295ー大ピンチ
「今はもう先頭を走って、仕切っているよー」
「ええー、しゅごいのら」
「でしょう? それにね、本当にお利口さんなんだ」
ほうほう、フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんは一緒にいるけど統率されている訳ではない。
だから時々、三羽が三羽とも別の方向へ向かって走り出しちゃったりする事もあったのだ。
三羽が別の方向に行きかけたらいつもニコ兄が、そっちじゃないぞと呼び寄せたりしていたのだ。
その所為もあって、ニコ兄に一番懐いている。
そのニコ兄の代わりをリーダーがしているそうなのだ。
「ひょぉー、しゅごいのら。りーだーなのら」
「そうだろう? あの子は本当にお利口だよ。だってまだ生まれて数日なのにね」
「うんうん」
「やっぱ、レオの魔力だよねー」
んん? 引っ掛かったのだ。俺は? 俺の魔力は? 俺も魔力を流したぞ。
「ん? ああ、そうだったね。ロロも手伝ったんだった」
ええー、俺ってついでなの? まあ良いけども。
「でぃしゃん、まっくろくろのまま?」
「そうだね、まだ真っ黒だよ」
「しょっか」
「白くなるかな?」
「ねー、なるのかなぁ」
お昼の準備をしながらそんな話をしていた。それを聞いていたのだろう、コッコちゃんの親達。
「コッコ」
「クック」
「コケッ」
ふむふむ、そうだね。大成功だと話している。
それにしても、レオ兄の魔力をなんてよく思いついたものなのだ。いや、誰が考えてもレオ兄だと思うか。
「さあさあ、食べましょうね」
「あい、いたらきましゅ」
「いただきまーす」
ディさんとマリーと三人で食べるお昼。いつものお昼なのだ。
ディさんが来るまではマリーと二人だった。二人だと、どうしても朝の残り物で適当に済ませちゃったりしていた。
でも、ディさんも一緒に食べるようになってからは、とってもちゃんとしたお昼ご飯になった。同じ朝の残りでも、一手間掛けるようになったのだ。
なにより、サラダが必ず付いてくる。しかも大盛りだ。もう慣れたけど。
「んん~、やっぱ採りたてのお野菜は美味しいねー」
なんて、ほっぺに手をやりながらディさんは幸せそうな笑顔で食べている。もちろんディさんは特盛なのだ。
それと、朝の残りをサンドしたマリー特製のサンドイッチ。
コッコちゃんの卵を挟んだサンドイッチもある。とっても美味しいけど、とっても大きい。
俺は食べきれないから、いつも半分切ってマリーに食べてもらっている。
なら、最初から半分の大きさで出せば良いじゃないかと思うだろう?
マリーは大雑把だ。マリーが作るサンドイッチはいつもビッグサイズなのだ。
そんな平和な一日が過ぎ、その日もそろそろリア姉達が帰ってくる時間なのだ。
ニコ兄はもう帰っていて、一緒に庭先に出て外を見ている。
そろそろ帰ってくるかな? と、待っているのだ。そんな俺達の視界の隅に動くものがあった。
「あ……ロロ」
「うん、にこにい」
ニコ兄とお顔を見合わせる。
二人でバタバタと家に入り、ピコピコハンマーを手に持つ。
「よしッ! ロロ、行くぞ!」
「おー!」
またバタバタと二人で外に出る。
「ニコ坊ちゃま、ロロ坊ちゃま、今日は晩ご飯に使いたいんですよ!」
「おう、マリー! 分かったぞ!」
「わかったのら!」
ほぉ~ら、マリーももう分かっていて、今日は食べると言っている。
ニコ兄と池までダッシュだ。と、いっても俺は全然速くないのだけど。
「ロロ、そこだ!」
「うん! たぁッ!」
――キュポン!
「こっちもだ! とぉッ!」
――ボボーン!
「えいッ!」
――キュポポン!
「よし! いいぞ!」
「どぉーるぅーふぅーじぃー!」
俺は大きな声で、ドルフ爺を呼ぶ。
なんだかこれも、日常になってしまったのだ。ドルフ爺を呼ばない日がないぞ。
「おう! 出たか!?」
「ドルフ爺、今日は食べるってマリーが言ってるぞ」
「おう、そうか」
ドルフ爺が即座にマンドラゴラをズボッと抜き、持っていた鉈でグサッとぶっ刺した。
今日の収穫はマンドラゴラ三頭だ。え? 『頭』で良いのか? 魔物だから『頭』なのか?
「ニコ、ロロ! ただいまー!」
「りあねえー!」
リア姉が走ってきた。この流れだと、ギュッて抱きしめられる感じなのだ。
「またマンドラゴラだったの?」
そう言いながら、やっぱ予想通りギュッて抱きしめられた。もれなくほっぺにスリスリと、お腹をもみもみが付いてくる。
「りあねえ、やめれ」
「いいじゃないー」
「しゅりしゅりと、もみもみはやめれ」
「もう、ロロったらぁ」
はいはい。それよりも、みんな帰って来た。
「れおにい、ておしゃん、じるしゃん、おかえり」
「ただいま、また殴っていたのか」
「しょうなのら」
「お、よく見たらニコのピコピコハンマーは飾りが違うんだな」
「おう、そうなんだぜ。かっちょいいだろう?」
「アハハハ、そうだな」
「ニコ君のもロロ君が作ったのですか?」
「そうだぞ」
平和なのだ。なんだか家族が増えたみたいで、ちょっぴりウキウキするのだ。
そんな平和でほんわかした空気を、俺自身が壊してしまった。
何も考えず、つい口に出してしまったのだ。
「りあねえより、れおにいのほうがちゅよい?」
「え……?」
途端に場の空気がピシリと凍りついてしまったのだ。リア姉のお顔が怖い。
「ロロ、誰がそんな事を言ってたんだ?」
「え……れおにい、えっちょぉ」
なんだか言えない雰囲気なのだ。




