25ー神獣
「ロロ、このハンカチを持っていたらどうなるのか教えてほしいな」
「ハンカチはあんまりら」
「え? ハンカチは? 他にもあるの?」
「ああ、そうか。ロロ、僕と姉上にくれたリボンだね」
「しょう。りあねえと、れおにいのおリボン」
「え? そうなの?」
なんだ、リア姉は知らなかったのか?
レオ兄が髪からリボンを外して、ディさんに手渡した。
「これは……」
「なんとなく、いやいやとか分かるのら。ふふん」
どうだ? 今の俺の自信作なのだ。
「ん? なんだって?」
「ロロが言っているのは、なんとなく嫌な感じがするから止めておこう。て、分かるって意味です」
「それは素晴らしい。お守りだね」
「しょう。りあねえと、れおにいのおまもりなのら」
ディさんが言うには、それも付与魔法なのだそうだ。守護するって程まではいかなくても、守られているそうなのだ。
そんな付与は滅多にないと言われたのだ。
「ハンカチには軽い防御が付与されていたんだ。例えば、躓いたけど転けないですんだとかその程度だよ。でも、このリボンは素晴らしい。守られているね」
「ふふん」
ちょっと、自慢なのだ。小さい手で、ひと針ひと針頑張った。しかも、おリボンだからハンカチよりずっと刺繍がし難いのだ。
「ロロ、君はそれだけじゃない。なんだい、その加護は?」
「か、かご?」
なんだ? 俺、分からんぞ。全然覚えがないのだ。
「もしかして、ピカは神獣なのかな?」
「な、な、なんだと!?」
「ピカ!?」
「ロロ!?」
ああ、駄目じゃん。やっぱあの泣き虫女神、抜けているのだ。バレてるじゃん。
俺だってピカが神獣だなんて知らなかったぞ。神使って神獣の事なのか?
冷や汗タラタラなのだ。知らん顔をしておくのだ。
「ギルマス、ここだけの話にしよう。いいかな?」
「おう、当然だ」
「ロロはこの世界の、主神である女神様の加護を受けている。そして、ピカは主神の神獣だ。そのピカの主人がロロだ。ピカの加護もあるね」
「お、おい……これヤベーんじゃねーか?」
「だからここだけの話だ。教会本部に知られると拙い」
「ロロが教会に連れて行かれるって事ですか?」
「そうなるな」
「そんな! ロロは私達の弟です! 離れません!」
「リア、分かっている。だから、ここだけの話だ」
「君達も絶対に他言したら駄目だよ」
「もちろんです」
「はい! 言いません!」
こら、泣き虫女神。全部バレてるじゃないか。見事にバレバ~レだ。どうするのだ?
「ロロ、大丈夫だよ。ずっと僕達と一緒だ。弟なんだから」
「れおにい……」
「そうよ、絶対に離れたりなんかしないわ」
「りあねえ」
「ロロ。今は土属性魔法だけだ。他が何故か見えないんだなぁ……なんでだろう? まだ使えないって事なのかなぁ? それにしても、付与魔法がこの歳で使えるのはロロだけだ」
他が見えない? まだ何かあるのか?
そういえば、あの泣き虫女神が回復魔法がどうとか言ってた。それが見えないって事なのかな?
それにしても、今度呼ばれたら絶対に文句を言ってやろう。
「ギルマス、だからピカを登録したいんだ。従魔契約はしていないけど、僕達の犬だって証明する首輪が欲しいんだ」
「なるほどな。そりゃその方がいい。噂を聞いたぞ、あの迷惑令嬢だろ?」
「それもだけど、単純に盗もうとする奴がいたら」
「アハハハ、そんなのピカに敵う訳ねーよ!」
「でも、防げるなら防ぎたい」
「おう、分かった。レオの従魔として登録しておこう。ロロはまだギルドに登録できないからな」
「有難う」
「れおにい」
俺はレオ兄に目配せした。ピカだけじゃない。チロもいるのだ。
「そっか、チロだね」
「うん」
「ああ、もう1頭神獣がいるんだね」
「な、な、なんだとぉッ!?」
ディさんが軽〜く言った。ギルマスはさっきから驚いてばかりなのだ。
「ちゃんとロロに加護を授けているよ。何処にいるのかな?」
「だしていい?」
「いいよ」
じゃあ、遠慮なく。俺は、肩から下げていたポシェットからチロを出した。眠っていた。まだまだ赤ちゃんなのだ。
「あい、ちろ」
チロを両手に乗せて見せたのだ。小さなポシェットに入って眠っていたから丸くなっているのだ。
「へ、へ、蛇じゃねーか!?」
「ほう……これはまた興味深い」
ディさんが、ジッとチロを見る。
「僕は何百年と生きてきたけど、こんなに神獣を見るのは初めてだよ。ピカは亜空間収納と風属性魔法だ。そうそう、ピカはワンちゃんじゃなくてフェンリルだね。チロは、回復系全般か。ああ、でもまだ赤ちゃんなんだね」
バッレバレじゃん。全部バレてるじゃん。泣き虫女神、いいのかよ!?
それより、今サラッと言ったから聞き逃しそうになったんだけど。
「なんひゃくねんッ!?」
「アハハハ、驚いたかな? エルフは長命種だからね、千年以上生きるんだ」
「ひょぉ~ッ!」
千年も何するのだ? やる事が無くなってしまわないか? 俺なら趣味を極めていそうなのだ。
「ギルマス、でも蛇に首輪は無理かな?」
「おう、それ用のリングがあるんだ。尻尾につけるんだ」
それからギルマスはお姉さんに頼んで、ピカの首輪とチロのリングを持って来てもらった。
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