269ー見えるのら
リーダーってお名前だけど、そうならなくても仲良くして欲しいのだ。
「ピヨピヨ」
「うん、しょうして」
仲良くするアルね。と、言っていた。そうそう、兄弟だからね。
俺達と同じ四兄弟なのだ。え、なら一番末っ子の黒い子は俺か? いやいや、どう考えてもレオ兄の立ち位置なのだ。
「ロロ、難しいお顔をしてどうしたの?」
ディさんだ。籠いっぱいにお野菜を入れて戻ってきた。麦わら帽子も被っている。
難しいお顔ではないのだ。真剣に刺繍をしているのだよ。
ディさんこそ、お野菜の収穫はもうおしまいなのか?
「そろそろ雨が来るからね」
まだこの時期は午前中に一度雨が降る。細い糸の様な雨が、ザァーッと降る。その後は緑が濃くなる。地面の匂いが強くなって、葉っぱがキラキラして生き生きとするのだ。必要な雨なのだろう。
雨は直ぐに止んで、その後はカラッと晴れる。
「でもお洗濯が干せなくて」
と、マリーは言っている。
雨が降っている間はディさんも戻ってきて、マリーと3人でティータイムなのだ。俺はジュースだけど。
「でぃしゃん、あたらしいひななのら」
「うん、黒い子がどうしたの?」
「しょう。ボクは、あおいこがかえると、おもっていたのら」
「そうなの? 青い子? どうして?」
「らって、れおにいがまりょくを、ながしていたからなのら」
「レオだと青色なの?」
「しょうなのら」
と、何気なくそんな話をした。そしたらディさんが真剣な顔をして聞いてきたのだ。
「ねえ、ロロ。ならリアは何色かな?」
「りあねえは、あか」
「じゃあ、ニコは?」
「きいろ」
「なら、ロロは?」
「ボクは、みろりなのら」
と言うと、驚いた顔をしていた。どうしたのかな?
「ロロ、もしかして色が見えるのかな?」
「いろが? え?」
「どうしてレオは青色なの?」
「らってれおにいが、まほうをちゅかうときに、あおいろにひかるのら」
「ロロ! 凄いや! 魔法を発動する時の色が見えるなんて、精霊眼を持つ僕くらいなんだよ。普通は見えないんだ」
そうなのか? と、抱きしめられちゃった。ディさんはいつも森の様な爽やかな香りがする。髪もサラッサラだ。
「ね、僕は何色に見えるの?」
「でぃしゃんは、あかるいえめらるろぐりーん。ぴっかぴかなのら。いちばんきれいなのら」
「そう! ありがとう! ああそうか、だから黒い子だけ目が青緑色なんだね」
と、ディさんが何気なく言った。なんですと? そこにも色が関係してくるのか?
「え?」
「ん?」
あれれ? フォーちゃん達は何色だったっけ? そんなの意識して見ていなかったのだ。
「ロロはもしかして気付いていなかったのかな?」
「うん、じぇんじぇんなのら」
「そうなの? じゃあ僕が教えてあげよう」
ディさんはちゃんと観察していたのだ。親コッコちゃん達はみんなオレンジ色の目をしている。それがコッコちゃん達の普通の目の色で足もオレンジ色だ。
俺が魔力を与えながら温めたフォーちゃん達は緑色の目をしている。足は淡いオレンジ色。生まれて直ぐの時は、リーダーと同じ淡いピンク色だったらしい。
「きっとロロの魔力が影響したんだろうね」
レオ兄と俺が一緒に温めた黒い子は、二人の色が混じって青緑色の目になった。
「凄いや、コッコちゃん達の新しい発見だ」
もしかして親コッコちゃん達が、直ぐに成功だと分かっていたのは目の色を見ていたからかな?
フォーちゃん達は孵った頃より大きくなって、倍位の大きさになっている。鶏冠もほんの少し生えてきた。まだ大きくなるだろう。
その中に一羽だけ真っ黒で小さな雛がいる。ピヨヨと鳴きながらフォーちゃん達に付いて行く。可愛いのだ。
お昼寝をしてリーダーもすっかり馴染んだ頃、そろそろリア姉とレオ兄が戻ってくるかな? と思ってお外に出ていた。
こんな時はあれだ。狙ったかの様に、俺の視界の隅でモゾモゾと動くヤツがいる。
もうお馴染み、マンドラゴラだ。
「ぴか、またらね」
「わふん」
ピカさんももう楽しんでいる。俺は家の中にピコピコハンマーを取りに戻る。そして池までダッシュなのだ。と、言ってもテッテケテーと可愛らしい走りなのだけど。
「ぴか、やっちゅけるのら」
「わふ」
池の端に『ふぅ~ここは良い土だ』と、でも思っているのか。マンドラゴラがいる。
俺は手に持ったピコピコハンマーを、大きく振りかぶって思い切り叩きつける。
「とぉッ!」
――キュポン!
「わふん!」
「しょっちも!? たぁ!」
――キュポポン!
「ぴか、いくのら!」
「わふん」
ピカに乗って、畑を走る。風を感じて颯爽と走るのだ。ちょっぴりかっちょよくないか?
俺はピコピコハンマーを掲げる。自慢気だろう? だって自慢の一品なのだ。
そして大きな声で呼ぶのだ。
「どーるーふーじいー!」
「おうッ!」
直ぐに顔を出してくれる。きっとピコピコハンマーの音で分かっているのだ。
「アハハハ! ロロ、またかよ!」
「にこにい! またなのら!」
「よし! 行くぞ!」
「おおー!」
ニコ兄もピカに乗ってきた。二人してピカに乗って爆走なのだ。
ニコ兄ったら凄いのだ。手綱を持たなくても上手くバランスをとってピカに乗っている。走っているピカにだ。俺は手綱を持っていないとグラグラして駄目なのだ。
池の端に戻ると、知らない人がいた。
「あれれ?」
「え? だれだ?」
「見た事ない人だな」
ドルフ爺も知らないらしい。
でも、こっちを見ているぞ。




