292ー観察眼ときた
「にこにい、でぃしゃん、どるふじい、わかんないのら」
「ロロ、マンドラゴラがこの土に入りに来るだろう?」
「うん、らから、ばしこーんって」
「だからな、考えたんだよ」
ニコ兄ったら凄いのだ。いつの間にそんなに賢くなっていたのだと俺は驚いた。
「ロロ、失礼だな」
「あい」
ニコ兄の考えはこうだ。
この土がマンドラゴラにとって特別なのだろうと。それは俺でも分かる。だって毎日ここを目指してやって来るのだから。
だが、そこからなのだ。どうして特別気に入っているのか?
この池は、レオ兄とニコ兄が土属性魔法を使って掘った。池の周りにある土も、掘った時に出た土だ。
だからだ。ニコ兄はそこからまた考えた。
ひょっとして、マンドラゴラが気に入る土っていうのは魔力を多く含んだ土ではないかと。
この池の周りの土は、レオ兄とニコ兄が魔法で掘って移動させた土だ。もしかしたら、余所の土より魔力を多く含んでいるのではないか?
だってレオ兄とニコ兄が、魔法でガンガン掘って作った池だ。魔力が含まれていても不思議ではない。そう考えた。
それをディさんに相談していたわけだ。そして精霊眼で見てもらって確認した。
ニコ兄の考えは、ピンポンピンポーンだったのだ。
「これはニコの観察眼だね」
精霊眼に鑑定眼、今度は観察眼ときたぞ。
「ロロ、それはスキルじゃないぞ」
「わかってるのら」
それくらいは分かっているのだ。
それで、ディさん。説明を求むのだ。
「この池の水は勿論、周りの土も他より魔力を多く含んでいる。ニコの予測通りだ」
「だろう? 変だと思ったんだ」
ふむふむ、余所より魔力を多く含んでいるとな。やっぱあれなのか? 魔法で池を作ったからなのかな?
「池の水もそうなんだ。池にする為に土を魔法で掘っただろう? だからレオとニコの魔力が馴染んでいるんだ。この池の周りの土は二人が魔法で掘り出した土だから、当然この土にも魔力が含まれている。マンドラゴラはそれを好むのだろう」
「わふわふ」
「え、しょうなの? ぴかが、いけのおみじゅはおいしいっていってるのら」
「ピカは、気付いていたんだ」
て、ピカさん飲んでたの?
「わふん」
だって魔力が多いから僕達には美味しく感じるんだよ。なんて言っている。僕達? チロさんもそうらしい。
ニコ兄ったらよく気付いたのだ。
あれれ? 俺もちょびっとだけど池を掘ったのだ。忘れられちゃってるけど。
「ふふふ、ロロ。忘れてないよ。ロロも掘ったよね」
「しょうなのら」
「でも、少しだったからさ。ここの魔力はレオとニコの魔力が殆どなんだ」
「へえ~」
まあ、そんな事良いのだけど。
じゃあマンドラゴラは魔力が多いところを好むのだね。森の奥深くやダンジョンに生息しているのは、そこも魔力が多いからなのかな?
「ロロ、難しい事を考えたね」
「でぃしゃん、らってしょうなるのら」
「うん、でもそうじゃないんだな」
森の奥やダンジョンは魔素が濃い場所だ。魔力の元になっているといわれている魔素という不思議成分。
その魔素が濃い場所だから、マンドラゴラは生息している。
でも魔素が土の中にまで濃く含まれているのかというと、そうとは限らないらしい。
「不思議だよね、まだ解明されていないんだ。エルフの国もここよりは魔素が濃い。浄化をしている世界樹が中央にあるのに、魔素濃度は高い。それがどうしてなのかも分かっていないんだ」
ほうほう、本当になんだか難しい話になってきたのだ。
「ただ、この街近辺でこれだけ魔力を含んでいる土はないだろうね」
「だからマンドラゴラがどこからかやって来るのか?」
「ドルフ爺、きっとそうだよ。ニコの発見だ。よく気が付いたよ」
「にこにい、しゅごいのら」
「へへへん、そうだろう? アハハハ」
あれ、ニコ兄がちょっと照れているのだ。珍しい。
「夕ご飯にしますよー!」
「あ、マリーが呼んでるぞ」
「おなかしゅいたのら」
「ほら、行こう」
「ドルフ爺、また明日な!」
「おう!」
みんな揃って夕ご飯なのだ。今日のお肉は、テオさんとジルさんが狩ってきたものらしい。
何のお肉なのか知らないけど、マリーの手に掛かると美味しいお肉になるのだ。
ほら、ナイフを入れると透明な肉汁が溢れ出てくる。それに柔らかい。
今日のソースは、ハニーマスタードだ。
「おいししょうなのら」
「な、美味そうだ」
ディさんは相変わらず、特盛サラダをシャクシャクと食べている。とっても満足そうなのだ。
「で、ランクは上がりそうなのですか?」
「レオ、そう簡単に上がらないぞ」
「そうですね、まだまだです」
「だって、CランクからBランクに上がるのって大変だと聞きましたよ」
「リア、だからと言って挑戦しない訳ないだろう?」
「もちろん、そうですよね。私もそう思います!」
ふむふむ、テオさんもかなり体育会系だという事だな。リア姉とちょっぴり意気投合している。
「ロロ、ほらほっぺについてるぞ」
そう言いながら、ニコ兄が俺のほっぺを拭いてくれる。いつも悪いね。つけようと思っている訳ではないのだ。
「ありがと」
「おう、美味いな」
「うん、うまうまら」
モグモグと食べる。合間にディさん作のサラダも頬張る。
ディさん曰く、お肉とお野菜のハーモニーが大切らしい。それにしては、お野菜が多いと思うのだ。
夕ご飯を食べたら、俺はスイッチが切れる。頭をグラングラン揺らして眠気と戦う事になる。




