298ー誰が強い?
「ボクのちゅえと、ピコピコハンマーもっていくのら!」
「おう、俺も持って行くぞ!」
「もう、二人共ピクニックじゃないのよ」
「りあねえ、らからなのら! もっていくのら!」
「おう!」
「ばしこーんしゅるのら!」
もう俺はノリノリだ。お肉を食べるのも忘れて、一生懸命喋っていたのだ。
「ロロ、分かったから食べなさい」
「あい、りあねえ」
リア姉は分かっていないなぁ。ロマンなのだよ、これは男のロマンなのだ!
だって転移なのだよ。それにお祖父様やお祖母様に会えるのだよ。思わずフォークを持つ手を掲げてしまった。
「これ、ロロ。お行儀悪いわ」
「あい、ごめんなしゃい」
「アハハハ!」
叱られちゃった。でもこのワクワクを抑えられないのだ。
だからもっと知りたいぞぅ。
「でぃしゃん、でぃしゃん、てんいってろんなかんじなのら?」
「ロロは一度した事あるんだけどね。意識がなかったからさぁ」
「ああー」
一気にテンションが下がってしまった。だだ下がりだ。分かったのだ、あの時だ。
俺が攫われて、ディさんが助けに来てくれた時だ。あの時俺を抱っこして転移したのだろう。
もう、折角テンション爆上がりだったのに。
いいや、俺一人だけウキウキしていたから大人しく食べよう。
「うまうま」
「な、うまいな」
「あれ? ロロ、どうしたの? テンション下がっちゃった?」
「うん、でぃしゃん」
「おや、ごめんね」
「いいのらー」
うん、食べよう。出発はまだ先だろうし。俺だけワクワクウキウキしていてもさ、寂しいし空しい。
「ロロ、昨夜は俺がそうだった」
「にこにい、しょう?」
「ああ、だって転移だからな」
「けろ、にこにいはいちろしてるのら」
「おう、あん時だろう?」
ピカを狙って男がやって来たときだ。ニコ兄とユーリアが、ディさんと一緒に転移で戻って来た事があった。
「あん時は何が何だか全然分からなくてさ、あっという間だったんだ」
「しょうなの?」
「おう、だから今度はちゃんと覚えておこうと思ってさ」
「ニコ、今度も一瞬だよ」
「ディさん、けど今回は遠いぞ?」
「うん、距離は関係ないよ」
「すげーな! ディさんはやっぱスゲー!」
「しゅごいのら!」
そうそう、ニコ兄は一緒に盛り上がってくれないと。俺一人だと空しいだろう? 良い感じなのだ。
俺とニコ兄はもうその気になっているのだけど、でもまだ本決まりではない。
ディさんが辺境伯に出したお手紙。お邪魔しても良いかな? て、お伺いをたてているのだ。それと、テオさんがもう一度家にお手紙を出している。
もしかしたら辺境伯のお家までディさんが送ってくれる事になるかも知れないから、そこで待ち合わせをする事になるかもってね。
どっちもオッケーだったら、テオさんの家の人が辺境伯のお家に来る頃に合わせて俺達が行く事になる。向こうは転移なんてできないのだから。
でも俺はちょっと早く行って、辺境伯領を観光したいのだ。
「お祖父様は、自分が迎えに行くと言うだろうなー」
「そうですね、じっとしていらっしゃらないでしょうね」
「だろう? でももうお年だからな」
「アハハハ、まだまだお元気ですよ。テオ様よりお強いじゃないですか」
「「ええーッ!」」
そのジルさんが何気なく言った言葉に、ニコ兄と俺は一緒に驚いたのだ。そうそう、こんな感じでニコ兄は一緒に反応してくれないと俺は寂しいのだ。
「ジル、それを言っては駄目だ」
「え? そうですか? でも直ぐに分かる事ですよ?」
「そうだけどさぁー」
あらら、それはどういう事なのかな? ハッキリしてもらおうじゃないか。
「えっちょぉ、えっちょ……」
「ロロ、言いたい事は分かるぞ。俺が聞くよ」
「にこにい、おねがいなのら」
俺がモタモタしているから、ニコ兄が代わりに聞いてくれたのだ。ニコ兄も同じ事を思っていたのだろう。
「テオさんとお祖父様と、伯父様だと誰が一番強いんだ?」
「あー、そうだなぁ。今はもう父上かな?」
伯父様なのか。ジルさんも頷いているから確かにそうなのだろう。なら……と、ニコ兄を見る。
「じゃあ、その次はお祖父様なんだよな?」
「そうなるな」
「なんら、ておしゃんがびり?」
「ロロ、ビリとか言うな」
あ、しまったのだ。またお口が勝手に喋ったのだ。今日は何故か俺のお口はお喋りだ。
「わふわふ」
「ぴか、しょうなの?」
「わふん」
「へえー」
そうなのか、ピカさんはそう思うのか。
「え? ロロ、ピカは何て言っているんだ?」
「もうしゅこしがんばったら、びぃらんくもゆめじゃないって」
「夢とか言うな、ピカ!」
「わふん」
「らって、ほんとうのことらっていってるのら」
「アハハハ、テオ様頑張りましょうね」
「あー、分かってるさ。ちょっと今は鈍っているんだって」
「アハハハ!」
とうとうレオ兄も笑い出した。
それまでサラダを食べる事に集中していたディさんが、思い出したように言った。
「強いと言えば、辺境伯も強いよ。前辺境伯の爺さんもだけど、今の辺境伯もかなり強い。僕が見てもそう思うからね。たしか、あの親子はAランクだったんじゃないかな? あ、そうそう、息子がいたんだ。テオと同い年位じゃないかな?」
「ディさん、その息子のランクは!?」
「さあ? でもきっと強いよ。あの辺境伯家だもの」
「ええー」
なぜなら辺境伯家だかららしい。何故に?




