293ー衝撃の事実
「ロロ、ベッドに行こう」
「うん、れおにい」
両手を出してレオ兄に抱っこしてもらい2階へ。頭にチロを乗せたピカが後を付いてくる。
「おやしゅみ〜」
と、手をフリフリする。
「ロロ、また明日遊ぼうな」
テオさんが優しい笑顔で答えてくれた。
今日からテオさんとジルさんがお泊まりなのだ。ふふふ、こんなお客様がいるのって、ちょっぴり楽しい。
俺は早々にお休みだけど、下ではテオさん達が話していた。
ディさんも少し遅くまでいたらしい。
翌日、リア姉やレオ兄と一緒にテオさんとジルさんもギルドに出掛けて行った。一緒にクエストを受けるらしい。
そうそう、昨日お泊まり初日の日に、テオさんとジルさんの武器を初めて見たのだ。
テオさんはリア姉の剣よりまだ少し大きい剣を持っている。
同じロングソードと呼ばれる物らしいのだけど、テオさんのはまだ大きい。
「テオさんは力があるのよ。あの腕の筋肉を見れば分かるわ。凄く鍛えているんだわ」
と、リア姉が褒めていた。リア姉は女の子だけど大きな剣を振るう。俺はそれも凄いと思う。華奢なリア姉にロングソード、そのギャップも良いのだ。
ジルさんは、リア姉と同じようなロングソードといつも背中に弓を背負っている。
弓といえばディさんなのだ。
「なかなか良い弓だね〜」
「はい、大旦那様に頂いたのです」
「へえー、弓を分かっている人だね」
「ご本人は使われないのですが、色々調べて下さったらしいです」
「ジルの為になんだね。良い人だ」
「はい、有難いです」
ほうほう、なるほど。
うちにも弓があるのだよ。トコトコと家に戻り、自分の小さな弓を持ってくる。
「ボクの」
どうだ? と、前に出す。
「ロロ君の弓なの?」
「しょうなのら。れおにいと、にこにいとおしょろなのら」
ふふふん、自慢なのだよ。どう? 手に取って見ても良いよ。と、ジルさんに手渡す。
「もしかしてこれは……ララマニの木ですか?」
「しららーい」
「アハハハ!」
またまたディさんが笑っている。
笑ってないで説明して欲しいのだ。
「そうだよ、レオが持っている弓もララマニの木でできているんだ。レオが採取してきたんだよ」
「自分でですか!? 森の奥にしか生えていないと聞いています」
「そうだね、リアとレオはランクで言えばCランクなんだけど、今の実力はそれ以上だと思うよ。他の冒険者と共闘だったけど、あのブラックウルフを難なく倒していたからね」
「テオ様」
「お、おう」
「頑張りましょう」
「お、おう」
テオさんが、ジルさんの圧に押されている。ジルさんの目がとっても真剣なのだ。
俺が思っている以上に、どうやらリア姉とレオ兄は強くなっているらしい。
「経験値の差だ。リアとレオは毎日討伐に出ている。領地でもヒュージスライムを討伐したそうだしね」
「ヒュージですか!?」
「僕は見た事もないぞ」
そうそう、ピンク色の湖で、確かにとっても大きなスライムを退治したのだ。
「だからあの二人は動じないんだ。いつでも冷静に対処する。それは凄い事だ」
「え、リアって何歳だったっけ?」
「テオ様、17歳ですよ。テオ様より2歳下です。レオ君は15歳ですから4歳下になりますね」
「マジかよぉ」
ふふふん、マジなのだ。
テオさんの太腿を、パシパシと叩く。
「ん? ロロ何だ?」
「がんばるのら」
「お、おう」
「ぶふふッ」
あれれ? でもジルさんはBランクだと言ってなかったっけ? と、頭をコテンと傾けてジルさんを見る。
「ロロ君、どうしました?」
「じるしゃんは、びぃらんく?」
「はい、そうですよ」
「りあねえと、れおにいよりちゅよい?」
「さあ、どうでしょうね」
ふむふむ。よく似た感じなのだろうと言う事にしておくのだ。
でもやっぱディさんだ。と、立っているだけで綺麗なディさんをジッと見る。
「ん? ロロ、何? 僕?」
「しょうなのら。でぃしゃんは、えしゅえしゅ」
「アハハハ。そうだね、僕はSSランクだ」
「ロロ、ディさんは特別だからな。比べたら駄目だ」
なんて話をしていたのだ。今日はリア姉やレオ兄と一緒に、テオさんとジルさんもクエストを受けるらしいから、4人の実力がはっきりするだろう。
と、腕を組んで思い出していたのだ。庭先で、ピカに凭れながら。
「あらあら、ロロちゃん。どうしたの?」
一緒に日向ぼっこしている、セルマ婆さんだ。
「だれがちゅよいかと、おもったのら」
「誰がってディさんでしょう?」
ディさんが強いのは別格だから置いといて、4人なのだ。
「そうね〜、よく似た感じかしら〜。ドルフ爺の方が強いかもね〜」
んんん!? セルマ婆さん、とんでもない事を言い出したのだ。
どうしてここに、ドルフ爺が出てくるのだ?
「あら、ロロちゃんは知らないかしら? もう更新していないけど、ドルフ爺はBランクだったのよ〜」
「え……」
な、な、なんですとぉ!?
ここ最近で一番の衝撃の事実なのだ。
「ふふふ〜、だって昔は毎日森に採取に行っていたもの。畑もしていたから、体力はあるのよ〜」
いやいや、体力の問題ではないのだ。
だからか? だからこその、あの走りなのか!? 俺が呼んだら直ぐに飛んで来てくれる。
あの走りはそうなのか? いや、鉈か!? 鉈なのか? マンドラゴラをぶっ刺す時のあの鉈捌きなのか!?
俺は全然知らなかったのだ。




