279ー魔法杖を作るよ
「ほらロロ、それにピコピコハンマーだ」
「あれは、おとがね~」
「いいじゃない、可愛くて」
「らって、ちょっとおまぬけなのら」
「そんな事ないよ~」
そうだろうか? ウルフ討伐の時に思ったのだ。あんなに緊迫した雰囲気の中で、あの音はないだろうと。
「でぃしゃん、ぶらっくうるふのとき」
「うん、ああそうか。ロロも戦ったんだったね」
「しょうしょう。ららちゃんをまもったのら」
偉かったねーとディさんが褒めてくれた。ふふふん。
「え、え、ええ!? ちょっと待ってください。ブラックウルフって、あの話に聞いたお祭りの夜に出た群れですか?」
「テオ、そうなんだよ。ロロもやっつけたんだよねー」
ねー、とディさんとお顔を見合わせる。
俺のピコピコハンマーが炸裂したのだよ。ニコ兄もやっつけたし、もちろんリア姉とレオ兄も戦っていた。
「くーちゃんのしーるろがあって、よかったのら」
「本当だねー」
またまた、ねーっと俺とディさん。息がバッチリ合っている。
「ええ!? ええぇッ!? シールド!? クーちゃんてあの亀さんの!?」
「しょうなのら。くーちゃんはしーるろが、れきるのら」
テオさんとジルさんがずっと驚いている。慣れてね。俺達はこんな感じなのだよ。
「昨日一通り驚いたと思っていたんだけど」
「テオ様、本当ですね」
ジルさんがクーちゃんを見に行った。お昼寝しているけど。クーちゃんはいつも寝ている。
「それでね、ロロの魔法杖なんだけど」
「ちょ、ちょっとディさん。ロロに魔法杖ですか?」
「そうだよ。ロロは魔法杖を使う方が、魔法が使い易いだろうと思ってさ」
「ロロはまだちびっ子ですよ」
「うん、だから短いのにしようと思って」
いやいや、そうじゃないとテオさんが首を横に振っている。
ディさん、長さの問題ではないらしいのだ。
そんな事はお構いなしに、ディさんがいつものマジックバッグから長い物を取り出した。
「これにしようかと思ってさ」
丸い短い木の枝と、なにかの角なのかな?
「でぃしゃん、なんなのら?」
「こっちの木の枝が世界樹の枝で、こっちがユニコーンの角だ」
「「ええーッ!!」」
テオさんとジルさんの声が重なった。息ぴったりなのだ。
仲良しなのだね。いつも一緒だし。
「ロロ、ジルは俺の従者だ。だから一緒なんだ」
「ふうーん」
よく分からないけど。
「そこじゃない! ディさん! 世界樹って! ユニコーンって!」
「ユニコーンが本当に存在するのですか!?」
ジルさんも前のめりになって聞いている。そんなに珍しい事なのかと、俺はちょっぴり引いて見ていたのだ。
ディさんが色々教えてくれた。
世界樹というのは、この世界の創世期からあるとってもとっても大きな樹で、この世界の瘴気を浄化していると伝えられている。その世界樹を中心に、エルフの国があるのだそうだ。
「本当にエルフ族の国に世界樹があるんだ……」
「伝説だと思われていますよね」
「そう? あるよ、とっても大きな樹がね。天に届くかという程大きな樹だ」
「ひょぉーッ!? おおきいのら!」
「ふふふ、大きいだけじゃないんだよ」
世界樹の枝で作られた魔法の杖は、浄化能力が強い。その上、魔力を通し易くてとっても丈夫なのだそうだ。
「ウルフ位なら、パコーンと殴ってもなんともないよ」
「ひょぉーッ! しゅごいのら!」
それともう一つ、ユニコーンの角。ユニコーンの角も浄化能力が高くて、状態異常を回復させると言われている。そして丈夫だ。
大抵の魔物は突き刺して倒す事ができるらしい。
俺はそんな事しないけど。魔物と戦うのはもう良いのだ。
「ディさん、ユニコーンも伝説ですよ」
「そうだろうね、ユニコーンはエルフにしか姿を見せないから」
ちょっと俺は気付いてしまったのだ。
とんでもなく特別な杖になってしまうのではないかと。ディさん、やり過ぎじゃないか?
「でぃしゃん、ふちゅうれいいのら」
「え? どうして? どうせ作るんだよ、良い物にしなきゃ!」
お、おう。良すぎると俺は思うのだ。
世界樹もユニコーンも伝説らしい。そんな凄い物を俺が貰っても良いのか? まだちびっ子だぞ。エルフじゃないのだぞ。
「ロロは僕の大事なお友達だからね」
と、いいながらバシコーンとウインクをした。
うん、何度見ても綺麗なのだ。破壊力が半端ない。目がチカチカするのだ。
「アハ、アハハハ! ロロ、凄いな!」
「ええー、ておしゃん、いいのかな?」
「あらあら、ロロ坊ちゃま、折角ディさんが作って下さるのですから」
いかん、こんな時のマリーはとっても大胆なのだ。いや、豪胆というのか?
「そうですよ、ロロ君。一生モノです。大事に使うと良いのですよ」
「うん、じるしゃん。でぃしゃん、ありがと」
「うんッ!」
弾ける様なとっても良い笑顔で、お返事をしてくれたディさん。
一生モノだって。大事にしよう。
ディさんの説明だと、その世界樹の枝を手で持つ部分に使い、そこにユニコーンの角を付ける。
「そして、芯にはフェニックスの羽根だ」
「「えええぇーッ!!」」
ディさんが真っ赤なピカピカと光る羽根を出した。
ほうほう、フェニックス。って、あのフェニックスなのかな? 不死鳥と言われる鳥さん?
死んでも蘇ることで、永遠の時を生きるといわれる伝説上の鳥さんと言われている。




