299ーお見通し
俺はそんな事は全然知らなかったから、ディさんに教えて貰ったのだ。
このルルンデの街があるフォーゲル領には森がある。そこには魔獣が生息しているし、ダンジョンもあるから魔物がいる。それを討伐する冒険者が大勢滞在している。
冒険者達が毎日討伐してくれるから、街まで魔獣や魔物が出て来ない。
それは俺も知っているのだ。ルルンデの街は冒険者が多いのだと、お墓参りに行った時に感じたもの。実際に森に行って、魔獣を見た事だってある。お墓参りに行く途中でも、魔獣は出てきた。
それでも、辺境伯領とは比べ物にならないらしい。
辺境伯領には、ここよりももっと広大な森があるのだそうだ。しかも王都に続いている主要な街道が森の脇を通っている。
森にはもちろん魔獣が生息している。その森の奥にはダンジョンだってある。
ずっと魔獣や魔物と戦ってきた辺境伯領というのは、とっても厳しい環境なのだそうだ。
でも代々の辺境伯が領主隊を組織して、がっちりと守っている事と堅牢な防御壁がある。そして今は前辺境伯兄弟がフットワークも軽く、領内を魔獣討伐に走っているという。
そんな領地だから辺境伯家は皆強い。前辺境伯なんて『剣聖』とまで言われていた人らしい。
「確か父が師と仰いだ方です」
「おや、そうなの?」
「はい、今の辺境伯様と父は師弟兄弟だと聞きました」
「そうよ、私が持っている剣を頂いたと聞いています」
「ああ、あの爺さんならやっていそうだ。アハハハ」
そんなに凄い人なのか。でもそこで父様と母様は出会ったのだよな?
「でぃしゃん、へん……へんきょ……」
「辺境伯領かな?」
「しょう、しょれ。こわいところ?」
「そんな事ないよ。この国の西端になるんだけどね、ここより気候が穏やかで良い領地だよ。広大な麦畑があるんだ」
「へえー。みてまわれる?」
「うん、きっと喜んで案内してくれるよ」
「しょっか」
なら、楽しみなのだ。魔獣や魔物が出るから、気軽にお外に出られないのかと思ったのだ。
「そうだ、兄上の子がロロと同い歳だ」
「ておしゃん、しょうなの?」
「ああ、きっと仲良くなれるさ」
「うん、たのしみなのら」
この辺りには同じ年ごろのちびっ子っていないからな。まあ、俺は中身は成人しているからそれは別に良いんだけど。でも、同年代のちびっ子と遊ぶのも楽しい。
手先が器用だったり、根気よく何かをしたりする事は好きだ。これは前世からそうだ。
そんなところもあるのだけど、どうも今の年齢に引っ張られている。
ちびっ子と単純な遊びをするのも楽しいのだ。
「ああ、ロロ。もう限界じゃないか?」
「れおにい、もっとおはなしをききたいのら」
とは言うものの、俺はお腹が一杯になって眠気が襲って来た。瞼が重くて仕方がない。
「ロロ、また明日ね」
「うん、でぃしゃん」
レオ兄に抱っこしてもらって、手をフリフリする。
「おやしゅみなしゃい」
「おやすみ」
「ロロ、また明日な」
賑やかになったのだ。これはテオさんとジルさんが帰っちゃったら寂しいだろうな。と思いながら俺は眠った。
◇◇◇
「お久しぶりぶりなのですぅーッ!」
いつもの様に両手を広げて登場の女神様だ。また、お久しぶりぶりなんて言っている。
俺に抱きついてこようとするから、これまたいつもの様にヒョイッと避けておいた。
すると、またまたいつもの様に綺麗なお顔からスライディングだ。
「あぶぶぶぶぅーッ!」
ほら、一面に咲いているお花の花弁が散っているじゃないか。お花が可哀そうだ。
女神はというとダメージはないらしく、すっくと立ち上がってこっちへやってくる。
ピカピカの長い髪に花弁が付いているぞ。ああ、またお鼻の頭が赤くなっている。今日は額も赤いぞ。
「行くのですね」
「うん、しょうなのら」
「あのエルフが送ってくれるのなら安心です」
「しょうなのら。たのしみなのら」
「お祖父様とお祖母様が待ってますよ」
「うん」
なんだ、何もかもお見通しって事だね。まあ、女神なのだから。
それにしても、今日は何なのだ? また何かあるのか?
「エルフがとっても良い杖を作ってくれましたッ!」
「しょうしょう、しゅぺしゃるなのら」
「本当にスペシャルなのですよ。ユニコーンの角にフェニックスの羽根なんて、普通は手に入りません」
「しょうなの? けろでぃしゃんが、ふちゅうにとんれるっていってたのら」
「普通には飛んでませんね。エルフの国は特別なので、時々飛んでいますが」
「えー、もうもらっちゃった。ろうしよう」
「貰っておけば良いのです。あのエルフの気持ちなのです」
「うん、しょうしゅる。らいじにしゅるのら」
「はい、良い子ですね」
そうして落ち着いて普通に喋っていれば良いのだ。
「ロロが刺繍したスカーフも見事なのです! 私のコレにもしてほしいのです」
と、言って腕に掛けている羽衣の様な薄いものを手にする。
どうやってするんだよ。まさか女神様に頼まれたなんて言えないだろう? それにさ。
「しょれはきれいらから、しょのままれいいのら」
「ギャンかわ!」
また変な事を言いながら仰け反っている。どこでそんな言葉を覚えてきたのだ?
それは止める方が良いぞ。
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宜しくお願いします。
ロロの校正もあと少しです!その後はSS!
発売記念のSSも書きたい。
何かご希望があれば教えて下さい!^^;
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