264ー良かったなのです~
「無事で良かったなのですですぅ~ッ!」
と、言いながらピカピカの髪を靡かせて両手を広げて抱きついてくる。ですですぅ〜ッて何だよ。
見た目はとっても美人さんなのに、いつもの残念な女神様なのだ。当然俺はヒョイと避ける。
「あばばばばーッ!」
と、またお顔からスライディングだ。もう何度目なのだ?
ほら、花びらが舞っているじゃないか。一面に綺麗に咲いているお花が、可哀そうなのだ。あらあら、お鼻の頭が赤くなっているぞ。
「心配したのです」
「うん、きょうかいれおしえてくれたのら」
「そうなのです! だってロロは忘れているからなのです!」
「うん、ありがと」
それでも忘れていたけど。でも、なんとかなったのだ。
「まだ油断は禁物なのですよ!」
「え? まらなにかあるの?」
「ああー! これ以上は言えないのですぅー!」
と、両手を出してダメダメと振っている。足は内股で腰が引けているのは何故だ?
女神は干渉できないと話していた。それでも教えてくれようとしているのだろう。
今度はちゃんと覚えておこう。
「本当に無事で良かったのです。一時はどうなる事かと思いました! ピコピコハンマー、大活躍でしたねッ!」
「しょうなのら」
ふふふ、作っておいて良かった。俺の自慢のピコピコハンマーだ。効果音は要改良なのだ。
「クーちゃんも良いお仕事をしてくれました! ドルフ爺さんは凄い勘の持ち主です!」
「え、しょこなの?」
「はい! なんとなく連れて行かないとと思ったのです」
「しゅごいねー」
と、俺がニッコリすると、女神が悶えていた。
顔を両手で覆って、ぎゃんかわッ! 尊いぃッ! なんて意味不明な事を言っている。
この女神は見た目とやる事にギャップがあり過ぎるのだ。
「後はあのエルフが、早く魔法杖を作ってくれると安心なのです」
「あー、でぃしゃん。ちゅくってくれるのら」
「はい、楽しみです! ちゃんと使い方も教わってください!」
「うん、わかったのら」
「気を付けるのですよーぅ……よーぅ……よーぅ」
と、またエコーをかけて消えて行った。なんだかいつも締まらないのだ。
そして俺は目が覚めちゃった。
「わふん」
「ん……ぴか、またらね」
「わふ」
いつもいつも中途半端でごめん、なんてピカが謝っている。そんな事ないのだ。ピカさんも苦労性なのだ。
女神はあれでも考えてくれているのだろう。それはとても有難い事なのだ。
「わふ」
「ふふふ、ぴか」
俺はピカの首筋に抱きついた。フワモフの毛にお顔を埋める。おひさまの匂いのするピカさん。俺が安心する匂いなのだ。
「ぴか、ありがとなのら」
「わふ」
いつも俺の側にいてくれた。昨日も今日もララちゃんを一緒に乗せてくれた。
ララちゃんは喜んでいたのだ。ふふふ、ララちゃん可愛かったなぁ。
「わふん」
「しょう?」
「わふ」
ふふふ、ピカもララちゃんが好きだと言っている。
可愛いものね。小さくてフワフワしていて、お花みたいに笑うララちゃん。また会えると良いなぁ。
「ロロ、起きた?」
「うん、れおにい」
レオ兄が部屋にひょっこりとお顔を出した。
「マリーがオヤツを作ってくれたよ。食べよう」
「うん」
ピカさん、オヤツだって。
「キュルン」
「ちろもたべよう」
「キュル」
あれれ? 一緒にベッドにいたチロを見て気付いた。チロったら大きくなったかな?
もう俺のお出掛け用ポシェットだと苦しいかも知れないのだ。
「キュルン」
「しょうなのら」
「キュル」
丸くなって入るから大丈夫らしい。そうなんだ。
チロと話していたら、レオ兄が入って来た。
「チロが急に大きくなったね」
「しょうなのら。おおきくなってるのら」
「キュルン」
「アハハハ、そうなの? ありがとう」
おおー、チロとレオ兄が話しているのだ。何かあったら回復するよと、チロが話していた。
「ロロの周りは凄いなぁ~」
と、話しながら俺をヒョイと抱っこして階段を下りて行く。
「れおにい、しゅごい?」
「うん、凄いよ。ディさんもそうだろう? ピカやチロだって凄いよ」
「ふふふ」
「ん? どうしたの?」
「みんな、らいしゅきなのら」
「そうだね~」
階段の途中から、もう香ばしい良い匂いがしたのだ。
「ロロ坊ちゃま、起きましたか?」
「うん、まりー」
「さあさあ、今日はチーズケーキにしましたよ」
「おいししょうら」
マリー印のチーズケーキ。ハンナやニルス達にも好評だった。
底にレーズンを入れてあるのがポイントだ。俺もとっても大好きなのだ。
「ロロ、ほら」
「にこにい、ありがと」
隣りに座っているニコ兄が俺にフォークをくれた。
オヤツにみんなが揃っているなんて、とっても珍しい。いつもはみんないないから、今日は嬉しいのだ。
取り敢えず、俺は果実水を飲む。お昼寝の後はお喉が渇くのだ。コクコクコクと飲んでからチーズケーキにフォークを入れる。フワッフワでまだ温かい。
「ぴか、もうたべてるのら」
「わふ」
「キュルン」
あ、チロも食べていた。俺の足元でピカとチロがもうチーズケーキを頬張っていた。
ピカは身体が大きいから食べる量も多い。おっきくカットしたチーズケーキに、ワフワフと言いながら齧り付いている。
尻尾が大きく揺れているのは、ピカも好きなんだね。
「コッコッコ」
「クックック」
おや、親コッコちゃん達が入ってきたのだ。




