307ーお土産は何にしよう
「こころがぽかぽかしゅるのら」
「ふふふ、ロロったら」
「そうだね」
「れもなぁ~」
「ロロ、何だ?」
「らって、にこにい。ボクははじめてのひとが、ちょっぴりこわいのら」
「ああ、そうだったな。ロロは少し人見知りするもんな」
「にこにい、しょうなのら」
そうなのだよ。これでも俺は、初めて会う大人の人がちょっぴり怖いのだ。
リア姉位の歳の人ならまだ大丈夫なのだ。そういえば、ディさんも怖くなかった。それよりも、なんて綺麗な人なんだろうと思ったのだ。
「大丈夫よ、私達のお祖父様とお祖母様だもの」
「うん、りあねえ」
「そうだよ、みんな一緒だしね」
「おう、そうだぞ」
レオ兄やニコ兄も優しい。俺がこの家に、来たばかりの頃の事を覚えているのだ。
マリーのスカートの裾を握って離さなかった頃の事を。
「さあさあ、夕食にしましょうね」
「うん、まりー」
今日もみんな揃っての夕ご飯だ。俺達兄弟とマリー達だけだったのが、その内ディさんが一緒に食べるようになって、コッコちゃん達が増えて、今はテオさんとジルさんが一緒だ。
賑やかなのだ。ふふふ。
今夜のお肉は、リア姉が狩ってきた兎のお肉だ。
兎のお肉は俺だけじゃなくて、みんな好きだ。ニコ兄も美味しそうなお顔をして食べている。
今日はトロトロチーズソースなのだ。チーズにミルクを混ぜて作る、とってもまろやかで美味しい。肉汁と混ざったら、これまた美味しい。
お肉をお口いっぱいに頬張っていると、レオ兄が思い出した様に言った。
「テオさん、僕達何かお土産を持って行く方が良いですか?」
「レオ、何言ってんだ。そんなのいらないぞ」
「そうですよ、レオ君。みんな元気なのが一番のお土産です」
「でも、お世話かけちゃうと思うわ」
「リア、遠慮する事ないんだ。本当はリア達を、引き取りたいと思っているんだから」
「そうですよ」
とは言っても。何か良いお土産があったらなぁ。俺は腕を組んで考える。
どうせお土産を持って行くなら、喜んで貰えるものが良いのだ。
「むむむむ」
「ロロ、何考えてんだ?」
「おみやげなのら。にこにいがしょだてた、おやしゃいもってく?」
「おう、それもいいな」
「ニコが育てたお野菜はとっても美味しいからね!」
特盛サラダを食べながらディさんが言った。ディさんなら、迷わずお野菜で決まりなのだけど。
「れもなぁ~」
「なんだよ」
「らってにこにい、おじいしゃまも、おやしゃいしょだててたらなぁ」
「ああ、そっか」
「じゃあ私が兎を狩ってくるわ!」
「姉上、それは違うよ」
「え? そう?」
「アハハハ! だからいらないって!」
でもこんな事を考えるのも楽しい。ウキウキしちゃうのだ。
モグモグと食べながら考える。
「ロロ、こぼしているぞ」
「あ、にこにい」
おっと、考え事をしながら食べると駄目なのだ。
「ロロの刺繍はどうかな?」
「でぃしゃん、しょお?」
「うん、僕なら凄く嬉しいな」
ディさんには俺の大作を渡したばかりじゃないか。
それに刺繍は時間が掛かるから、今から用意しないと。
「お祖母様は刺繍がお上手だぞ」
「しょうなの?」
「ああ。ベッドカバーとか作って下さった」
「ひょぉー! おおきいのら!」
「テオ様、あれは刺繍ではなくて、パッチワークですよ」
「え? そうだったか?」
パッチワークか。それも良いな。今まで作った事がないのだけど。
「まりー、れきる?」
「パッチワークですか? できますよ。やってみますか?」
「うん、おしえてほしいのら」
それも楽しそうだ。明日からマリーに教わろう。
「だからロロ。お土産なんていらないからな」
「ておしゃん、ちゅくってみたいのら」
「ロロは器用だからね。またどんな付与がされるのか楽しみだ」
またまたディさん。まさかパッチワークで付与はないだろう?
「ロロ、だって同じ様に一針ずつ縫うんだよ。その時にロロの思った事がきっと付与になるよ」
あー、そうなのか? パッチワークだと持ち歩くものでもない。なら疲れが取れるようにとか思って縫おうかな。
「ふむふむ」
「ね、そう思うだろう?」
「うん」
それも良いなと思うのだ。テオさんが言っていたベッドカバーに良いよね。
「ディさん、付与って何ですか?」
「あれ? ジルは知らなかったかな? ロロは刺繍で付与するんだ。一針ずつ縫う時にね」
「ええッ!?」
「ロロ君、そうなの?」
「うん、なんれかね~」
お守りみたいな物なのだ。でも、ちょっぴり良い感じだろう?
「縫って付与するなんて聞いた事ないですよ?」
「ああ、聞いた事ない。魔石にじゃないんだろう?」
「ロロはまだちびっ子だから、魔石に一気に付与するのは無理があるんだ。でも、一針ずつ縫うならできる。ね、リア、レオ」
「はい、僕と姉上のリボンです」
「俺が毎日持っているハンカチもだ」
ニコ兄がポッケからハンカチを出して見せた。
ニコ兄は髪が短いから、おリボンはしていない。それより、毎日畑に出て汗をかくからと思ってハンカチにしているのだ。もちろん、ユーリアも持っている。マリーとエルザもだ。
少し前に刺繍した物だから、ちょっと嫌な感じがするって分かる程度の付与なのだけど。




