譲って貰えるとは聞いていたが、2羽も良いのか!?」
「ええ、この子達はお利口だから、卵を産んだら孵して育てると良いですよ」
「な、なんとぉッ!?」
もう、大きな声の人ばかりなのだ。それよりも良い加減に下ろしてほしいのだよ、クリスティー先生。
抱っこしながら俺のお腹をプニプニするのはやめてほしいのだ。
やっとお邸の中に移動した。俺はずっとクリスティー先生に抱っこされたままなのだけど。
広い立派な部屋に案内されて、他の人達も紹介してもらえたのだ。
俺達を一番最初に大きな声で出迎えてくれたのが、前辺境伯フリードリヒ・インペラートさん。その弟のランベルト・インペラートさんと一緒に、元気にこの領地を東西南北どこへでも走って魔獣や魔物を討伐しているお爺ちゃんだ。
二人共もうお爺ちゃんなのに、筋肉モリモリでとっても強そうだ。
兄のお爺ちゃんの方はアッシュシルバーの短髪でアメジスト色の瞳が鋭い。とっても強そうでモロ体育会系だと分かるお爺ちゃん。
弟のお爺ちゃんの方はアッシュシルバーの髪を一つに結んでいて、同じアメジスト色の瞳だけど優しそうなのだ。
「よく来たね、楽しみにしていたんだ」
俺にそう言いながら、優しく髪を撫でてくれた。このお爺ちゃんは声が大きくない。
二人共、ドルフ爺とは若い頃から交流があるらしい。
会って直ぐに肩を組んで、ワッハッハと大きな声で笑っていた。何がそんなに可笑しいのか、俺には全く分からない。
その息子の現辺境伯のイシュト・インペラートさん。兄のお爺ちゃんフリードリヒさんと雰囲気も見た目もよく似ている。
同じようにアッシュシルバーの髪を短くしていて、アメジストの様な瞳から力強さを感じる。やっぱ体育会系なのだ。
「テオ、大きくなったな! よく見つけ出してくれた! よくやったぞ!」
そう言いながら、もう大きなテオさんの頭をガシガシと撫でていた。この人が俺達の父と師弟兄弟だという人なのだ。
お読みいただき有難うございます!
ご存知の方もおられるでしょうが、クリスティー先生の登場でっす。もう予想されていた方もいらっしゃいましたね〜^^;
クリスティー先生は『おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜』の登場人物でっす。書籍化されていないので、登場可能でした。
なんだか懐かしいですね〜
感想や誤字報告を有難うございます。私てっきりフィーネとマティはCランクだと思い込んでいました。^^;
有難うございます。
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宜しくお願いします。
今日も当然ロロの書影を。他のイラストも公開可能になったらこちらでアップしますね〜




