271ー探したんだ
「にこにい、りーだーどお?」
「おう、お利口だぞ。それに孵ったばかりなのに、フォーちゃん達に付いて行くんだ。スゲーよ」
「へえー」
それはそれは、身体能力は申し分ないみたいだな。後は、あの3羽を統率できるかどうかなのだ。
「孵ったばかりだから、リーダーはちゃんと喋れないみたいなんだ。だから、今はまだ無理だな」
「しょっか」
レオ兄達は何のお話なのだろう?
レオ兄と同じ髪色の人が話し出した。えっと、なんてお名前だったっけ?
「さっきも言ったけど、僕はテオフォル・オードラン。隣国、アナトーリア帝国のオードラン侯爵家の次男だ。君達の母上の実家だ。探したよ。会えて良かった」
俺達を探してたのか? え? お隣の国から態々? と、いう事は俺達の事情を知っているのか?
「君達の事はウォルターが知らせてくれた」
「え!? ウォルターが?」
「まあまあ! ご無事だったのですね!?」
マリーが驚いて声をあげた。
ん? 誰だ? ウォルターって。んん?
「ロロ、俺達の家で執事をしていた人だ」
「にこにい、しってるのら?」
「そりゃ、俺が生まれる前からいるからな。ロロは覚えてないだけだ」
「へえー」
ふむ、知らないな。全く記憶にない。
「ロロを抱っこしたりしていたぞ」
「へえー」
知らないものは仕方ない。
そのウォルターという執事さん。マリーより年上らしい。叔父さんが乗り込んで来た時に、これは知らせないといけないと、直ぐに母の実家まで知らせに走ってくれていたらしい。
でもなにしろ、お年だし隣国は遠い。辿り着くまでに時間が掛かってしまった。その上、辿り着いた時には身体を壊していて、事情を話すと直ぐに寝込んでしまったそうだ。
長旅で、無理をしたのだろう。
「えぇー、たいへんなのら」
「な、隣国までよく行ったよな」
と、俺達は外野で感想を言い合っていた。
「ハハハ、ニコラウス君もロロアールド君もお利口な子達だ」
「ニコでいいぞ」
「ろろれいいのら」
「そう? 僕はテオだ」
「私はジルベール。テオ様の従者です、ジルで良いですよ」
ほうほう、テオさんにジルさんか。
テオフォルさんと名乗った人は、レオ兄と同じ藍色の長い髪を後ろで一つに結んでいる。瞳もレオ兄と同じ、優しいラベンダー色をしていた。どことなく、似ている。
その従者のジルさんことジルベールさんは、ブルーシルバーのショートボブの髪にグレー色の瞳がとっても知的に見える。
というか、どっかで見た様な気がするのだ。どこだっけ? クッキーを手に考える。
「えっと……えぇっとぉ」
「ロロ、なんだ?」
「にこにい、ておしゃん、ろっかれみたのら」
「え? そうか?」
「うん、えっとぉ……しょうら! 『うまいルルンデ』れ、みたのら」
「え? そうだったか?」
そうだよ、俺達が初めて『うまいルルンデ』に行った時だ。あの令嬢の話をしていた時にいた旅人だ。
「ああ、そうか。あの時の!?」
「テオ様、どうして気付かなかったのでしょうね」
「本当だ。偶然会っていたんだな」
ふふふん、ほらそうだ。
「ロロ、よく覚えていたね」
「らって、れおにいとおなじ、かみいろらったから」
「ああ、そうか。ロロはあの時もそんな事を言っていたね」
「しょうなのら」
へへへん。俺って凄くないか? 思い出せて良かったのだ。
「ロロはお利口なんだな。それに、その大きい犬……じゃないよな?」
「ぴかなのら。へびしゃんはちろ」
「ロロがテイムしているんです」
「ほう、テイムか」
「ボクはていまーなのら」
ちょっぴり胸を張っちゃうぞ。俺はテイマーだから。といっても、正確にはピカさんとチロはテイムしていない。神獣なのだもの。
「ひみちゅ」
まだ短い人差し指を、ぷにっと唇に当てる。ピカとチロが神獣だという事は秘密なのだ。
「アハハハ、ロロなんだよ」
「にこにい、ひみちゅなのら。いったら、らめ」
「ぷぷぷ」
ディさんが笑っていた。俺も少しは学習するのだ。
テオさんの話だと、執事のウォルターさんが知らせに行ってから、直ぐに俺達を保護する為に探しに出てくれたらしい。
テオさんにはお兄さんとお姉さんと妹がいるのだそうだ。俺達と同じ四兄弟だね。
お兄さんはお父さんを手伝っていて領地を離れられない。お姉さんはもう嫁いでいて家を出ている。妹さんはまだ学生だ。女の子を隣国にやる訳にはいかない。
「自由に動けるのが僕だけだったんだ。それで学院を出て直ぐに探しに出たんだけど、君達はもう領地にいなくて焦ったよ。君達は隣国の母上の実家の事をどれ位知っているのかな?」
「全然知らないんです。母上の実家が隣国だって事も最近まで知らなくて」
「そうなのか」
隣国て遠いよな? 思わず、ニコ兄とお顔を見合わせた。手にはクッキーを持っているけど。モグモグしているけど。
母様の実家はこの国のお隣の国、アナトーリア帝国にあるらしい。多種族多民族国家だ。
侯爵位を叙爵され、交易の盛んなこの国との接点である辺境の領地を代々治めている家系なのだそうだ。
テオさんは、隣国の帝都にある学院の寮にいたらしい。でも手紙をもらって、こうしてはいられないと早期卒業制度を利用して直ぐに卒業した。
そしてジルさんと、先ずは領地のレーヴェント領に行ったらしい。




